A2ターム
12月11日(水)2限 (10:25~12:10) 阿部郁朗 先生
講義室:農学部2号館1階 化学第二講義室
講義タイトル:「天然物生合成マシナリーの合理的再構築による次世代天然物創薬」
要旨:ポストゲノムの時代、多くの生物のゲノム情報が容易に入手可能で、ゲノムマイニングが化合物の探索に直結する時代になった。我々はこれまで、さまざまな天然物の生合成遺伝子を取得し、微生物を宿主として異種発現、その生合成系を再構築して有用物質の生産を行うとともに、多段階の変換反応からなる分子多様性創出機構を明らかにした。次のブレークスルーは、「この生合成マシナリーを如何に活用するか」という点であり、生合成システムにさらに改良を加えることで、天然物を凌ぐ新規有用物質の創出や、希少有用天然物の大量、安定供給などが可能になる。本講義では、最近の研究成果を紹介する。
12月13日(金)2限 (10:25~12:10) 宮永顕正 先生
講義室:農学部2号館1階 化学第二講義室
講義タイトル:「微生物が生産するポリケタイド化合物の生合成研究」
要旨:放線菌などの微生物が生産するポリケタイド化合物は多様な生物活性を有しており、その中には医薬品として利用されているものがいくつか存在する。この多様な生物活性はポリケタイド化合物の炭素骨格の構造多様性に起因する。我々はこれまでにポリケタイド化合物の複雑な構造が構築される仕組みを明らかにすべく、研究を行ってきた。本講義では、これまで我々がどのように研究を進めてきたかについて、最新の成果も交えて紹介する。
12月18日(水)2限 (10:25~12:10) 栗栖太 先生
講義室:農学部2号館1階 化学第二講義室
講義タイトル:「河川水・水道水中における微生物の増殖基質の探索」
要旨:水中の微生物増殖を制御するには、塩素消毒などの消毒技術が用いられている。しかし、有害な消毒副生成物の生成などの課題もある。実際の微生物増殖に利用されている基質が分かれば、より根本的な増殖制御が可能になるはずである。我々は水道水や河川水での大腸菌や日和見病原菌の増殖や、塩素消毒後の水道水における微生物増殖において、消費されている有機物の探索を試みている。本講義では、高分解能質量分析計を用いた有機物のノンターゲット分析と構造推定の分析技術とともに紹介する。
12月20日(金)2限 (10:25~12:10) 鈴木研志 先生
講義室:農学部2号館1階 化学第二講義室
講義タイトル:「数理・実験から紐解く微生物生態系」
要旨:環境中には多種多様な微生物が生息し、相互作用することで微生物生態系として何らかの機能を発揮している。近年では、それらの機能を利用して物質生産や環境浄化といった技術開発が行われており社会実装された例も多数ある。その一方で、微生物あるいはその集団を理論的に制御する術は未だなく、経験則に基づき運用されているのが実情である。その要因として、既知の微生物動態予測モデルと実現象に大きな乖離があること、そもそも微生物の生命現象を正確に捉えられていないことなどが挙げられる。本講義では、それらのギャップに言及し、その溝を埋めるための挑戦について紹介する。
12月25日(水)2限 (10:25~12:10) 鈴木邦律 先生
講義室:農学部2号館1階 化学第二講義室
講義タイトル:「出芽酵母細胞におけるリン脂質ダイナミクス」
要旨:出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeは高等動植物と同様の細胞小器官を有する単細胞真核生物である。出芽酵母においても、細胞核・小胞体・ミトコンドリア・液胞などの細胞小器官はリン脂質からなる脂質二重膜により区画化されている。これまではそれぞれの細胞小器官は独立して機能していると考えられてきたが、最近では、すべてのオルガネラがコンタクトサイトと呼ばれる部位で結合し、リン脂質やイオンの交換を行っていることが明らかとなってきた。本講義では特にリン脂質膜の新規合成を伴うオートファジーと呼ばれる現象に注目し、細胞内のリン脂質ダイナミクスについて講義を行う。
1月8日(水) 2限 (10:25~12:10) 晝間敬 先生
講義室:農学部2号館1階 化学第二講義室
講義タイトル:「植物に感染する共生菌と病原菌の差は紙一重?」
要旨:植物は多種多様な微生物と相互作用している。共生菌は特にストレス環境下において植物の成長や生存に貢献する一方で、病原菌は植物の成長を阻害して眼に見える病気を引き起こす。これまで共生菌と病原菌は対照的な結果を植物に与えることから大きく異なる存在だと考えられてきた。一方で、ここ最近の研究により、共生菌と病原菌の差はごくわずかな分子の挙動の違い等に規定された紙一重なものであることも明らかになってきた。本講義では、共生菌と病原菌について説明するとともに、両者の差を規定する分子機構について解説したい。
1月10日(金) 2限 (10:25~12:10) 水口千穂 先生
講義室:1号館地階5番講義室
講義タイトル:「環境微生物のプラスミド学:宿主とプラスミドの複雑な関係を探る」
要旨:プラスミドは宿主細菌に薬剤耐性や難分解性物質分解能などの新規形質を付与するが、宿主によってプラスミド由来の形質の発現に違いが生じたり、宿主の生育や代謝に予想外の影響が出ることがある。このような「プラスミドと宿主の相性」とも言える現象の背景には複雑なメカニズムが存在し、その全貌は未だ謎に包まれている。本講義ではそのメカニズムの一端としてプラスミド-宿主染色体間の相互作用について紹介し、プラスミドを保持した細菌の細胞内で何が起こっているのかを考察する。