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最終更新日:2024年4月22日

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医療工学

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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
FEN-MX5b32L1
FEN-MX5b32L1
医療工学
久保田 雅也
S1 S2
木曜4限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
工学部
授業計画
1回め:4/11  久保田雅也(国立成育医療研究センター神経内科、東大大学院先端医療機器情報学連携講座) 「小児神経学概論」  小児の発達における神経学的基盤  自発性(自動性)の獲得、中枢神経系の可塑性 、臨界期(感受性期)  中枢神経系の可塑性を応用した治療:VRを利用した疼痛の治療  眼球運動を用いた意思伝達装置  工学的な介入が期待される領域:biomarkerの「計測」、「生活支援」、「病態解析」、「治療的介入」、「学習支援」、「遊び」 2回め:4/18   久保田雅也(国立成育医療研究センター神経内科、東大大学院先端医療機器情報学連携講座) 「不随意運動からヒトの随意運動の機構を考える」  「笑い」と随意運動の乖離 :情動と行為行動の関係(こころと身体)  基底核の機能と病態:ジストニアと脳深部刺激療法 寝たきりの患者が歩いて生活可能に.その神経伝達の機序  過緊張とバクロフェン髄注療法 苦痛からの解放と神経伝達  発作性運動誘発性ジスキネジア 姿勢変換機構の異常  心因性運動異常症 その中枢機序と捉え方     3回め 4/25  相原正男先生(山梨大学)  脳の成長(growth)とは、脳が大きくなり、安定した構造に近づくことである。生態学の研究から、猿類の大脳皮質の大きさは、群れの社会構造の複雑さ(social size)に比例していることが報告されている。社会適応(adjustment)に必要とされるヒトの前頭葉、前頭前野の体積を3D-MRIで定量的に測定したところ、前頭葉に対する前頭前野比は乳児期から8歳頃まで年齢とともに緩やかに増大し8~15歳の思春期前後で急速に増大した。脳の成熟(maturation)とは、脳内情報処理過程が安定した機能になることで、神経科学的には情報処理速度が速くなること、すなわち髄鞘形成として捉えられる。生後1歳では、後方の感覚野が高信号となり、生後1歳半になると前方の前頭葉に高信号が進展した。これらの成熟過程は1歳過ぎに認められる有意語表出、行動抑制、表象等の前頭葉の機能発達(development)の神経心理学的な神経基盤と考えられる。 5/2 休講 4回め:5/9 宮尾益知(どんぐり発達クリニック) 「小児神経学からのADHD」 精神疾患の基板として、発達障害に注目が集まっている。なかでもADHDは、4-8%にみられるといわれ、ADHDとは何かを知ることは必要なことである。 診断米国の『精神疾患の分類と診断の手引き 第4版』(DSM-IV)では、注意欠陥/多動性障害と称し、主要症状を「不注意」と「過活動/衝動性」に分け、7歳以前の発症、6ヶ月以上の持続、複数の場面で現れる、社会面あるいは学業面の著しい障害などを付帯条件として、広汎性発達障害、精神統合失調症、うつ病など除くと定められている。DSM-5では、発症年齢が7歳から「12歳までに」に変更、3つの下位分類:現症に、過去6か月の状況で、 症状型が4つになった。診断基準が混合、不注意優勢:多動症状3/9以上、不注意(限定):多動症状2/9以下、多動性/衝動性優勢とされ、自閉症スペクトラムの除外基準の撤廃、思春期以降にも言及されていることが主な変更点である。 病理・病態 生化学的には、ドーパミンおよびノルアドレナリン系の機能低下、解剖学的には前頭前野(前頭連合野)・線状体・小脳の機能低下が想定されている。