労働者側・経営側の2名の実務家教員による演習である。労働法分野の最高裁判例または近年の下級審重要裁判例を解説する。労使紛争の現場の視点に立って判決書に臨むことで、裁判官がなぜこの構成をとったか、このような規範を立てたか、事実摘示をしたかを検討する。判例法理を現場から顧みることで、労働法全体と要件事実の理解を深め、多角的な視点で労働法をとらえる。実際の労使紛争事件の現場ではどのように労働法を適用し紛争を解決しようとしているのか、紛争解決のためのリーガルマインドを養成する。
予習は原則として求めないが、下級審重要裁判例検討では各回1名が判例をレポートする。判決書の重要部分を読みながら、議論やその場での個別検討を行う。1人1回の報告または当日の設例解題を予定するが、簡易なものとする。演習を通じて、法曹に必要とされる実践的な頭の回し方、表現力、深い基礎理解を修得する。復習用に資料を配布する。
13回のうち3回は2名の教員がともに担当する。うち1回は模擬労働審判を行う。教員が作成した申立書及び答弁書を用い、学生が双方代理人に分かれ、教員が審判官となる。審判官からの質問への対応・検討により、法的思考の実践を試みる。2023年度は過去の試験問題を題材とした事例を用いた。その余の10回は1名の教員が交互に担当する。最高裁判例(丸尾担当)または下級審重要裁判例(棗担当)を取り上げて、関連する他の裁判例を含めて、労働法と雇用システムを有機的・俯瞰的に、視点を動かしながら見ることを試みる。