東京大学だけでなく日本の高等教育の現場では、グローバル社会に対応できるいわゆる「グローバル人材」の養成が求められています。しかし、「グローバル人材」というのはどのような人を指すのでしょうか?
大学教育はそのような人材を輩出できるような教育の場を提供しているといえるでしょうか?
東京大学ではこれまで「グローバル人材」を育成するための様々なアプローチが取られてきました。2010~2014年度にかけては、教養学部付属教養教育高度化機構により、『グローバル時代をどう生きるか:プロフェッショナルが語る新たな可能性』というオムニバス講義が実施され、世界で活躍する先輩方をお迎えしてきました。また、東大憲章のうたう「世界的視野を持った市民的エリート」や、アドミッションポリシーでいうような「自国の歴史や文化に深い理解を示すとともに、国際的な広い視野をもち、高度な専門知識を基盤に、問題を発見し、解決する意欲と能力を備え、市民としての公共的な責任を引き受けながら、強靭な開拓者精神を発揮して、自ら考え、行動できる人材」を輩出すべく、東大の仕組みの中に留学やインターンシップ、ボランティアなど多様な海外経験を積む機会が増えています。
しかしながら、このアプローチはとても日本的と言えます。例えば、英語には「グローバル人材」を直接的に訳した言葉が存在しません。 Global talentやglobally minded/competent human resources, global leaders, expatriatesなどが近い言葉ですが、その意味するところはグローバルな視点、異文化コミュニケーション能力、適応力、学ぶ力、外国文化を尊重する力を有しているか、という点にフォーカスしています。
学生として大学に所属する皆さんは、果たしてどのようなグローバル人材を目指していきたいでしょうか。そもそもどのような人を「グローバル」であると想像しますか?そして、そのような「グローバル人材」になるためには、どのような要素、ツール、経験が必要でしょうか?
本全学自由研究ゼミナールでは、これらの視点に立ちながら、21世紀に求められるグローバル人材の姿を考え、学生による新たな定義を打ち出すことを目標としています。世界で活躍する/してきた若手、OBの先輩方をゲストにお呼びし、様々な分野で国境という枠組みを超えてそれぞれの道を切り拓いてきた方たちとのディスカッションを通して、グローバル人材とは何かに正面から向き合います。
到達目的:
国境を越えて道を切り拓いてきた先輩やそのような人々を輩出しようとする既存の施策などから、いわゆる「グローバル人材」として求められるファクター(ツール、マインドセット、スキル、経験など)を学び、構造化することを目的とします。そのうえで、国内外の社会問題・情勢に対応するために必要なファクターを言語化し、学生による「グローバル人材」の新たな定義を作成します。
到達目標:
1:グローバル人材に求められている諸要素・条件などを知り、批判的に分析できる。
2:すでに世界で活躍する人々との対話を通じて、グローバル人材に求められるファクターを抽出し、定義を考える。
3:グローバル人材を育成するために求められるファクターと、それを獲得するために必要なツール・場などを考え、大学に提言する。