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最終更新日:2026年10月16日

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原子力災害論Ⅴ

リサーチプロジェクトマネジメント(RPM)演習:フィールド研究の企画から論文作成・学会報告・現地フィードバックまで
・フィールド研究を実践する能力と経験を磨く
・「普通はなかなか行かない現場に、東大生として行けました。楽しかったし色々勉強になりました」という旅行型フィールドワークで終わらせない
・具体的には、「予算管理」「チームビルディング」「ロジ・サブの洗練」「調査対象たる現場とのラポール形成・信頼関係維持」「トラブルシューティング」「プレス対応」といったキーワードにまつわる、フィールド研究に必要なあらゆる作業を自ら行いトライ・アンド・エラーの中で成長する機会を用意する
・フィールドに身を浸す経験を通して、PDCAサイクルに最初から最後まで関わることで、自らリサーチプロジェクトの全体管理をできるようになる
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
4990650
原子力災害論Ⅴ
開沼 博
S1 S2 A1 A2
集中5限
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講義使用言語
日本語
単位
1
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
可
開講所属
学際情報学府
授業計画
フィールド研究(事前勉強、現地調査からそのとりまとめ・公表まで)のプロセスを実際に経験します。 受講者は既存のフィールドワークの「参加者」としてではなく、学会発表等を前提としたリサーチプロジェクトの「運営者」として関わる中でしか得られない経験をします。その中で、いずれ自らリサーチプロジェクトを立ち上げ、自分の手で動かせる力を身につけることができます。 ▼いつ? 集中講義であり、基本的に以下の全日程に参加できる人を対象とします。 キックオフMTG:7/24金、FW①7/31金-1土、FW②8/24月-26水、報告会9/24金-25土+26日 (キックオフMTGのみ本郷キャンパス、他は福島県双葉郡で実施) ・もっとも時間をとられるのは実際の現地調査=7月末-9月末の夏休み期間中に合計10日ほど(3回ほどにわけます) ・準備として事前=4月-7月に、何度かの対面とオンラインでの打ち合わせ ・学会発表等のために事後=10月ー3月に、意欲に応じてオンラインベースでの打ち合わせ 以上について、参加者の普段の授業や就活・バイト、部活・サークル、海外渡航等は考慮します。 ▼どこで? 担当教員が専門とする福島学の調査として実施しますので、基本は福島がフィールドになる予定ですが、2024年度は北海道にも調査に行きましたし、今後も別の地域になる可能性があります。詳細はガイダンスでお知らせします。 これまでの調査については以下の2つの記事をご参照ください。 ・レポート:東京大学×伝承館・体験活動プログラム共同研究フォーラム2022 「帰還困難区域の『街づくり』を考える。」 https://www.iii.u-tokyo.ac.jp/***** ・レポート:北海道ホタテ産業調査 https://www.iii.u-tokyo.ac.jp/***** ▼だれがどのように? 担当教員が全体を統括します。 担当教員の研究室=情報学環開沼博研究室(正規所属ではない学生等含む)および担当教員が上級研究員をつとめる東日本大震災・原子力災害伝承館にある、学生主体のフィールド研究チームや研究に必要なリソースを活用して進めます。 ▼どのくらいのレベル感? ・フィールドワーク的なことに関心がある人であれば、誰でも、経験がなくても全く問題ありません ・昨年度は学部2年生、一昨年度は学部1年生も現地調査に参加していました。博士課程や社会人院生も参加しますので、年齢・属性の幅は広いですが、皆が対象について詳しいわけではありません ・一方で、大学や中学・高校で経験したフィールドワークプログラム、PBL、アクティブ・ラーニング等々に飽き足らない、もっと手応えがあること、ガチ感・プロ感ある調査をしたいという人が成長するきっかけを掴みたいという場合には、強く推奨できます ▼こんな人にオススメ ・将来、人や地域を対象にしたフィールド研究ができる研究者やジャーナリスト、公務員、NPO運営者になりたい(→開始数年で、学部生が学会賞をとった研究発表や国家公務員等を輩出してきた実績があります) ・研究プロジェクトってどう裏側で動いているのか知り見識を広げて成長したい(→学部・研究科によっては日常的に研究プロジェクトがまわっていて学生がそこに関わる場合もありますが、そうじゃない場合も多いでしょう。そのような場合、この授業に参加することで研究プロジェクトとはなんぞや、いかに動かしているのかという運営のコアの部分を実体験できます) ・論理的思考、プレゼンテーション能力、プロジェクトマネジメント、広報・PR実務、交渉能力等研究職以外についた際にも役立つ力を身に着けいた(→現地調査やその後の様々なやりとり、そして論文作成・学会発表をする中で、必然的にこれらの能力は磨かれます。当初はアポ取りやインタビューの経験が皆無だった学生がこのプログラムに参加して、いまでは数十件の飲食店と信頼関係をつくって継続的に調査をするようになったり、学部2年生が2名学会発表まで至ったりしました)
