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最終更新日:2025年10月17日

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先進国の比較政治

 この講義は,比較政治学がデモクラシーについて何を問い,いかなる知見を獲得してきたのかについての概観を受講者が獲得することを目的として,先進諸国のデモクラシーを対象とする比較研究の蓄積を俯瞰的に紹介する.本講義のパースペクティブは歴史的なものであり.新たな因果関係の説明を提示するより,事態の理解と概念化に重点はおかれる.ただし講義のなかでは近時の比較政治研究の成果も積極的に紹介するため,より先端的な研究を学ぶための踏み台として本講義を活用することが可能である.
 具体的には第二次世界大戦後(1950-80年代)の西欧において安定をみた政党デモクラシーを,デモクラシーという理念の「一つの」歴史的実装形態と位置づけ,その社会的前提条件,現実の運営,規範的位置を検討する.その上で,その後(1990年代-)の変容を検討しながら,この歴史的実装形態が直面している困難がどこにあるのかを確認する.
 戦後西欧はローカルな特殊事例に過ぎない.しかし,特殊戦後西欧的な歴史的実装形態は,比較政治学のさまざまな分析的・規範的モデルの中に浸透しており,その帰趨は政党とデモクラシーをめぐる議論全体に影響しうる.また,事例自体は特殊であるものの,本講義は比較政治学の「理論」「分析枠組」において,論理的・普遍的に説明可能な部分と歴史的・社会的条件に依存している部分を腑分しつつ議論を紹介することを重視しており,理論やモデルの適用範囲や文脈依存性を考える知的訓練としても機能することを期待している.これらの点で,他の地域・時期に関心を持つ受講者にも一定の有益な知見をもたらしうるものと考えている.
 加えて,「デモクラシーとはいかなる制度枠組として運用可能か」という問いとの接続を意識して比較政治研究の現在地を紹介することから,理論的・規範的な議論に関心がある受講者にとっても,規範的議論の経験的基礎を理解する一助となるはずである.
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
5122215
GPP-MP6P20L1
先進国の比較政治
網谷 龍介
A1 A2
木曜4限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
不可
開講所属
公共政策学教育部
授業計画
おおむね以下のような項目立てで進める予定である. 1.イントロダクション 2.戦後ヨーロッパ型デモクラシーの歴史的文脈 3.組織政党デモクラシーの社会的基礎 4.組織政党デモクラシーの理論構造 5.組織政党デモクラシーの組織基盤 6.政党デモクラシーにおける対立構造の変容 7.政党デモクラシーの社会的基盤の変容 8.ポスト組織政党のデモクラシーの現在地 9.「リベラル・デモクラシー」? 10.司法部の政治的機能条件 11.開かれた国家と正統性 12.政党デモクラシー・ポピュリズム・テクノクラシー 13.まとめ
授業の方法
講義
成績評価方法
学期末レポート80%+平常点(各回の小課題)20%.詳細は授業初回に説明する.
教科書
特定の教科書は使用しない.
参考書
 講義の背景となるヨーロッパ政治像を概観するための参考書としては網谷龍介,伊藤武,成廣孝編『ヨーロッパのデモクラシー 第2版』(ナカニシヤ出版,2014年)および中山洋平,水島治郎『ヨーロッパ政治史〔改訂版〕』(放送大学教育振興会,2024年)を参照.講義の章立てと対応しているわけではないが,伊藤武,網谷龍介編『ヨーロッパ・デモクラシーの論点』(ナカニシヤ出版,2021年)が密接に関連した内容を含む.また,比較政治学のさまざまなトピックへの入り口として,日本比較政治学会編『比較政治学事典』(丸善出版,2025年)に図書館であたることを推奨する.  この講義は,「『戦後デモクラシー』期を現在とは区別される一つの時期として捉えることが必要である」という(必ずしも一般的ではない)観点に立っているが,その含意について予め検討しておきたい方は担当者の以下の論文を参照されたい(いずれも担当者の個人ウェブサイトから閲覧可能である). 「戦後ヨーロッパにはリベラル・デモクラシーが成立し,発展したのか?――現実に存在したデモクラシーの正統性原理とその変容をめぐる序論的考察――」『国際関係学研究』,第45号,2018年,1-16頁.「『ポスト・デモクラシー』論と『戦後デモクラシー』の間」『生活経済政策』,204号,2014年1月,31-36頁.
履修上の注意
 講義形式で実施するため,受講者とのディスカッションを実施することはできないが,それを代替するものとして授業時間の1/4程度は受講者のコメントや質問に対するリプライに充てる.担当者が十全なリプライを提示できないことは多々あるが,「何を知っていて,そこからどのような推測を行い,そしてどこがわからないか」という「政治学者の頭の中」を率直に提示することで,受講者の皆さんがそこから担当者をこえていく手掛かりを提供したい.  この手法に対しては,担当者のリプライにもまして「他の受講者のコメントや質問が参考になった」というレスポンスを複数の大学の学生から得ている.その意味で,受講者一人一人からのインプットがこの授業の質的向上をもたらす重要な要因であるため,素朴なものから挑戦的なものまで多様なインプットを期待している.