Hilbert 不変式論史の内容は、
(1) George Boole による不変式の発見から Gordan まで
(2) Hilbert 不変式論: 1890年まで
(3) Hilbert 不変式論: 1890年以後
(4) Hilbert後から現在まで
である。
(1-2) は不変式論入門を兼ねる。不変式論は1930年代以後に、Weyl, Mumford などにより新しい展開を見たが、Hilbert不変式論史の講義なので、これは(4)で軽く触れる程度になる。その(4)では、Hilbert の不変式論から、どの様に現代代数学、特に可換環論などが生まれたかを見る。不変式論の論文の様に紹介される事が多い1890年の「Hilbert の神学論文」も、本当は題名 "Ueber die Theorie der algebraischen Formen" が示すように代数形式(斉次多項式)が作る(Kronecker流の)代数系の新理論とみなすべきものである。
第二の目標である「数学史の危うさ」とその回避方法については、(3)で1890年の論文について解説する際に、その一部として話すことになる。
また、講義の背景である林の「数学を中心とする社会の近代化の思想史研究」については、講義資料で「話題・コラム・息抜き」の様な形で触れるが、講義中には極く軽くしか触れない。その部分は成績評価には関係しない様にするので、興味が無い人は、講義資料のその部分を読む必要はない。