イギリスの集団的労使関係法は,歴史上,労働組合の強大な組織力を背景として自由放任主義を基調に展開してきた。しかし近年では,組合の弱体化や政府の新自由主義的経済政策の影響によって,労働者の集団的で自発的な団結が次第に困難となっていた。一方で,コロナ禍におけるエッセンシャルワーカーの労働環境の悪化を背景に,公的医療部門などでストライキが頻発する中,政府はストライキの適法性に制限をかけるなど,自治と規制の緊張関係は強まっている。こうした現代的状況から,コモンローに立脚しつつ制定法によって柔軟な規制を積極的に打ち出すイギリスの法政策の特徴や,背景にある考え方を学び,日英の労働法体系に関する比較法的検討をおこなう。