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最終更新日:2024年3月15日

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数理科学特別講義VI

複素多様体における可視的作用の分類理論と無重複表現 A classification theory of visible actions on complex manifolds and multiplicity-free representations
 リー群とは,群と多様体の両方の構造を兼ね備え連続性や微分が定義できる群である.リー群の表現論において,与えられた表現の既約分解(既約表現というそれ以上分解できない最小単位の表現に分解すること)を明示的に与えることは基本的かつ重要な問題であるが,一般の(特に無限次元の)表現の場合,連続スペクトルを含んだり重複度が無限になったり,既約分解が一意的でなかったりと様々な問題が起こる.一方で,「重複度が高々1以下」であるとき,既約分解は一意的となり既約分解を明示的に与えることが現実味を帯びる.このような表現を「無重複表現」とよぶ.
 これまで散在的に発見された無重複表現の多くはいわば副産物として発見され,表現の無重複性についてその表現に応じた手法を用いて与えられていたため,無重複性に対して統一的な説明は与えられていなかった.そこで小林俊行氏はこの問題の重要性を提起し,表現の無重複性がファイバー上の表現から伝播するという理論を創始した(無重複性の伝播定理).この定理においては,底空間における群作用の幾何が本質的であるが,小林氏はこれを精緻に考察し「複素多様体における可視的作用」の概念を提唱し,その結果多くの無重複表現の無重複性に統一的な説明を与えることに成功した.
 一方,可視的作用の概念において群作用による各軌道と交叉する部分多様体(これを「スライス」とよぶ)の抽出が重要で,これは線型代数学における正方行列の対角化を一般化した概念とみることができる.この視点により,最近の研究によって群や軌道に関する新しい分解定理を生み出している.
 本授業では,複素多様体における可視的作用について解説する.可視的作用の基本事項や初等的な例をはじめ,最近研究が発展している分類理論について一般論だけでなく具体例を多く取り入れながら授業を展開する予定である.
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
45901-60
GMA-MA6X03L1
数理科学特別講義VI
笹木 集夢
S1 S2
集中
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
数理科学研究科
授業計画
本授業では主に以下の内容について解説する予定である. なお,状況に応じて下記の計画を変更することもある. 1. 無重複表現と可視的作用 2. 複素多様体における可視的作用 3. 複素線型空間に対する可視的作用と応用. 4. 簡約型複素球等質空間に対する可視的作用とカルタン分解. 5. ハイゼンベルグ群の複素等質空間に対する可視的作用.
授業の方法
講義による.
成績評価方法
レポート(100%)により評価する.
教科書
リー群とその表現論については, ・小林俊行・大島利雄共著, リー群と表現論, 岩波書店, 2005年. を参照.
参考書
無重複表現と可視的作用については,小林俊行氏の論文 ・T. Kobayashi, Multiplicity-free representations and visible actions on complex manifolds, Publ. Res. Inst. Math. Sci. 41 (2005), no. 3, 497--549. ・T. Kobayashi, Propagation of multiplicity-freeness property for holomorphic vector bundles, Lie groups: structure, actions, and representations, 113--140, Progr. Math., 306, Birkhäuser/Springer, New York, 2013. を参照.また, ・「無重複表現と可視的作用」日本数学会「数学」74, 第3号 (2022), 225--252 で日本語による解説もある. その他の参考文献については授業で紹介する予定である.
履修上の注意
上記の教科書などでリー群およびその表現論について事前に学んでおくとよい.