大学経営論の授業では、大学の組織、経営行動について基本的な知識を理解し、習得するとともに、その現代的な課題について各自の問題意識を発展させることを目的としています。授業を通じて知識を単に得るだけでなく、ご自身の大学経験との関係を常に意識して考えることが大切です。特に大学等に勤務されている方にとっては、自大学との共通性はどこか、差異性がある場合はなぜなのかなどを考えるとよいと思います。今年度は、事前に教材を読んできてもらうことで、講義形式は最小限にとどめ、受講者が事前学習をしたうえで、受講者同士が議論するスタイル(ケースディスカッション)を中心に進めます。積極的に準備し、議論に楽しんで積極的に参加してください。共通のケースをもとに考えることで、それぞれの背景や経験の違いはむしろ議論を豊かにするものとして機能するはずです。
大学経営や大学組織に関する一般的な知識を得ることはもちろん、実際の大学経営をどのように良くしていけるのかといった実践的な関心にこたえうるものを目指しています。大学経営は実践的な関心が強い分野です。これまでの研究で蓄積されてきた理論を学習し、それを実践の場面で応用することもあれば、研究の場面においても、実践を丁寧に読み解くことにより、理論を深く理解し、さらに発展させるなど、理論と実践を往還する視点を持つことがきわめて重要であり、また有効だと考えます。理論や一般的な法則が、実際の事例に必ずしも当てはまらないこともよくありますが、それを理解し、そのうえで、個別の大学でどのようにすればよいのかを考えることが実践上は重要になります。この分野で学ぶ専業学生にとっても、大学組織特有の特徴や複雑さをよく理解していく上で貴重なステップとなるはずです。
理論と実践の両方を往還するために、経営学の分野では、ケースメソッド授業がひとつの方法論として用いられています。ケースメソッド教育に対する批判もありますが(擬体験に過ぎない等)、当コースの学生の多くは大学の職員等として様々な実践にかかわっており、それらの知識を生かすことで、より高い教育効果をあげることが期待できます。専業学生にとっては、勤務経験がないからこそ、一定のケースを提供されることで、まずはその枠の中にあてはめて、組織の理論を学び、議論に参加しやすい面もあるように感じています。大学経営論には、組織のマネジメント、人事のマネジメント、財務のマネジメントなどの様々な内容が含まれますが、最も基礎的な内容である、大学の組織論を中心に扱います。大学経営・政策について学ぶ大学院のコースは欧米でも多くありますが、最も基本的な科目の一つとして位置付けられているのが大学組織論で、大学という組織の特徴を理解するために不可欠な内容だと考えられています。