2023年10月のハマスによるテロ攻撃以来、ショルツ首相をはじめドイツの政治家たちは「イスラエルの安全保障はドイツの国家理性だ」という文言を繰り返し、イスラエルを支持してきた。こうした現状もあり、ドイツとイスラエルの「特別な関係」に改めて注目が集まっている。ただし、巷間の議論はいささか歴史的文脈への理解を欠いたものにとどまっている(「ドイツはホロコーストの過去があるからイスラエルには逆らえないのだ」など)。実際には、第二次世界大戦後のイスラエルとドイツの関係は、国際環境にも左右され、起伏にとんだものであった。
本演習では、冷戦史研究者Carole FinkによるWest Germany and Israel: Foreign Relations, Domestic Politics, and the Cold War, 1965–1974, Cambridge: Cambridge University Press, 2019を講読する。本書は、西ドイツとイスラエルの二国間関係について、冷戦という国際環境と両国の内政から論じた国際政治史の定評ある研究書である。
受講者には毎回20~30ページ程度の英語文献を読んできてもらうことになるので、履修を希望する者はそれ相応の覚悟をすること。