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最終更新日:2026年10月16日

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社会基盤学序論

社会基盤学序論です。
社会基盤とは何だろうか。自分でもなかなか一言で云うのは難しい。確かに、街路や広場、駅や鉄道、橋や港湾、高速道路に河川敷、海岸線に上下水道、都市空間や建築をも破壊する災害復興まで、私たちの社会は多様な社会基盤によって支えられている。ましかし、社会基盤は単なる巨大で長い時間にわたって私たちを守り支え続ける「モノ」というだけでは十分ではないのではないか。果たしてそれは、人々の生活と移動を支え、地域の安全や経済を守り、文化を育むものであって、都市や国土の形そのものを長い時間をかけてつくり変えていく、技術と社会文化の接点であるともいえるだろう。

社会基盤をつくるためには、私たちは、実際に自分の足で地域を歩き、地理的課題を発見し、建築や都市の少し調子のおかしいところを見渡した上で、将来の地域像を思い描き、プランニングし、構造物や制度を設計する。私たちは、膨大なデータとAIを駆使して、建設後も適切に長期にわたって地域とともにそれを管理し続けなければならない。その過程では、自然科学や工学だけでなく、経済、制度、歴史、地理、文化、景観、心理、市民生活について考える必要がある。本講義では、羽藤が専門とする都市・交通だけではなく、布施先生の空間情報、石田先生のコンクリート、田島先生の海岸工学といった世界を代表する社会基盤分野の教員の専門トークを通じて、社会基盤学の広がりと共通する考え方を学びたい。

授業前半では、第一線で研究と実践に取り組む教員が、それぞれの専門分野から社会基盤の役割を論じる。調査、計画、設計、マネジメントという一連の流れを理解するとともに、専門分野によって社会や地域の見方がどのように異なるかを考える。また、「私の好きな社会基盤」の発表を通じて、学生さん自身が身近な場所や印象に残る構造物を調べ、その価値を自分の言葉で説明してもらいたい。

授業後半では、地方鉄道、AI、防災・復興、リニア中央新幹線をめぐる討論を行う。これらの問題には唯一の正解があるわけではない。経済性、安全性、利便性、公平性、環境、地域文化、将来世代への影響など、立場によって異なる評価軸が存在する。資料を調べ、根拠を示して主張し、異なる意見に耳を傾けながら、社会基盤に関する公共的な意思決定の難しさを学ぶ。

