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最終更新日:2026年10月16日

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応用プロジェクトI

応用プロジェクト1 社会基盤の最も大きな特徴は、およそ実体をもつ工学の対象の中で最大の空間と時間を扱うことにある。巨大であることは粗雑であることを意味せず、複雑であることもその理論化を阻むものではない。この演習では、美しくも混沌とした地域の風景の中に立って、専門家や市民の声に耳を傾け、現場から仮説を立て、その仮説を数理モデルとして理論化し、データを収集してコードを実装し、計算やプランニング、設計や模型作成などを通じて、自分たちの仮説を検証することを目指したい。 屹立するさまざまな都市プランや交通制御の理論は、果たして地域に響くものになり得るだろうか。本演習では、膨大なデータの背後にある「もの言わぬ都市」の状態を読み解き、社会基盤の将来像を構想する。地域全体を一度に変えるような壮大な提案や大袈裟な言葉だけを求めるのではなく、現場の観察と数理的な根拠に支えられた、小さくても具体的で実行可能な提案を形にするところまでを本演習の目標としたいと考えている。 授業は毎週木曜日の第4限に実施する。講義、グループ演習、計算実習、エスキス、中間発表、最終発表を組み合わせて進める。各グループは3~5名を目安として編成し、対象地域ごとに担当TAの指導を受けながら、現地調査、問題設定、モデル構築、データ分析、政策評価、計画・設計提案に取り組む(少人数で行う)。 現地調査は、指定する日に原則として2泊3日程度の日程で広島・沖縄・浜通り・松山・渋谷・新宿などで実施する。現地までの交通費および調査に必要な旅費は、大学の規定に基づいて支給する。各グループは事前に対象地域の歴史、人口、産業、土地利用、交通ネットワーク、関連計画を調べたうえで、観察、交通量調査、行動記録、写真・映像撮影、関係者への聞き取りなどを組み合わせた調査計画を作成する。調査では安全管理、研究倫理、個人情報の保護、地域への配慮をお願いしたい。
第一の対象地域は、広島都市圏の観音地区と呉市下蒲刈を中心とする。広島アクセス線などの工事について、施工段階の組合せによって交通ネットワークの状態がどのように遷移するかを記述し、交通容量、渋滞、工事制約を考慮した組合せ遷移最適制御問題を数理的解法を検討する。都市改変が急ピッチで進む中、島嶼部での過疎化が進行しており、呉市下蒲刈などの島嶼部では、高齢化、運転手不足、予約負担、帰路の不確実性を踏まえ、DRTや住民協力型交通を含む公共交通の最適化問題に取り組むつもり。

第二の対象地域は、山手線の巨大ターミナルである渋谷駅および新宿駅の周辺である。長期間にわたる駅改良、工事中の歩行空間の切替え、群集流動、再開発、土地利用更新の相互作用を分析する。歩行者の経路選択と混雑分布をHJB–FPK方程式と平均場理論を組み合わせて記述するとともに、Transformerを用いて回遊行動と土地利用更新の動学的関係をモデル化し、駅改良と都市更新を一体的に制御・評価する方法を検討したい。

第三の対象地域は、沖縄市の公共交通拠点と中心市街地である。交通結節点、街路景観、沿道用途、駐車場、イベントなどが、人々の空間認知と回遊行動に与える影響を分析する。現地で収集した画像や行動データから都市空間の特徴を抽出し、因果モデルと画像モデルを組み合わせることで、拠点整備や空間改変の効果を推定する。その結果から、公共交通を利用しやすく、歩き、立ち止まり、滞在したくなる都市空間を提案する。

第四の対象地域は、三陸沿岸から福島県浜通り、とりわけ浪江町を中心とする地域である。巨大災害後の避難、帰還、移住、人口減少、生活サービス、交通ネットワークの変化を長期的に分析する。単純な人口予測にとどまらず、誰がどこへ移動し、どのような生活機会を失い、復興政策の便益と負担がどのように分配されるのかを動学的に記述する。複数の災害・人口シナリオを比較し、事前復興と事後復興を連続した政策問題として捉えた地域像を提案する。

第五の対象地域は、JR松山駅とその周辺市街地である。駅、路面電車、バス、道路、広場、商業施設を一体の駅まち空間として捉え、歩行者の回遊行動と自動車・公共交通の流れを分析する。敵対的逆強化学習によって観測された軌跡から歩行者や交通主体の潜在的な目的を推定し、交通シミュレーションと組み合わせることで、動線、滞在空間、横断施設、交通結節機能の配置を評価する。モデルによる分析と現地での空間体験を往復しながら、駅前空間の最適設計を提案する。

