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最終更新日:2024年4月22日

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情報社会と総合安全保障

「情報社会と総合安全保障」/Information Society and Comprehensive Security
この講義では情報社会の総合安全保障を日本の具体的な政策として理解することを目標とします。ここで総合安全保障とは、狭義の安全保障つまり軍事、経済安全保障、政府の危機管理体制、さらに社会を構成する政治経済思想の組み合わせを指しています。この講義では、日本の総合安全保障を、①個別的および集団的自衛や軍備管理・軍縮条約といった軍事と外交による安全保障の確保、②国内の社会インフラの防護や半導体のグローバルなサプライチェーンといった経済安全保障、③インターネットやAIの技術的な特徴と政策的取り組み、④政治経済体制とイデオロギーのさまざまな在り方、の4点から検討するものとします。
(1)本講義のテーマ全般を俯瞰する分析枠組みは以下の通りです。1990年代初頭に登場したインターネットによって、グローバルな情報革命が始まりました。本講義では、情報社会学の観点から情報化を世界システムのグローバルな近代化のなかに位置付け、現在の状況を、①国民国家、②世界市場、③インターネットからなる社会の3層構造と、その相互作用によって構成されている、と考えます。この観点から本講義が対象とする社会状況はつぎの通りです。
(2)国民国家と国際社会のレイヤーでは、近年のパワー・バランスの変化から、いわゆる米・中冷戦が、またこれとあわせてNATOの東方拡大に対するロシアの対応から、国際社会に新たなブロック化が生じています。国際社会のブロック間の対立とは、軍事的な衝突だけでなく、経済的な競争からイデオロギー対立やハイブリッド戦争までを含むものです。具体的には相互の経済的なブロック化と集団的自衛=同盟が一体となった競合状態が生じています。
(3)ここでわれわれが想起すべきなのは、米・ソの冷戦期に日本で「総合安全保障」という広義の戦略思想が構築されたことです。この戦略思想は、大平首相のリーダーシップによって作成されたもので、猪木正道、久保卓也、高坂正堯という当代一流の戦略家が関与していました。2022年に(同じ宏池会の)岸田内閣が策定した「経済安全保障推進法」と1980年の「総合安全保障研究グループ報告書」を対比し、この間の出来事、つまり米・ソの冷戦の終結、国連の平和維持活動、9.11、3.11、台湾海峡危機といった事象をフォローすることよって、日本の総合安全保障を具体的な政策およびその変化として理解するものとします。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
5122222
GPP-MP6P20L1
情報社会と総合安全保障
鈴木 寛
S1 S2
火曜1限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
公共政策学教育部
授業計画
Ⅰ. 情報社会の政治経済学的検討と情報化の技術的背景 第1回 情報社会と総合安全保障に関する基本的な枠組みの説明 第2回 コンピュータ・ネットワークとグローバリゼーション/情報社会と近代化 Ⅱ. 日本の安全保障政策の歴史的展開 第3回 日本の安全保障・防衛戦略を考える枠組みとその展開過程 第4回 新たな国家安全保障戦略を含む戦略三文書の意義と今後の課題 第5回 組織論とイノベーションの観点から見た総合安全保障 第6回 インフォデミックと公衆衛生およびO2Oプラットフォームの諸課題 第7回 サイバーセキュリティ/政策的な課題と対応 第8回 軍備管理軍縮と不拡散/歴史的諸課題と現状 Ⅲ. 情報社会と安全保障 第9回 情報社会と安全保障政策の展開(1):ソーシャルメディアと国際世論 第10回 情報社会と安全保障政策の展開(2):総力安全保障と分野横断型統合 第11回 監視資本主義と政府の役割/「新しい資本主義」の再検討 第12回 リベラリズムと熟議/日本の近代化と社会思想 第13回 社会的なリスク管理と日本の政治決定過程および組織構成
授業の方法
(1)この講義は、(ⅰ)鈴木寛公共政策大学院教授(主担当:元文部科学副大臣・前文部科学大臣補佐官)、(ⅱ)高見澤將林(分担教員:公共政策大学院客員教授/元官房副長官補(事態対処・危機管理担当))、(ⅲ)山内康英(分担教員:公共政策大学院客員教授/多摩大学情報社会学研究所教授、所長代理)が担当します。本講義は時間の関係から教員による講義を主体とします。政治と行政の実務経験者および研究者の視点を通して日本の安全保障の現状と課題を学んで下さい。 (2)本講義の受講生は、各回の講義のテーマから関心のある課題を選び、PBL(Project Based Learning)による調査研究を行うものとします。PBLでは、各自の修論や研究室のテーマを勘案しながら、文献やオンライン資料を利用して調査研究し、期末にレポートを作成するものとします。課題の取り組み方や文献については、講義の時間中に、またITC‐LMSの掲示板を使って受講生ごとに講師が説明、指導します。本講義の各回のトピックスは講義計画の通りですが、受講者の皆さんの希望や講師の都合を勘案して組み替えるものとします。授業中の質疑にオンラインの検索を使って貰いますので、ネットに繋がるノートパソコンを教室に持ってきて下さい。