授業の方法
▼担当教員が提供できるもの 担当教員は、日常的に福島でフィールド研究をしています。福島第一原発構内だけでも100回以上入っています。 一方、(福島という研究対象とはまったく関係のない)様々な特徴をもったコミュニティが存在する現場、とりわけ、社会のタブー、多くの人が目を背けたり語ること自体をためらったりする対象にもまた日常的に調査をし、アウトプットをしてきました。例えばそれは犯罪者や性産業や新宗教といった対象です。それらをたんに調査して終わらせる(それすなわち「ただの旅行」だと外からは見られてもおかしくない)のみならず、活字にして世に問う作業を続けてきました。 基本的に、「学者」はこういう対象に触れません。触れている風でも皮相的な場合がほとんどです。触れるだけで蔑視や排除の対象となる、あるいはそれを恐れる故です。ただ、問題の本質は、「人にどうこう言われる、やられる」ということではなく、現場に入り込み、関係性をつくり、それを維持しつつ公表する能力の問題だと考えています。つまり、研究として完結させる能力に自信がない人が多い現実があり、それ故、タブーをタブーとして固定化しています。別にそれが悪いことではありませんが、その能力を身に着けられれば、それが自らの学術的オリジナリティになります。この授業では、その能力をつけるためのヒントを提供できると考えています。 担当教員の研究の前提を知って頂く上では、まず一冊だけ『漂白される社会』https://amzn.asia/***** という仕事がありますので、こちらを読んできてきただけると、この授業でいうフィールド研究とは何で、いかなる困難や可能性があるのか、この授業に参加する意義も理解しやすくなると思います。 もう一点、 宮本常一・安渓遊地『調査されるという迷惑』https://amzn.asia/***** という名著があります。誰かや何らかの集団を調査するという行為は、その根本に「迷惑」を必然的に抱えます。もっと強い、しかしより適切な概念を使うならば、そこには加害性・搾取性が常に生まれえます。 これは、「マスゴミ」「オールドメディア」と揶揄されるマスメディアを否定・嫌悪する種々の議論にも通底する話です。つまり、「取材」「報道」がもつ加害性・搾取性がいま問われ直しています。 教育もまた無縁ではありません。 私は全国各地の中高の「探究学習」に関わっています。「学校の外に出ていろんな現場に行こう、そこで主体的・対話的で深い学びをしよう、PBLやアクティブ・ラーニングは素晴らしい」と、それが絶対的善行であるかのように捉えられています。少なくとも現在の学生は、学校によってバラツキがあるものの、そういう前提の教育改革の中で中等教育を受けて大学生になってきています。 ただ、その絶対的善行っぽい何かに加害性・搾取性がない、発生する可能性がゼロだと言い切れるのか。 例えば、東京大学の教員・学生が地方にいくと、地元紙・地元テレビが「東大生が来た、東大の先生が来た」とニュースでとりあげ、地元の首長が出てきて「よく来てくれました」と歓迎する。自治体職員に運転していただいている車で色々なところを案内され、宿・食事の手配までしてくれる。成果報告会にあつまってくださった住民から「短い時間でよくここまで考えた」などと褒められる。学生は映えるその地域の明所・食べ物の写真をInstagramに投稿する。全員とてもハッピーに見えます。 ただ、その時に、得している人、楽しい思いをしている人、優越感を感じている人がいる裏側で、損している人、嫌な思いしている人、嫉妬している人がいるかもしれないと想像ができているか。そんな人はいない、と言い切れますか? 言い切れる人がいるんだとすれば、そのフィールドのリアリティを何も見えていないが故ではと言わざるを得ません。 ただ、同時に私は上述のとおり、中高でも探究学習に関わり、また大学の研究・教育でも様々なフィールドやコミュニティの調査を続けています。つまり、その加害性・搾取性に加担しているかもしれないことも自覚しています。それでもなおフィールド研究をする意義や方法を常に試行錯誤しているさなかにいます。 上に「『普通はなかなか行かない現場に、東大生として行けました。楽しかったし色々勉強になりました』という旅行型フィールドワーク」と記述しましたが、これを否定したり揶揄したりするつもりはなく、こもまた、重要な教育・研究の機会だと思っています。そして、そこにはもっと深く考えるべきテーマも隠れているとも思っています。 何を言いたいか。フィールド研究を考え・実践するということ自体が、上記の研究や教育(「探究・PBL・フィールドが大事!」「対話・主体!」)、あるいはジャーナリズム(「取材・報道は正義!」)などに象徴されるような社会を支えてきた権威性・特権性とそれが相対化されつつある現場に向き合う機会となる、とてもタイムリーなテーマだということです。政治・経済・文化等々様々な領域にたいして学際的に考える機会にもなります。 フィールド研究に求められる、バランスと大胆さと、その両者を意識しながらこの授業は進められます。
成績評価方法
出席と論文執筆・学会発表をもって評価します
履修上の注意
初回授業日やガイダンスは履修登録者(最終登録を迷っている人も含む)向けにUTOL等で連絡する