企業は、めまぐるしく変化する社会に適応し、存続と成長を実現するために日々の努力を積み重ねている。しかし、成功できる企業の数は限られており、たとえ優れた製品を提供して顧客を獲得できたとしても、それが長続きすることは多くはない。企業経営においては、こうすれば必ず成功するという「正解」は事前には与えられていないといえよう。そのような不確かな状況でも、企業が成長を続けていくためには、事業を成功に導くための論理的な思考と実践が不可欠であり、これが戦略と呼ばれる。この戦略の巧拙が、持続的に成長できる企業とそうでないものを分ける重要な決め手となる。
戦略には、競争戦略と全社戦略という二つの大きなカテゴリがあり、競争戦略では一つのビジネスで成功するための方法を考え、全社戦略では企業全体のビジネスをうまく展開して成長していくための方法を考える。本講義では、両者の考え方や概念について解説する。
有効な戦略は、それぞれの企業が置かれた状況によって異なる。したがって、単に用語や概念を暗記するだけでは有効な戦略を立てるには不十分であり、それらを使いこなす能力を身につける必要がある。そのために、講義では理論と実際のケースをあわせて解説しつつ授業内での質疑応答を積極的に行う。