成績評価方法
成績は、①授業の貢献度と、②期末レポートによって総合的に評価します。単位の必要な方は、かならず期末レポートを提出すること。
教科書
①重松博之監修、野中郁次郎、鈴木寛、山内康英編著『ワイズガバメント―日本の政治過程と行財政システム』中央経済グループパブリッシング、2021年。 ②兼原信克、 佐々木豊成、曽我豪、髙見澤將林『官邸官僚が本音で語る権力の使い方』 新潮新書、2023年。 ③鈴木寛『「熟議」で日本の教育を変える―現役文部科学副大臣の学校改革私論』2010年、小学館。 ④千々和泰明『戦後日本の安全保障―日米同盟、憲法9条からNSCまで』中公新書、2022年。 ⑤公文俊平『情報社会のいま―あたらしい智民たちへ』NTT出版、2015年。 ⑥喬良他『超限戦―21世紀の「新しい戦争」』2020年、角川新書。 ⑥五百旗頭真『大災害の時代』2016年、毎日新聞出版 ⑦船橋洋一『フクシマ戦記(上下)』2021年 文藝春秋 ⑧村上泰亮『反古典の政治経済学要綱―来世紀のための覚書』中央公論社、1994年。 ⑨野中郁次郎、竹内弘高『ワイズカンパニー』東洋経済新報社、2018年。
参考書
①イマニュエル・ウォーラーステイン『入門:世界システム分析』山下範久訳、藤 原書店、2006年. ②佐藤誠三郎『「死の跳躍」を越えて―西洋の衝撃と日本』千倉書房、2009年。 ③ボブ・ジェソップ『資本主義国家の未来』中谷義和監訳、御茶ノ水書房、2005年. ④デヴィッド・ハーヴェイ『新自由主義:その歴史的展開と現在』渡辺治監訳、作 品社、2007年. ⑤ジョン・ミアシャイマー『大国政治の悲劇: 米中は必ず衝突する!』奥山真司訳、五月書房、2007。 ⑥山本吉宣『国際レジームとガバナンス』有斐閣、2008年.
履修上の注意
①この講義では、ゼミ論や修論作成の役に立つように期末レポートの作成を指導します。成績の必要な方は必ず期末レポートを提出してください。 ②毎回の講義の資料は、全学授業支援システムを使って毎回受講者に配布し、レポートの作成を指導します。成績は、①授業の貢献度、②期末レポートによって総合的に評価します。
その他
(1)この授業の目標は、日本の情報社会と総合安全保障を主題として、(ⅰ)組織論や行政機構論を含む政治決定過程、国際政治としての戦略論といった社会科学のさまざまな分析枠組みを理解し、(ⅱ)具体的な政策に結び付けて解釈する方法を身に付けることです。また(ⅲ)PBLを通して研究文献やオンライン資料を使った調査研究の手法を学びます。講義で取り上げる具体例を参考にして、論文作成や調査研究に応用するよう学生の皆さんに求めます。 (2)受講生の皆さんは、シンボリック・アナリストつまり抽象的な概念を使って組織活動やビジネス・スキームを構築する良き経営者や行政官となり、公的職業や付加価値の高い職務をこなさなければなりません。そのためには現在の国際関係や日本社会の動向と、その歴史的推移を把握することが先決です。具体的には、(ⅰ)日本の安全保障をめぐる政策過程および情報化の諸課題について包括的に理解するとともに、(ⅱ)情報産業や社会のリスク管理について基礎的な専門用語つまり語彙や概念を理解し、これを使って議論を組み立てる能力と、(ⅲ)社会と実践共同体が求める正しい振舞い、つまり公徳(public virtue)に立ちかえって考える習慣を身につけることが大切です。 (3)身近な関心のあるテーマを選び、期末レポートでは、自主的に調査と研究を進めて下さい。本学院は専門職大学院ですから、皆さんのこれまでの、あるいは今後のキャリアからテーマを選んで今後の職責に活かすのが良いでしょう。 (4)講義では毎回個別のトピックスを1つ選んで、(ⅰ)これに関連した社会科学の緒理論と、(ⅱ)具体的な検討事例を解説します。成績は、①授業の貢献度と、②期末レポートによって総合的に評価します。単位の必要な方は、かならず期末レポートを提出すること。 (5)この授業を主催する鈴木教授は、霞ヶ関と永田町の実務経験を持つ公共政策の専門家です。また高見澤大使は、防衛省の実務経験の長い安全保障の専門家です。山内は、インターネットのシステム開発と運営、JICAのコンサルタントとしてアジア諸国のインフラ建設に参加した実務経験があります。また東京大学大学院総合文化研究科の博士号(国際関係論)を持ち、本学院の客員教授と他大学の教授職を兼務しています。