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最終更新日:2025年4月21日

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全学自由研究ゼミナール (「経済安全保障」とルール形成戦略)

「経済安全保障」とルール形成戦略
 現在の世界は、激動の中にある。
 冷戦終結後の約30年間、世界経済の基調は「グローバル化」であった。物とサービスの貿易を自由化し、知的財産権の保護水準を斉一化しようとするWTO協定が、1995年に発効した。製造業のサプライチェーンは全世界に延び、各国の国民経済は「フラット化」し、自由貿易の水準をいっそう高めるための自由貿易協定(FTA)が盛行した。その間、わが国はCPTPPの締結・発効など尽力したが、世界の情勢によく対応できず、経済成長は達せられず、国際的地位は低下を続けた。
 いまや、この基調が大きく変わろうとしている。習近平体制の中国は軍備拡張を進めつつ、その経済力を武器化する姿勢を強めている。とりわけ台湾をめぐる情勢は、日に日に緊迫している。これに対し、米国は厳しい対応を強めており、バイデン政権がハリス政権になってもトランプ政権になっても基調が変わるとは予測されない。さらに、ロシアによるウクライナ侵略により、別種の不安定要因が生じている。これに伴って国際経済も大きく変化しており、日本を含む各国の法や企業のビジネスにも、大きな影響が及んでいる。

 このゼミでは、法律と経済・経営という異なる視点から「ルール形成戦略」を手がけてきた担当教員2人と共に、経済の最前線で企業が直面する課題を理解し、「ルール形成戦略」の観点から課題を解決する機会を提供する。
 担当教員(玉井克哉)は法学者であるが、知的財産法や行政法などの分野で、日本全体のルール形成に従事してきた。その立場から、現在の急激な変化を踏まえたルール形成戦略を研究対象にしている。
 担当教員(國分俊史)は、企業に対するコンサルテーション業務を長年担当し、その中で「ルール形成戦略」の重要性を強調した草分けとして、経済安全保障に先覚的な多くの企業の要望に応えてきた。その過程で、国内・海外の政治・経済関係の要人と頻繁に接触している。
 これに加え、川井大介助教(インド太平洋安全保障・重要新興技術政策)が恒常的に参加し、さらに武見綾子准教授(グローバル合意形成分野)が随時参加する予定である。同准教授は、国際的なヘルス・セキュリティと保健政策の専門家であり、マッキンゼーでコンサルタントの経歴や、世界保健機関(WHO)での職歴も有しており、昨年2月から、先端研において「グローバル合意形成分野」を立ち上げる、気鋭の研究者である。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
51470
CAS-TC1200S1
全学自由研究ゼミナール (「経済安全保障」とルール形成戦略)
玉井 克哉
A1 A2
水曜5限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
YES
他学部履修
不可
開講所属
教養学部(前期課程)
授業計画
 この演習は、対面により実施する。(初回から対面で実施することにつき、教養学部の許可を得ている。帰省などの都合で初回に出席できない場合は、連絡されたい。)  参加希望者は、次の2点について考えておき、説明会の場で自己紹介を兼ねて5~10分程度考えを述べるよう準備しておくことが望ましい。(口頭のコミュニケーションが苦手な場合は、考えをまとめてPDFにしておいてもよい。) Ⅰ この演習に何を期待するか。 Ⅱ 「経済安全保障」について考えていること。  同じ担当教員(玉井克哉)が火曜5限にも全学ゼミを担当するが、このゼミとは独立であり、いずれかを選択しても、両方を選択しても差し支えない。
授業の方法
 このゼミナールでは、玉井が国の法律のレベルでの「ルール形成戦略」の実例について解説したあと、國分が企業経営における「ルール形成戦略」を担当する。また、各界の最前線で活躍するゲストのレクチャーを実施することがある。2024年度Sセメスタでは、神田眞人財務官(当時)、齋藤健経済産業大臣を訪問した。過去の演習では、北村滋前国家安全保障局長(先端研上級客員研究員)、兼原信克元内閣官房副長官補、小泉悠先端研講師(ロシア問題の専門家)によるレクチャーを行った。  これらとともに、実際の企業現場で発生する具体的な課題に取り組む修練も行いたい。たとえば、我が国の市場経済のあり方を根本的に変えつつある経済安全保障推進法について、「特定重要物資」を供給する企業や「特定社会基盤役務」を提供する事業者はどのように行動すればよいか、米国企業と最先端の共同技術開発を行うために日本政府がどのような法制度を採用する必要があるか、あるいは今年の国会で成立した重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律(セキュリティ・クリアランス法)が企業行動にどのような影響を与えるか、といったことである。
成績評価方法
全学自由研究ゼミナールは、通常の科目とは異なり、「合」「否」によってのみ評価することとされている。毎回の授業に参加しクラスの議論に貢献した場合は、「合」となる。
履修上の注意
毎回の演習の準備のため文章を読み、コメント・ペーパーを執筆するというのは、それ自体、軽い負担ではない。ただ単に単位を取得するためであれば、まったく効率的な方法とはいえない。しかし、大学の設立目的に照らせば、そもそも「効率的」に単位を取得しようという発想そのものが誤りである。高校までとは異なり、大学での勉学には標準というものがない。勉学の内容は学生諸君各自が決めるのであり、そこから何を得るか(得ないか)も、各自に任されている。同じ時期に同じ大学の同じ学部に在籍して同時に卒業しても習得したものがまったく異なるというのが、大学である。意欲ある学生諸君の参加を期待している。 授業は5限に設定されているが、随時延長することがありうる。外部の機関や組織を訪問することもある。そのため、6限の時間帯に定期的な予定を入れないことが望ましい。 履修者選抜は極力行わない。参加希望者が多数となった場合は、課題を増やすなどして自然に選抜を行うようにしたい。
実務経験と授業科目の関連性
担当教員(玉井克哉)は2013年4月以降弁護士登録をしており、その資格で、いくつかの企業の営業秘密に触れる機会があった。対象となる営業秘密はむろん開示できないが、この演習の背景として生かされる。 担当教員(國分俊史)は、コンサルティング・ファームにおいて多数の企業と接触した経験がある。この演習は、その経験を大いに生かして開講される。