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最終更新日:2026年9月17日

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交渉と合意

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現代社会では、利害や価値観の多様化が進み、交渉と合意形成の能力が重要性を増しています。公共政策の立案、地域社会の意思決定、企業経営、国際関係など、あらゆる場面で交渉による合意形成は欠かせません。対立を回避せず、正統性と実効性を備え、大きな付加価値をもたらす交渉と合意を探究する学問が「交渉学」です。現在では、公共政策大学院、法科大学院、ビジネススクール、都市計画大学院など、欧米の主な専門職大学院で体系的に教えられ、専門職教育の基盤の一つとなっています。

本講義は、公共政策大学院で20年間、継続して開講し、長年の授業実践と研究の蓄積を踏まえ、講義と演習を有機的に組み合わせたカリキュラムとして発展してきました。担当教員は、Ph.D.および修士課程においてマサチューセッツ工科大学(MIT)およびハーバード大学の交渉学の講義を多数履修し、合意形成の理論と実践を専門的に体得しており、本講義の理論枠組みと教育方法は、こうした国際的に確立された成果を基盤としつつ、日本の公共政策の実践的文脈に合わせて再構成されたものです。

交渉の上手・下手は生まれつきの資質に左右されると思われがちです。しかし、交渉の理論を習得し、練習を繰り返すことで、交渉能力は改善できます。問題の構造を整理し、お互いの利害を明確にし、選択肢を広げ、効率的かつ正統性のある合意を見出す。こうした一連の思考過程は、体系的な理解と演習を通じて体得できます。本講義では、経験や勘に頼るのではなく、構造的に考えながら交渉を分析・準備・実行できる力を養います。

交渉学の核心は、相手を打ち負かすことではなく、持続可能な合意を構築することにあります。双方が将来にわたり受け入れ可能な解決策を見いだすこと、すなわち正統性と実効性を兼ね備えた合意を実現することが目標です。いわゆる「Win-Win型交渉」と呼ばれる考え方も、この理論的基盤の上に位置づけられます。

本講義では、とりわけ公共政策領域における交渉と合意形成に焦点を当てます。公共政策の交渉は、個人間や企業間の交渉とは異なる性質もあります。多者間交渉となり、ステークホルダーの多様性、配分の公正さへの強い社会的要請、さらには科学的不確実性への対応など、より複雑な条件のもとで合意を形成しなければなりません。また、交渉による合意が成立しえない排他的な価値観の対立への対応として、熟議の場や合意形成を目指さない判断も必要です。講義では、都市・環境分野の事例を通じて理論と実践を往復しながら、公共の場で合意を設計・構築する専門能力を培います。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
5130020-1
GPP-MP6Z30L1
交渉と合意
松浦 正浩
S1 S2
火曜4限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
公共政策学教育部
授業計画
★日程の記載に誤りがありましたの。申し訳ございません、以下修正してあります(2026/4/10)★ イントロダクション(講義概要の説明) (4/7) 第1部 交渉分析の基礎と応用(交渉学) 第1回 基礎理論と配分型交渉 (4/14) 交渉の戦略立案と分析(反省)に欠かすことのできない交渉の基礎理論を解説する。具体的には、立場と利害、BATNA、ZOPA等の概念を導入する。 第2回 交渉シミュレーション「桜井さんvs.小池さん」★ (4/21) 2者間1イシューの演習を通じ、最初の価格提示(アンカリング)、配分型交渉の課題などについて、体験的に理解する。 (※補習⇒生成AIを用いた2者間1イシュー交渉演習) 第3回 統合型交渉(ミニ演習) (4/28) パレート最適を目指す統合型交渉の理論を解説するとともに、シンプルな交渉演習を通じてその理論を感覚的に理解する。 第4回 交渉シミュレーション「水無月開発」★ (5/12) 2者間複数イシューの演習(得点制)を行い、統合型交渉によるパレート改善の原理とその実践の難しさを理解する。 第5回 交渉分析の応用課題:心理的側面、構造的要因、倫理 (5/19) 認知バイアスなどの心理的側面、権力関係や制度設計といった構造的要因、さらに交渉における倫理と正統性の問題を取り上げる。 第6回 交渉シミュレーション「サリー・ソプラノ」★ (5/26) 2者間複数イシューの演習(非得点制)を行い、取引材料を増やすことによるパレート改善の可能性について理解する。 第2部 公共政策における交渉と合意形成 第7回 公共政策における交渉と合意形成の理論と実践 (6/2) 政策形成を合意形成の機会ととらえることで、技術官僚型、参加型、協働型(交渉による合意)、熟議型の4類型を理解する。また、協働型政策形成(マルチステークホルダー交渉)の実践の方法論を理解する。 第8回 ファシリテーション手法 (6/9) 合意形成の現場で必要とされるファシリテーションの関連技法(主にラベルワーク)について、体験的にスキルを身につける。 第9回 交渉シミュレーション「ハーボコ」★ (6/16) 港湾整備に関する6者間の交渉シミュレーションを行い、公共政策における交渉の特徴について理解を深める。 第10回 「ハーボコ」のふりかえり、中間テスト (6/23) ハーボコで各自が得た体験を全員でふりかえり、公共政策形成過程で行われる交渉の特徴を整理する。また文献等をもとに、外交問題、環境政策、まちづくりに関する公共的な交渉の特徴について理解を深める。また、これまでの理解を確認するためにマークシート形式の中間テストを行う。 第11回 価値観に基づく公共紛争とその解決 (6/30) 交渉による利害の取引だけでは解決が難しい価値観(value)に基づく公共紛争の存在について理解し、その解決や議論の方法について、実際のケースをもとに学生中心にディスカッションする。熟議(deliberation)の実践についても検討する。 第3部 まとめ 総復習 (7/7) 最後に、「交渉と合意」で学んだことがらについて全員でふりかえる。
授業の方法
本講義はスキルの体得に主眼を当て、米国の専門職大学院で長年行われている「交渉学」の授業とほぼ同じ形式で進行します。交渉スキルは自動車の運転と同じく、学習と実践を繰り返すことで始めて体得できるものです。講義では複数の交渉シミュレーション演習を用い、学習した「交渉学」の理論や方法論を実際に自分自身で試していただきます。また、現場への適用を常に念頭に置きながら講義に参加していただくため、ディスカッションへの参加を重視します。本講義は聴講の場ではなく、むしろ講師を含めた「学びあいの場」だと考えて参加してください。
成績評価方法
平常点(出席等)30%、交渉シミュレーションのふりかえりレポート(計3回)計30%、中間テスト20%、最終レポート20%
履修上の注意
出席について:初回を除く2回以上の無断欠席は単位取得の意思がないものと判断する。 交渉シミュレーションの事前準備:設定に関する資料を事前に送付するので、授業時間までに必ず通読して、シミュレーションする状況を理解しておくこと(※準備を怠る学生に対しては、本講義への出席停止等の厳しい措置をとる)。 言語について:受講者は、交渉演習を日本語で行うため、日本語によるネイティブレベルの会話および文法等の誤りのない日本語によるレポート執筆の能力を有する必要がある。