本講義では「存在への問い」で知られるドイツの哲学者マルティン・ハイデガーによる戦後の技術論を手引きとして、現代技術の本質とは何か、また現代技術によって規定された社会において可能な「倫理」とはどのようなものかについて考察する。
講義ではまず、ハイデガーの「存在への問い」の基本的内容を『存在と時間』から後期に至るまでの時代的展開に即して概観する。その際、彼の哲学的思索がもつ政治性にとくに注目する。
こうした「存在への問い」の概要の把握に基づいて、講義ではハイデガーが戦後に発表した論文「技術への問い」の講読を行い、彼の技術論の倫理的・政治的含意を明らかにする。
以上のような内容を通して、本講義では現代の「応用倫理学」の本質と限界を浮き彫りにするとともに、今日のわれわれが技術に対していかなる態度を取るべきなのかを考察する。