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最終更新日:2024年10月1日
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ヨーロッパ法
ヨーロッパ法
東西冷戦の終結とともに,ヨーロッパ連合(EU)は,安全保障をも視野にいれた広い権限を持つ地域的国際組織として,今や国際経済のみならず国際政治においても大きな意義を持つ存在となった.
また,ヨーロッパ統合の進展とともに,EU法の重要性は増加の一途をたどっており,特に,EU法の基礎的知識は,EU加盟国の国内法理解に際しても今や不可欠となっている.ヨーロッパ法が,いかにして国内法においても重要性を獲得するようになってきたのかは,国際レベルにおける法の支配の確立事例としても極めて興味深い問題である.
近年のユーロ危機,移民危機,ポーランド・ハンガリーの権威主義体制化問題,イギリスのEU脱退(Brexit)後の通商関係,新型コロナ危機,ロシアのウクライナ侵攻への対応問題等,岐路に立つ欧州統合に関する話題には事欠かない.これらの「複合危機」を背景として,EUに関する報道は少なくないが,残念ながら,日本のマスコミ関係者でも,現実のEUにおける制度設計,法形成がどのようになされ,またどのように運用されているかにつき,正確な理解を持つ者は多くない.一方で,Brexitキャンペーンの際に,「ブリュッセル」が諸悪の根源であって, EUから脱退しさえすれば,全ての問題が解決するという,単純明快なポピュリストの主張が,しばしば報道されたことは記憶に新しい.ところが,Brexit以後,「行き過ぎた欧州統合」を非難するだけで,「グローバル化」による相互依存関係が進んだ現在の世界における全ての問題が解消するどころか,イギリス国内政治の混迷ぶりが白日の下に曝されることになった.
EUが常に「非民主的」だと非難され,「ブリュッセル」だけが諸悪の根源だとする非難は本当に正しいのか,正しいとした場合,誰もが「民主的」だと認めるような制度は,どのようにすれば形成できるのか.それほどまでに「非民主的」な組織であるにも拘らず,なぜ加盟国は,イギリスの後を追って次々に脱退し,あるいはEUを直ちに廃止しようとしないのか,といった疑問が次々に浮ぶであろう.
一言で言えば,EUの制度・運用の研究は,グローバル化の進展過程において,古典的な主権国家の枠を超える「民主的」な国際組織をどのように設計すべきかという大きな問題として,重要な意義を持つのである.
以上のように,EC/EU法は,従来の古典的国際法とどのように異なるのか,加盟国の国内法との間にどのような影響関係があるのか,「民主的」な国際組織の設計はどのようなものであるべきかといった問題は,学問的にも重要な理論的問題を提起している.
本講では,上述のような近時の問題状況をも念頭に置きつつ,現行法たるリスボン条約を中心に講義を行う予定である.EU法の対象分野は,共同体管轄事項が拡張されてきた結果,今や多岐にわたっているが,EU組織法の理解は,個別のEU実体法理解のため不可欠の前提となる.本講では,EU法の総論部分にあたる組織法,具体的には,EUの機構,法源,争訟制度等について順次講じる予定である.
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