認知神経心理学的には、ワーキングメモリーの障害、遂行機能の障害、報酬系の障害、感情を内に秘める能力の障害、時間感覚(瞬間・瞬間と時間の予測)の障害などが想定されている。最近はDMN(後述)の障害、DMNとWMネットワークを切り替える顕著性ネットワークの機能障害が想定され、感情情動障害、Sluggish Cognitive Tempoなどの病態も併存が想定されるようになっている。ADHDの診断治療に関してはこのような病理病態を立体的に考えながら治療する必要がある。 4,診断  診断は、WHOのICD-10あるいはDSM-5を用いて行う。しかし、診断基準からはADHDと診断されても、親や教師の期待度が過剰であったり、子どもが落ち着けないほど家庭環境が劣悪だったりする場合にも同様の症状を認め治療に反応しないことが多い。虐待を受け続けた子どもは、愛着形成が不安で不注意であり衝動性も認められるため、精神的な安定が得られずADHDと同様の状態になる。周囲の状況を理解しようとする余裕がない場合と周囲の状況がわから自分の思いで行動してしまう自閉症スペクトラムなどと鑑別が必要である。また、いわゆるうつ状態のとき子どもは、不注意、衝動的になりADHD間違われることもある。 治療方針 薬物以外の治療 ADHD患者のためには、十分考えられた包括的な治療計画を策定し重症度により薬物療法と行動療法の少なくとも一方を取り入れる。 薬物治療 我が国においてADHDに用いることのできる薬剤は、中枢神経刺激薬としてドーパミンに関わることで効果を発揮するメチールフェニデートの徐放剤とノルアドレナリンに関わることにより効果を発揮するアトモキセチン、α-アドレナリン受容体の作動薬と拮抗薬 であるグアンファシンがある。薬物の薬理学的作用機序を考慮しながらの治療が必要である。 5回め:5/16 久保田雅也(国立成育医療研究センター神経内科、東大大学院先端医療機器情報学連携講座) 「発作性疾患からヒトの脳の正常・異常・病的状態を考える」  てんかん experiment in nature  てんかん:「神聖病」から電気生理学的現象とわかるまで  てんかんの診断と治療体系:神経生理学と情報工学  動画でみるてんかん発作と機序  てんかんとneuroengineering 臨床と工学の接点 6回め:5/23 久保田雅也(国立成育医療研究センター神経内科、東大大学院先端医療機器情報学連携講座) 「乳児のこころと身体の発達」  胎児は何をしているか 観察研究が中心  乳児の発達を睡眠覚醒リズム、移動運動、共同注意からみる  乳児は自発性の塊である。自発性の欠如が発達障害の基盤にある。  顔認知の発達 観察研究から脳波、アイトラッキングを用いた方法まで  意味への自発的接近と「遠隔対象性の獲得」  ヒトとサルの境界 5/30 休講 7回め:6/6   加藤光広 (昭和大学小児科) 「脳形成とヒトへの進化 その1」 (1).大脳の個体発生と系統発生 (2).神経回路と電子回路の類似性 (3).脳形成異常の分子メカニズム (4)ヒトの発達、進化の基盤、脳の発生と進化、大脳の発生とヒトの脳のサイズ決定因子、脳回の発生、左右の分離 8回め:6/13  宮尾益知(どんぐり発達クリニック) 「自閉症スペクトラムとロボット」 自閉症スペクトラム(ASD)は、コミュニケーションにおける質的な障害、 意思伝達の質的な障害などがあり、社会性の獲得が十分にできないとされている。コミュニケーションにおける質的な障害については、視線の相対・顔の表情・体の姿勢・身振り等、非言語行動が理解できないなどが想定されている。意志伝達の質的な障害については、 意思伝達の質的な障害 話し言葉の発達に遅れがあり、言語能力があっても、他人と会話をし続けることが難しい。同じ言葉をいつも繰り返し発したり、独特な言葉を発する。 発達の水準にふさわしい変化に富んだ『ごっこ遊び』や社会性を持った『物まね遊び』ができないなどが特徴とされている。 