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最終更新日:2026年10月16日

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現代国際社会論

開発協力のジレンマ
「SDGsの問題点は何か」。この授業が終わったら、この問いに答えられるようになっていてほしいと思います。国際開発、国際協力は、その響きの美しさとは裏腹に、それが見えにくくする側面があります。この授業では、知らず知らず見えにくくなっている側面を取り上げ、それを自分なりに考えるために、いくつかの「ジレンマ」を取り上げていきます。
 国際開発に関する授業は、通常は、貧困や気候変動といった課題を解説し、それに対する援助などの取り組みの制度や効果を論じるものが多いと思います。この授業では、一つのセクター、一つの専門的視点にこだわらず、国際開発協力から、「あちらが立てば、こちらが立たず」という悩ましい現象を取り上げて、自分で答えを探す訓練をします。またこの授業では、現在の途上国の事例だけでなく、かつて途上国であった日本の被援助経験、開発経験に伴うジレンマについても扱います。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
50868
CAS-GC1B13L1
現代国際社会論
佐藤 仁
A1 A2
木曜5限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
不可
開講所属
教養学部(前期課程)
授業計画
1.なぜ「開発協力のジレンマ」なのか(10/8) オンライン 「発展した国・地域」と「遅れている国・地域」の大きな違いの一つは、前者の国では考えなくて済むことが、後者の国では考えなくてはならない、ということがある。たとえば、前者の国に暮らす現在の私たちは、食べ物の入手に関してほとんど考える必要がない。それは「1年を通じて、どうやって食べ物を確保するか」を考えなくてはならない人々との大きな違いである。技術の発達と分業の進展によって、「考えなくてよい」領域を増やすのが「発展」であるとすれば、そうした傾向の中で、「自分で考える」領域を確保することは案外難しい。AIの発達は、自分で考える必要性さえ、自覚させなくするかもしれない。初回では、「想定外」の出来事が増える世界において自分で考える幅を確保するために、ジレンマを取り上げる意義を解説し、授業全体の方針を示す。 参考文献:『野蛮から生存の開発論』(以下、『野蛮』)の序章 2.自分で考えた開発ワーカー:中村哲の足跡 (10/15) 1980年代にアフガニスタンに医師としてわたり、後に灌漑事業を展開して、砂漠を緑豊かな土地へと変えた中村哲(1946-2019)の足跡を振り返りながら、開発を自分で考え、行動することの意味を考える。中村の30年に及ぶ開発活動には様々なジレンマがあった。この授業の予告編として、中村の活動と思索を振り返る。 参考映像:『荒野に希望の灯をともす』 参考資料:『中村哲―思索と行動』(ペシャワール会) 3.伝統と革新 (10/22) 開発は伝統の破壊や置き換えを伴うことが多い。伝統には伝統の合理性がある。伝統と変化の対立は、開発協力における最も典型的なジレンマである。 課題文献:井上靖「聖者」 参考文献:『野蛮』第5章 4.自立と依存 (10/29) 開発協力の究極の目的は、相手(国)の自立であるとされてきた。しかし、開発は別の依存を呼び込むことが多い。依存は避けるべきものなのか。自立と依存の微妙な関係を考える。 参考文献:『開発協力のつくられ方』第4章、第5章 5.援助と暴力( 11/12) *11/5 は教員の海外出張のための休講 アジアで絶大な暴力を振るった独裁政権を振り返ると、そのほとんどは「民主的な国々」からの援助を受けていた。援助が暴力を助長してしまうとすれば、それはいかなるメカニズムによるものか。 参考文献:『争わない社会』第6章 6.統一性と多様性 (11/19) 開発は規模が大きいほど、統一と規格化を好む。税制を効率化するための度量衡の統一はその例である。インフォーマルな制度は、制度の公式化・統一化によって駆逐されやすいが、他方で、社会的弱者にとって有益であることも多い。開発において統一性と多様性を両立させる方法はあるのだろうか。 参考文献:『争わない社会』第1章、第7章 7.開発と環境保護 (12/3) 開発は資源の搾取と環境の破壊を伴うことが多い。厄介なのは、「環境保護」もまた人々を苦しめることがあるということだ。この回では、開発と環境保護の一般的なジレンマだけでなく、環境保護が反転して人々の生きる選択肢を奪う可能性についても触れる。 参考文献:『反転する環境国家』序章、第2章 8.分業と経済発展 (12/10) 経済学の父といわれるアダム・スミスは、分業こそが富を生み出すメカニズムであると考えた。しかし、経済活動には分業しやすい仕事、そうでない仕事がある。また、分業が格差を生み出す可能性もある。分業が進みすぎて「発展」の全体像が見えにくくなるだけでなく、社会全体が支配されやすいバラバラの存在に変化することもありうる。分業のジレンマにどのように向き合うべきかを考える。 課題文献:『争わない社会』第二章「社会分業」 9.貧困と不平等 (12/17) 開発の最も重要な目的は、貧困を減らすことにあるとされる。では「貧困」とはいかに定義できるか。貧困を減らすために経済成長が必要であるとすれば、そして経済成長が格差や不平等を増大するものであるとすれば、貧困削減と不平等はジレンマの関係におかれることになる。 参考文献:『争わない社会』第3章、『野蛮』第1章 10. 国家と民衆 (12/24) 開発協力の焦点を国家ではなく「人間」におくというのは、1990年代以降のトレンドである。だが、国連のシステム、ODAのシステムはいずれも国家を基本単位として構成されている。国家と民衆が対立するとき、開発協力はどのようなジレンマに対峙することになるのか。そして、それを克服する希望はどこに見出すことができるだろうか。 参考文献:『争わない社会』第8章、『開発協力のつくられ方』第7章 11.意図と結果 (1/7) 開発協力は、狙いどおりの結果をもたらすとは限らない。むしろ、開発協力の意図と結果はズレることの方が多い。意図と計画を入念に作り込むほど、不確実な未来への対応が硬直的になってしまうのであれば、これはジレンマの一つである。この回では、意図と結果がズレる代表的なパターンを解説し、このジレンマへの対応方法を検討する。 課題文献:ハーシュマン『開発プロジェクトとは何か』より第1章「目隠しの手の原理」 参考文献:『野蛮』第5章 12. まとめ(1/14) 授業の総括を行う。 授業終了後の15分は質問時間とする。
授業の方法
各回のテーマに関する講義に加えて、課題文献や映像に基づく小グループディスカッションや教員と学生との質疑で授業を構成する。
成績評価方法
講義と参考文献に基づく試験を成績全体の8割、出席とコメントシート、質問などによる議論喚起を合わせて2割の比重で成績評価を行う。 成績は8割を最終試験でつけ、残りの2割を出席と授業中の参加点として加算する。なお、人数が少ない場合は、試験を行わず、レポートに変える。授業中の参加は、教室での質問やコメント(オンライン含む)、毎授業ごとに任意で提出を求めるリフレクションペーパーの質と量で評価する。また出席(成績の5%)は、ITC-LMSの出席管理機能を使うこととし、3回以上欠席した人に「優」以上はつかない。
履修上の注意
学生のみなさんには、答えがない問題を考え続けるスタミナを要求する。 なお、初回はオンライン授業でzoom リンクは下記の通りである。 https://u-tokyo-ac-jp.zoom.us/*****