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経済物理学

経済物理学
経済物理学の分野の概要を紹介するとともに、その応用例として、株式市場のデータ、外国為替市場のデータ、金融テキストデータやSNSデータなどを利用した研究を紹介する。
 経済物理学の特徴は、これまでより高頻度・高解像度で観察されるデータの規則性、特徴を取り出すことにより、その市場やシステムの特性を物理学的アプローチ、経済学的アプローチにより分析することにある。これらの特性を把握するために必要とされる物理・数理・シミュレーション・マイニングの話題も解説する。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
5123440
GPP-MP6E20L1
経済物理学
島田 尚
S1 S2
集中
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教室
国際学術総合研究棟 講義室B
講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
公共政策学教育部
授業計画
1. イントロダクション 経済物理学とは(高安秀樹・高安美佐子・島田尚) 本集中講義全体のガイダンスに続き、まず経済物理学分野の概観を紹介する 2. ベキ分布とそのモデル(高安秀樹・高安美佐子)  ベキ分布が生じる仕組みとその特性に焦点を絞り、ランダム乗算過程や自己組織臨界現象などの数理を学ぶ。市場変動で特徴的に観測されるベキ分布に関して、平均値や標準偏差がサンプル依存する性質などのデータ解析上の留意点を確認する。また、聖ペテルスブルグのパラドックスなど、ベキ分布と関連した経済学的な応用事例を紹介する。 3. 企業ネットワークの数理(高安秀樹・高安美佐子)  国内約100万社の企業の間の取引ネットワークに関する数理を紹介する。データに基づいて、国内約100万社の企業間の取引ネットワークの構造の解析を行い、その特性を再現する数理モデルを導出する。また、企業ネットワーク上でのお金の流れを記述する拡張重力型方程式とその応用事例を学ぶ。 4. 金融市場データ解析(高安秀樹・高安美佐子・金澤輝代士)  定常性検定、連検定、変化点検出などの時系列解析の基盤的な視点から市場変動時系列データを解析し、市場の統計的性質が時々刻々変化する特性を持つことを確認する。分布関数や相関関数、拡散解析などにより単純なランダムウォークとは異なる市場変動の特徴を抽出した事例を紹介する。 5. 金融市場の数理モデルI (高安秀樹・高安美佐子・金澤輝代士)  データ解析と数理モデリングを通じて、金融市場の微視的構造を理解することを目指す。まず、金融市場をモデル化するにあたって、インターバンク外為市場における板情報の仕組みを説明する。また、関連する統計物理学分野(分子運動論、ブラウン運動、ランジュバン方程式)の概説を行い、金融市場の数理モデリングに向けて応用するアイディアを述べる。 6. 金融市場の数理モデルII(高安秀樹・高安美佐子・金澤輝代士)  金融市場において現時点で最もミクロなデータである、個々のトレーダーのトレーディング・ログの解析結果を解説する。個々のトレーダーがどういう統計法則に従って意思決定を行うかをデータに基づいて学ぶ。解析結果から得られた統計則を元に、個々のトレーダーの動力学をディーラーモデルによってモデル化する。更に、このミクロなエーンジェントベースモデルを統計物理学の計算手法によって解析的に解き、データと直接的な比較を行う。 7. 市場変動観測所について(高安秀樹・高安美佐子)  経済物理学の応用として構想されている市場変動観測所に関して述べる。時系列解析、ビッグデータ分析や数理モデルに基づくシミュレーションをリアルタイムで実施するシステムを構築することで、金融市場の異常な変動を早期に検出し、金融危機を未然に回避するための施策を探る。経済物理学の今後の展開について議論する。 8. 社会・経済系の構造と頑健性I(島田尚)  社会・経済系は取引関係、依存関係などの複雑なネットワーク構造で特徴付けられる。本講義ではまず、このような現実の複雑な系のネットワーク構造の特徴と、そこからどのような情報が読み取れるかについて解説する。 9. 社会・経済系の構造と頑健性II(島田尚)  上述のような現実社会のネットワーク構造は、互いに競争・依存しながら共存し、また新しい要素の出現プロセスを経て実現されている。このような系の頑健性について、すなわち外生的ストレスにさらされた場合もしくは自発的にどのような特徴を持って崩壊するかについて、近年の研究を紹介する。 10. ソーシャルメディアの数理(山田健太) 大規模なソーシャルメディアのデータ(ブログやツイッター)を解析すると、単語の出現頻度時系列からいくつかの普遍的なパターンが観測される。これらのパターンを再現するエージェントベースモデルを構築し、エージェント間にどのような相互作用があると、データ観測されたマクロスコピックなパターンが創発するのかをシミュレーションと理論解析によって示す。また,誤情報の拡散現象にモデルを応用し,誤情報拡散の特徴や制御の方法についても議論を行う。 11. 金融ビッグデータと人工知能技術I 金融データマイニング概説(和泉潔)  この日は、金融市場とビッグデータ・人工知能技術との関連領域の研究をとりあげる。本講義ではまずこの分野について概説する。最新の人工知能技術を金融市場の分析に応用した事例を紹介する。特に注文情報や経済ニュース等の大量データを自動的に分析するデータマイニングで、どのような種類のデータをどのように処理しているかについて、いくつかの研究事例を基に解説する。機械学習を用いる可能性と問題点についても議論を行う。さらに、それらの問題点を克服するために、機械学習と経済学モデルを統合した研究事例を紹介する。 12. 金融ビッグデータと人工知能技術II人工市場による市場制度の設計(水田孝信)  人工市場とは、計算機上に人工的に作り出された架空の市場である。人工市場シミュレーションの基本的な考え方やモデル構築の要点を解説し、ティックサイズの設定や市場制度のテストを人工市場シミュレーションで事前評価した事例を紹介する。さらに市場現象にシミュレーション技術を用いる際の可能性と限界についても議論を行う。 13. 金融ビッグデータと人工知能技術III 金融データマイニング(坂地泰紀)  本講義では、データマイニング技術を用いて経済・金融の分析を行う研究をいくつか紹介する。データマイニングにおいて、特に大規模テキストを対象にするテキストマイニングの技術に着目し、それを用いた金融テキスト分析の今後の動向について議論を行う。
授業の方法
5/30, 6/6, 6/13, 6/20 の集中講義形式(いずれも土曜日、2限〜4限、 6/6 のみ2限〜5限)で開催する。
成績評価方法
授業参加態度とレポートによる
教科書
特になし
参考書
岩波講座、計算科学6、「計算と社会」第2章(高安美佐子著)、第3章(和泉潔著) 高安美佐子/編著、学生・技術者のためのビッグデータ解析入門 [日本評論社(2014)] 高安美佐子/編著、ソーシャルメディアの経済物理学(ウェブから読み解く人間行動) [日本評論社(2012)] 高安秀樹、高安美佐子著、エコノフィジックス-市場に潜む物理法則     [日本経済新聞社(2001)] 高安秀樹著、経済物理学の発見[光文社新書(2004)] その他、論文(授業開始時に指定)
履修上の注意
*講義の順序は授業の開始までに予告なく変更になることがある。