現在は、社会は、デジタル革命、第4次産業革命といわれるパラダイムシフトの時期にある。パラダイムシフトの原動力となっているのは、「跳躍的な技術・アイデアを生み出すアーキテクチュラルなイノベーション活動」、「経済駆動メカニズム」、「経済・社会システム」の3つである。本講義では、これらのうち、主として、「経済・社会システム」を取り上げて講義を行う。
今日、これに関して、1)新たなシステムの創造、2)新たなシステムの候補となるものの実験、3)古くなった経済社会システムの見直し、4)システム相互の関係の整合化という内容を持つ「システム改革」が世界各国で活発に行われている。また、システム改革に実効性をもたせるために、あるべき未来像に向けたビジョンやそれを実現するための戦略やロードマップ形成というよりソフトな方法を用い、産学官の協働の軸を定め、これを組成することも行われている。
こうした目に見えない「経済・社会システム」を可視化して理解可能なものとし、その役割や影響についての理解を深めるとともに、社会の変化の胎動の感覚を伝えたい。それは、先端技術企業の経営者やプロジェクト・リーダーを目指す学生にとっては有用な知識のバックグランドとなるはずである。
残念ながら、13回の講義の範囲内で、全ての領域を取り上げることは出来ない。本年度は、近年ダイナミックな変化を経験している領域であって、かつ、諸君が社会に出た後、関係することが多い「イノベーション・システム」に重点を置いて講義を行う。主に、前半は、基礎的な知識の講義を行い、後半でケースを取り上げて議論する。大島非常勤講師(3回担当)からは、元NHK解説委員(経済部)としての知見を活かして、実社会の課題について取り上げ、クラス討議の指導をいただく。