以上の敷地は、研究室のプロジェクトが進行していたり、デザインセンターを研究室で運営している地域・都市である。このなかから、面白いと思う場所やテーマを選んでもらって、班編成を決定したい(受講人数がそれほど多くはないと思いますので、希望を聞いて敷地数を調整して2−3箇所にします、全体の受講人数はたぶん6人-13人くらい?を想定しています)。授業前半では、対象地域の形成史と現在の計画課題を調査し、現地で検証すべきリサーチクエスチョンと仮説を設定する。続いて現地調査計画を作成し、指定日に2泊3日程度の調査を行う。調査後は、フィールドノート、画像、観測データ、聞き取り結果を整理し、現場で発見した課題を、状態、行動、制約、相互作用、目的関数を備えた数理問題へと翻訳する。

授業中盤では、各グループがデータセットを構築し、基礎集計、可視化、モデル推定、シミュレーションを行う。中間発表では、現場で発見した問いと採用するモデルの対応関係を説明する。モデルの複雑さそのものを競うのではなく、現地で観察した事実が変数や制約条件として適切に表現されているか、モデルから検証可能な仮説が導かれているかを重視する。

授業後半では、基準ケースと複数の政策・設計ケースを比較し、施策の直接効果だけでなく、周辺地域への波及、時間的変化、不確実性、公平性、実現可能性を評価する。計算結果が現場で得た認識と一致しない場合には、現実を切り捨てるのではなく、観測、仮説、データ、モデルのどこに修正が必要なのかを検討する。この往復を通じて、分析モデルを地域を理解するための装置へと育てていく。

最終成果として、各グループは、地域の形成史と現在の課題、現地調査の記録、リサーチクエスチョン、数理モデルの定式化、分析用データ、再現可能なコード、政策シナリオの比較結果、計画・政策・設計提案を取りまとめる。提案は報告書と発表資料に加え、地図、図面、ダイアグラム、模型、動画、シミュレーションなど、地域の将来像を具体的に伝えられる形式で表現する。

成績は、現地調査と地域理解、問いとモデルの整合性、データ分析と実装の再現可能性、政策・計画・設計提案の質、中間・最終発表、報告書、グループへの貢献を総合して評価する。高度な計算手法を使用したかどうかだけではなく、重要な問いを現場から発見できたか、モデルの仮定と限界を説明できるか、計算結果を地域の言葉に翻訳できるか、提案が具体的で検証可能なものになっているかを重視する。

地域は、モデルを適用するための単なるデータではない。そこには歴史と生活があり、政策によって利益を得る人と負担を受ける人がいる。本演習では、異なる専門をもつ学生が協働し、現場、理論、データ、計算、設計を一つの論理として結びつけることを求める。最終的に示すべきものは、「何を計算できたか」だけではない。その計算によって地域の何が見えるようになり、どのような未来を提案できるようになったのかである。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
FEN-CE4m06L1
FEN-CE4m06L1
応用プロジェクトI
羽藤 英二
A1 A2
木曜5限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
不可
開講所属
工学部
授業計画
第1回ガイダンス:社会基盤を現場から数理化する希望プロジェクト調査 第2回対象地域の形成史、社会基盤、政策課題の把握地域基礎カルテ 第3回グループ編成とリサーチクエスチョンの設定問い・仮説・対象範囲 第4回現地調査設計:観察、計測、聞き取り、画像・位置データ調査計画書 第5回都市・交通現象の数理的定式化概念モデル・主要方程式 第6回現地調査結果の共有と課題構造化フィールドノート・課題図 第7回データ構築と基礎分析データセット・記述統計 第8回中間発表:現場の問いとモデルの対応中間発表資料 第9回モデル推定・シミュレーション実習基本モデル・コード 第10回比較モデル、反実仮想、不確実性の検討比較計算結果 第11回政策・計画・空間設計案の作成複数の代替案 第12回最終エスキス:モデルと提案の統合最終案・可視化 第13回発表会
授業の方法
スタジオ形式で行う。各班にTAが2名ついて、プログラミングやAIの指導を行う。
成績評価方法
出席などで判定
履修上の注意
特にはない。
その他
数理モデルが好きな人も、現場が好きな人も、デザインに関心がある人も、たぶん楽しいはず。
実務経験と授業科目の関連性
実務者との対話の機会が講義の中で確保されている