我々の体を構成する多くの分子は有機化合物であり、生命の営みはこれら有機化合物の化学反応により維持されている。また、有機化合物は材料分野においても重要な化合物群である。身近なものでは繊維などの高分子や液晶、現在では電子材料にも有機化合物が使われようとしている。有機化合物は炭素骨格からなり他の原子が骨格に含まれた分子であるが、これまでに多様な有機化学反応が明らかになっている。これらの多様な反応を理解し、使いこなすためには、出発物質と生成物の関係を知識として覚えることも重要だが、なぜそのような反応が合理的に起こり得るのかを本質的に理解することが重要である。これらの理解により、一見全く異なる生成物を与える反応を同じグループとして理解することが可能となるし、ある分子に対して考えうる色々な反応の中から有望な反応を論理的に推測することや、生成しうる立体異性体の中からどの異性体が優先的に生成しうるかの予測または実験結果を説明することも可能となる。高校の有機化学では、反応機構を理解するために必要な準備が整っていないため、反応をパターンとして学ぶしかなく、暗記ものと誤解されているかもしれないが、実際の有機化学は反応機構の理解に基づく、極めて論理的な学問である。本授業では、各有機反応をタイプ毎にまとめ、それぞれの反応機構を電子の流れ、軌道の相互作用、中間体の安定性などに基づいて考える道筋を大切にする。さらに、反応を考える上で、速度論支配と熱力学支配の考え方など、有機化学に関わらず重要な考え方も身につける。
第1回:ガイダンス
第2回:カチオン種が関わる反応
第3回:カルボカチオンが関わる反応I
第4回:カルボカチオンが関わる反応II, 置換反応
第5回:カルボニルが関わる反応I
第6回:カルボニルが関わる反応II
第 7回:酸化反応
第8回:置換反応、オレフィン合成
第9回:協奏的反応I
第10回:協奏的反応II、カルベンが関わる反応
第11回:ラジカル反応
第12回:転位反応I
第13回:転位反応II