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最終更新日:2024年4月22日

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環境倫理学

ポスト人新世の環境倫理
 持続可能な社会を実現するために、わたしたちが必要としているのは、個人あるいは集団の生き残りをかけて、科学的知識とデータをもとに、資源をうまく循環し管理する社会を設計することだ。こうした持続可能性に関する考えは、たとえばSDGsを眺めてみても、広く共有されているように思える。気候変動と気候正義をめぐる議論は、こうした「生き残り」にいよいよ切迫性をもたらし、何かに駆り立てられつつも、具体的な手立てが日常にないもどかしさも日々加速していく。

 他方で、持続可能な社会とは具体的にはどのような社会なのか、その中でのわたしたちの生活はどのようなものになるのか考えてみると、意外にうまく思い描くことはできないのではないだろうか。わたしたちの社会は、これまで基盤としてきたゆるぎない「自然」によりかかることはもはやできない。わたしたちは、人間活動がもたらした未知の惑星システムに生きている。かつてなく不確実性を増した惑星システムのなかで、いかに資源利用と保全の確実性を生み出すか。野生や里山など概念化された「自然」はそのための柱となりうるのだろうか。持続可能な社会の実現のため、生命工学によって生み出される「自然」や「生命」と、どのような関わりをつくっていくことができるだろうか。

 また、「生き残りをかける」といったときに、わたしたちの間で、そして未来世代との間で、公正さはどのように実現されるのだろうか。公正であるとはどのようなことを意味するのだろう。また、持続可能な社会において、わたしたちはどのような、そしてどのように「よりよく生きること」を追求できるのだろうか。そもそも、わたしたちの存在の豊かさとは何を意味するのだろう。こうした問いにうまく向き合えず、答えが探せないまま、持続可能な社会という言葉がわたしたちの先を歩いているようだ。

 本講義では、こうした問いに取り組んできた二つの近接する分野、環境社会学と環境倫理学の議論を参照しながら、科学技術が生み出す新しい生命や自然と向き合うための、それらを想像し生み出すための倫理的指針や実践について探求する。喫緊の課題だからこそ、立ち止まって考えることも必要になる。講義ではそれぞれが思考をめぐらせ、言葉をやり取りすることを通じて、まずは各々が立ち止まることから始めてみたい。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
47180-32
GFS-SC6A02L1
環境倫理学
福永 真弓
S1 S2
木曜2限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
新領域創成科学研究科
授業計画
1イントロ:「ポスト人新世」とは 2 人新世:ディストピアとユートピアの狭間 3 自然を想像する:野生、風土、複数の自然 4 「自然」以後に自然をつくる:人と動物、新しい生命 5 自然をいなす:災害のあいだ 6 自然を食べる:縁を結ぶ 7 存在のサバイバル:気候正義 8 存在の不在:公害と被害論 9 存在の不可視化:環境正義 10 存在の承認:変わりゆく地球で先住民族として生きる 11 存在をつなぐ:地球Bと未来世代 12 存在を支える:ケアと労働 13 居場所をつくる:都市と限界集落 14 「わたしたち」の存在の豊かさ
授業の方法
応答形式の講義を中心とする。授業中に紹介する文献や資料を用いながら、グループディスカッションやワークショップ形式の授業回も設ける。
成績評価方法
コメントペーパーと授業中の議論への参加度(20%)、中間課題(20%)、最終レポート(60%)
教科書
授業中に参考文献を紹介する。
参考書
『未来の環境倫理学』(福永真弓・吉永明弘編、2019、勁草書房) 授業中に参考文献を指示、配布する。
履修上の注意
対面とオンラインで行う。ただし、状況によっては適宜オンラインに切り替えるほか、ハイフレックス型も試みる。