本講義の目標は、社会基盤を構造物としてだけでなく、自然、技術、人間、制度から構成される社会システムとして理解することである。受講者には、社会基盤の主要な専門分野とその相互関係を説明できること、身近な社会基盤を観察して価値と課題を発見できること、社会的な争点について複数の立場から検討できること、そして自らの考えを根拠とともに他者へ伝えられることを求める。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
FEN-CE2m23L1
FEN-CE2m23L1
社会基盤学序論
羽藤 英二
A1 A2
月曜5限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
可
開講所属
工学部
授業計画
第1回は10月5日(月)に実施する。羽藤英二が「社会基盤とは何か」をテーマにガイダンスを行う。羽藤の専門である都市と交通を手がかりとして、建築や都市工学との関係を示しながら、社会基盤が人々の行動、都市の構造、地域の将来をどのように形づくっているかを考え、講義全体の見取り図を示す。 第2回は10月19日(月)に実施する。布施孝志が「調査・計画・設計・マネジメントの今」をテーマに講義する。空間情報技術を中心に、現実の社会や国土をどのように計測し、その情報を計画、設計、施工、維持管理へつなげるのかを学ぶ。 第3回は10月26日(月)に実施する。石田哲也が「社会基盤の設計」をテーマに講義する。コンクリート構造物を題材に、材料、構造、安全性、耐久性を考慮した設計の考え方を学び、長期にわたって社会を支える構造物をつくることの責任を考える。 第4回は11月2日(月)に実施する。田島芳満が「水圏環境と社会基盤」をテーマに講義する。海岸や沿岸域を対象に、自然の作用を理解しながら、災害への安全性、環境、生態系、地域利用を両立させる社会基盤のあり方を考える。 第5回は11月9日(月)、第6回は11月16日(月)に「私の好きな社会基盤」を実施する。受講者が自ら選んだ社会基盤について、その場所、成立過程、技術的特徴、社会的役割、魅力、現在の課題を調べて発表する。著名な構造物だけでなく、日常生活を静かに支えている身近な道路、橋、堤防、駅、広場、水路なども対象とする。 第7回は11月25日(水)に、月曜日授業の振替として実施する。「社会基盤の研究と実践」をテーマに、大学における研究が、現場の調査、技術開発、政策形成、設計、地域との協働へどのようにつながるのかを学ぶ。研究と実務を別々のものとして捉えるのではなく、現場の課題が研究を生み、研究成果が再び現場を変えていく循環を考える。 第8回は12月7日(月)に、グループ発表に向けた班分けを行う。各班は、「地方鉄道は廃線すべきか」「AIと社会基盤」「事前復興と防災」「リニアは国土を変えるか」などのテーマから検討課題を選び、問題設定、主要な論点、調査方針および役割分担を決定する。単純な賛否ではなく、社会基盤をめぐる複数の立場や将来の選択肢を比較できる問いを設定する。 第9回は12月14日(月)に、各班が設定した問題について調査と分析を行う。統計資料、政策文書、既往研究、国内外の事例などを収集し、利用者、住民、事業者、行政などの立場によって問題の見え方がどのように異なるかを整理する。利用者数や収支、移動機会、地域経済、観光、災害時の代替性、環境負荷、説明責任、行政負担など、多面的な観点から検討を深める。 第10回は12月21日(月)に、調査結果を踏まえて各班の提案と発表資料を作成する。現状維持、廃止、上下分離、交通モード転換、AIの導入、事前復興計画、大規模交通投資など、複数の選択肢を比較し、それぞれの効果、費用、リスク、公平性を整理する。教員および他班との中間討議を通じて、問題設定、論拠、提案内容を修正し、オープンハウスでの発表に備える。 第11回は12月28日(月)に、「社会基盤の未来」を共通テーマとするオープンハウス方式の発表・討議を行う。各班が会場内に資料を展示し、参加者は自由に各発表を巡りながら、説明、質疑、意見交換を行う。発表者と参加者を交代し、全員が複数のテーマに触れることで、異なる問題の背後にある共通構造や、社会基盤の将来を考えるうえで必要な視点を共有する。討議を通じて得られた意見を踏まえ、各班は自らの提案を再検討する。 第12回は1月4日(月)に、「社会基盤の未来」をテーマとして、卒業生の野坂周子氏による講義を行う。大学で学ぶ社会基盤学が実社会でどのように生かされるのかを知り、グループ発表で扱った課題とも関連づけながら、技術者や研究者に求められる視野、倫理、専門性、社会との関わり方について考える。 第13回は1月18日(月)を予備日とする。休講等が生じた場合の補講に充てるほか、必要に応じてオープンハウスでの討議を踏まえた追加発表、各班の提案の振り返り、または講義全体の総括を行う。
授業の方法
講義を聴くだけでなく、事前調査、短い発表、質疑、グループ討論への積極的な参加を求める。「私の好きな社会基盤」では、対象を自ら観察し、写真、地図、図面、統計資料などを用いて、その価値を具体的に説明する。討論では、賛成・反対という結論だけでなく、判断の根拠、前提条件、影響を受ける主体、代替案を明確にすることを重視する。
成績評価方法
総合的に判断する。
履修上の注意
社会基盤が好きだといいな、とは思っている。
その他
たぶん、おもしろいはず。
実務経験と授業科目の関連性
実務者との対話を講義の中に設けている。