10歳のASDの子どもにもらった「こんなロボットが欲しいの」という作文をきっかけにASDとロボットとの親和性に気づき、大阪大学の石黒浩先生との出会いから「自閉症スペクトラムとロボット」研究は始まった。国立成育医療研究センターでの子供達とロボットのふれあい、ASDの子供達とアンドロイドとのふれあいなどから健常な子供達との違いに気づくことになった。同様の経験をASDの子供達と続けていくうちに、子供達がなぜ親近感を感じ、コミュニケーションを取ることができるのかを検証することとした。ASDにおける視線認識の特殊性に注目し人とロボットとの視線認識について文献的、実験的研究を行った。ついでASDの意志伝達の困難さが言語における思考プロセスの問題と考え、話すことと書く事の間での解離に注目し、キーボードを利用しロボットを通して会話を行うことにより、言語コミュニケーションの障害について考察を行った。 我々は日常の精神科治療の現場にロボットを導入し、カウンセリングを行っている。このような経験からロボットカウンセリングの有用性とASDの思考過程に注目したカウンセリング方法について実践を続けている。 人を知る為にロボット研究を始めることからアンドロイド研究は始まった。私たちは、ASDの子供達を知るためにロボットを用いようと考えている。ASDとは何かがロボット研究から始まることを信じて 9回め:6/20  久保田雅也(国立成育医療研究センター神経内科、東大大学院先端医療機器情報学連携講座) 「稀な疾患、特異な病態からヒトの脳の機能を知る」 チック障害、強迫性障害、吃音、夜驚、夢中遊行、悪夢、不思議の国アリス症候群、舞踏病、視覚聴覚二重障害、無痛無汗症、これらの小児期の経過と症状から本来の機能のうち何が失われ、どう代償しようとしているかを検討することで脳の機能の一部が明らかになり、治療、支援へ進むことがある。 10回め:6/27  相原正男先生(山梨大学) 「社会脳(social brain)の神経生理学的研究」  認知/感情・行動発達を前頭葉機能の発達と関連させながら検討してみると、その発達の順序性は、まず行動抑制(behavior inhibition)が出現することで外界からの支配から解放され表象能力が誕生する。次にワーキングメモリ(working memory)、実行機能(executive function)が順次認められてくる。行動抑制を衝動性眼球運動(サッケード)、光トポグラフィー(近赤外線を測定)で解析した。さらに、実行機能を遂行するには将来に向けた文脈を形成しなければならない。文脈形成の発達は、右前頭葉機能である文脈非依存性理論から左前頭葉機能である文脈依存性理論へ年齢とともにシフトしていくことが脳波周波数解析(β波のパワーを測定)の結果から判明した。一方、身体反応として情動性自律反応が出現しないと社会的文脈に応じた意思決定(decision making)ができず、その結果適切な行為が行えないことも明らかとなってきた。 このように、様々な心理課題を神経生理学的に検討することでヒトの脳内情報処理過程が明らかになりつつある。 11回め:7/4  加藤光広 (昭和大学小児科) 「脳形成とヒトへの進化 その2」 (5).脳の検査技術:画像・機能・遺伝子 (6).診断アルゴリズムを用いたAI診断 (7).遺伝子治療の現状と将来性 (8). 脳の検査法各種:紹介と今後の展望(情報工学の応用なくして成立せず)、遺伝子解析技術の進歩、てんかんの分子病態、神経伝達物質と遺伝子治療(稀少難病の先端治療紹介) 12回め 7/11 久保田雅也(国立成育医療研究センター神経内科、東大大学院先端医療機器情報学連携講座) 「発達障害とは何か」  中枢神経系の情報処理の変容  自閉症の解剖学的異常  「こころの理論」障害仮説(Mind blindness) とミラーニューロン仮説  自閉症と顔(表情)認知処理  空気が読めないことの意味=自動的意味処理の不全(意味盲)  大脳皮質の部位別機能の成熟不全
成績評価方法
詳細は講義にて
履修上の注意
基礎を固める(工学部共通)