学部前期課程
HOME 学部前期課程 分子生命科学
過去(2021年度)の授業の情報です
学内のオンライン授業の情報漏洩防止のため,URLやアカウント、教室の記載は削除しております。
最終更新日:2025年4月21日

授業計画や教室は変更となる可能性があるため、必ずUTASで最新の情報を確認して下さい。
UTASにアクセスできない方は、担当教員または部局教務へお問い合わせ下さい。

分子生命科学

分子から見た生命現象
生物の織りなすさまざまな生命現象は、すべて遺伝子DNAにコードされた遺伝情報が機能を発揮した結果であると言ってもよい。遺伝情報は、RNA、タンパク質、そしてそれが作り出す低分子有機化合物などの分子の形となり、これらの分子が相互作用しながら細胞内外で働いた結果、生き物としての不思議な性質が作り出されてくるのである。生物化学という学問分野は、このような生命現象が、分子の働きによっていかに作り出されるかを解明する研究分野である。
 この授業では、この分野の代表的な教科書である「細胞の分子生物学 第5版」に沿って基本的な概念の説明と、その知識を基盤とする最先端の研究の紹介を交互に行う。基礎知識がなくとも生命科学研究のテーストを味わうことができるように配慮して講義を進める。理学部生物化学科の担当教員6名により、本学科の研究と密着した、タンパクの質構造と機能、RNAによる制御、神経細胞の分化、生体リズム、味覚・嗅覚・光感覚、学習記憶などのテーマについての講義を行う予定である。
MIMA Search
時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
51439
CAS-GC1E36L1
分子生命科学
塩見 美喜子
A1 A2
木曜5限
マイリストに追加
マイリストから削除
講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
不可
開講所属
教養学部(前期課程)
授業計画
第1週(10/7)担当:濡木 理 教授 11章「小分子の膜輸送と膜の電気的性質」前半(pp. 651〜667)    - 運搬体タンパクと能動輸送    - イオンチャネルと膜の電気的性質 第2週(10/14)担当:濡木 理 教授  11章「小分子の膜輸送と膜の電気的性質」と研究トピック   研究トピック:「分子を膜を介して輸送するメカニズムを原子のレベルで見る」  細胞膜は、水分子1個も通さない脂質2重膜からできている。膜には、膜輸送体タンパク質が埋め込まれ、イオンや糖、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、異物(薬剤)の輸送を的確に行うことで、細胞内の環境を一定に保っている。本講義では、細胞の分子生物学の7章の内容に基づき、輸送体(ポンプ、チャネル)が、どのようなエネルギーを使って輸送を行うのか、どのように輸送機質を認識するのか、輸送を制御するメカニズムは何なのか、などの課題に関して、分子構造(タンパク質の形)のレベルで明らかにして行きたい。本講義は、生命現象を、物理や化学の言葉で説明する、構造生物学の講義である。   第3週(10/21)  担当:飯野 雄一 教授  11章「小分子の膜輸送と膜の電気的性質」後半(pp. 667〜693)    - イオンチャネルと膜の電気的性質     (神経細胞の電気的興奮、神経細胞間のシグナルの伝達など) 第4週(10/28)担当:飯野 雄一 教授  11章「小分子の膜輸送と膜の電気的性質」と研究トピック  研究トピック:「神経細胞の興奮を観察することにより学習と行動のしくみがわかる」  ヒトを含むあらゆる生物の脳は無数の神経細胞があつまってできている。その入り口は感覚神経である。そこでは外界からの光や味、匂い、触覚などを受容して、それが他の神経に順次伝わっていく。その過程で脳神経系が感覚刺激に対してどう反応するかを決め、筋肉に指令を送ることにより行動が起こることになる。神経回路の中をシグナルはどう伝わっていくのだろうか。過去に経験したことを覚えているとはどういうことなのだろうか。どういう分子がそれを担っているのだろうか。簡単な生きものを使うことにより、感覚入力から行動出力までの一連の過程の全体を通して調べる研究を紹介する。 第5週(11/4)担当:眞田 佳門 准教授  16章「細胞骨格」前半(pp. 965~1010)    - 細胞骨格繊維の自己集合と動的な構造    - 細胞骨格繊維の調節 第6週(11/11)担当:眞田 佳門 准教授  16章「細胞骨格」と研究トピック  研究トピック:「脳発生過程で神経細胞は細胞骨格を巧妙に調節して長い距離を移動する!」  私たちの脳には約300億個の神経細胞がある。脳が正しく形づくられるためには、神経細胞が、誕生した場所から特定の領域に移動し、正しく配置する必要がある。その際、誕生した場所から、遠くはなれた目的地まで長い距離を移動する神経細胞がある。大脳新皮質は思考・記憶・行動などを司る脳領域であり、大脳新皮質を構成する興奮性神経細胞と抑制性神経細胞では、生まれる場所や移動様式が大きく異なる。近年、生体脳や脳スライスを用いて、移動する神経細胞をリアルタイムでイメージングすることができるようになってきた。このような最近の知見を交えて、大脳新皮質を構成する神経細胞が、「どこで誕生し、どのように移動して大脳新皮質内に配置するのか」を解説する。 第7週(11/18)担当:上村 想太郎 教授  16章「細胞骨格」後半(pp. 1010~1050)    - 分子モーター    - 細胞骨格と細胞のふるまい 第8週(12/2)担当:上村 想太郎 教授  16章「細胞骨格」と研究トピック  研究トピック:「分子モーターによる力発生や運動の仕組みを探る」  私たちがからだを自由に動かすことができるのは筋肉のおかげである。その筋肉は主に繊維状のアクチンタンパク質と繊維状のミオシンと呼ばれる分子モーターの束がそれぞれ交互に配置されている。ミオシンが一斉にATPと呼ばれるアデノシン三リン酸を加水分解することによって得られるエネルギーを用いてアクチンと相互作用し、力発生が起こる。その結果筋肉全体が収縮を起こし強い力を発生することが可能となる。また、キネシンと呼ばれる分子モーターは脳内の神経細胞内の細胞骨格上をまるでレール上を歩くように神経伝達物質を細胞外へと輸送する機能を持つ。さらには細胞分裂時における紡錘体に作用し、分裂を促進させる働きを持つ分子モーターや遺伝子発現に欠かせない転写、翻訳などもDNAやRNAをレールとした分子モーターで成り立っている。本講義ではさまざまな細胞で働く分子モーターを取り上げ、その力発生や運動の仕組みを解説する。 第9週(12/9)担当:山中 総一郎 准教授  7章「遺伝子発現の調節」前半    - 転写    - 転写制御 第10週(12/16)担当:山中 総一郎 准教授  7章「遺伝子発現の調節」と研究トピック  研究トピック:「クロマチン構造とエピジェネティクス」 第11週(12/23)担当:塩見 美喜子 教授  7章「遺伝子発現の調節」後半    - 転写後の遺伝子発現制御 第12週(1/6)担当:塩見 美喜子 教授  7章「遺伝子発現の調節」と研究トピック  研究トピック:「小さなRNAによる遺伝子発現制抑制のしくみ」  からだをつくる細胞は同じ遺伝子情報を有する。しかし、細胞に(あるいは組織に)特異性をもたせる(専門化させる)ためには、各遺伝子の発現は時空間特異的に制御されなくてはならない。遺伝子発現調節の仕組みは複数あるが、その中に20-30塩基からなる小さなRNAを介した機構がある。これをRNA干渉(RNAi)とよぶ。RNAiの中核因子Argonauteタンパク質は小さなRNAによって標的RNAに運ばれた後、標的RNAを切断する、あるいは翻訳を阻害することによって遺伝子発現を抑制する。その反応性、また標的認識特異性は非常に高く、創薬として用いられる可能性も秘める。本講義では、小さなRNAが作られる仕組みをはじめ、RNAi機構の仕組みや応用性、発見の歴史等に関して解説する。
授業の方法
「細胞の分子生物学(第6版)」の7章、11章、16章に絞ってスライドを用いて講義を進める。講義では「細胞の分子生物学」の必要な図をPower Pointスライドで映して解説する。映写資料のハンドアウトを準備するので「細胞の分子生物学」を持っている必要はない。しかし、「細胞の分子生物学」は非常に優れた教科書として評判が高いので、生物化学分野に興味のある学生は「細胞の分子生物学」を購入し、前もって該当箇所を読み進めた上で講義に出席することを薦める。これにより、現在、生命科学の研究領域の最前線で進んでいる「研究トピック」をより深く理解することができる。
成績評価方法
毎回の授業の最後に実施する小テストにて評価する。
履修上の注意
授業への出席が成績評価の上で重要な点に注意すること。