大学院
HOME 大学院 リスク認知とコミュニケーション
過去(2022年度)の授業の情報です
学内のオンライン授業の情報漏洩防止のため,URLやアカウント、教室の記載は削除しております。
最終更新日:2024年3月15日

授業計画や教室は変更となる可能性があるため、必ずUTASで最新の情報を確認して下さい。
UTASにアクセスできない方は、担当教員または部局教務へお問い合わせ下さい。

リスク認知とコミュニケーション

 原子力技術の開発・利用が人間・社会との間にいかなる諸問題を生み出しているか,あるいは生み出す可能性があるか,両者の新たな関係はいかにあるべきか,それらはどのように構築していくかについて,欧米をはじめ日本においても90年代後半より社会学や政策科学などトランス・ディスプリナリーな視野から議論がされてきたが,2011年3月の福島原子力災害は日本国民に改めて,これらの点を問いかけている.
 原子力利用は,原子力施設の立地地域社会,日本社会,国際社会との間でそれぞれ質の異なったリスク問題を抱えている.それは健康リスクであったり,経済リスクであったり,政治的リスクであったりと多様であり,利害関係者の立場によって何をリスクとして認識するか,何のリスクを重大視するかも異なる.したがって原子力リスク問題への対処には,科学技術的な方策だけでなく,人々のもつ心理的要素の存在を十分認識しつつ,利害関係者間での問題認識の共有,対話,共考そして協働が求められる.
 本講義では,原子力技術のもつ社会的課題への理解向上と課題対応への基礎的知識の習得を目的とし,(1)科学技術リスクと社会,(2)リスク認知,(3)リスク・コミュニケーションとクライシス・コミュニケーションを主な柱として,技術リスクの社会的ガバナンスに係る諸課題について学習するとともに,リスク心理学の基礎的知識および専門家と非専門家のリスク認知ギャップの問題の理解を深めた上で,リスク・コミュニケーション活動の企業行動や規制活動における意義や技法など基本的な事項について実践事例を交えて学ぶ.
MIMA Search
時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
3794-051
GEN-NP5m75L1
リスク認知とコミュニケーション
斉藤 拓巳
A1 A2
水曜
マイリストに追加
マイリストから削除
講義使用言語
日本語
単位
1.5
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
工学系研究科
授業計画
I.科学技術リスクと社会 第1回 リスク社会の様相,その特徴と源泉   高度科学技術社会におけるリスク問題に関わる諸現象(リスク情報の社会的増幅,リスクトレードオフなど)を概観するとともに,技術リスクが顕在化する要因,社会的危機に至る要因などを論じる. 第2・3回 原子力のトランスサイエンス的問題群   コミュニケーションの欠如やトラスト不全など,原子力と社会の関係において発生するトランスサイエンス的問題を空間(世界,国内,地域)や時間,そして,他の技術との関連の点から考える. 第4回 原子力開発利用におけるリスク・ガバナンスの課題   原子力開発利用に伴うリスクに係る社会的意思決定及び対応を実現するための仕組み,いわゆるリスク・ガバナンスを構成する要素を概観した上で,それらを支える社会信頼,ステークホルダー・エンゲージメントの重要性及び社会的な課題について論じる. II.リスク認知 第5・6回 ヒューリスティクスと判断バイアス   リスク認知研究から得られている主な知見を概説するとともに,人間の情報処理システムの,特定方向への偏り(バイアス)や判断のショートカット(ヒューリスティクス)などの特徴,及び集団が陥る判断の罠について,心理学的な視点から解説する. 第7・8回 一般市民のリスク認知と専門家との認知ギャップ   科学技術リスクに対する社会調査研究の知見に基づき,一般市民と専門家のリスク認知ギャップの実態,その要因,対話・協議やリスクマネジメントへの影響などについて論じる. III.リスク・コミュニケーション及びクライシス・コミュニケーション 第9・10回 リスク・コミュニケーション   リスク・コミュニケーションの歴史的経緯と社会的背景,リスク・コミュニケーションの要諦を説明したのち,具体例を紹介しながら,リスク・コミュニケーションの実践方法について解説する. 第11・12回 原子力災害と風評被害   災害時の人間行動について災害心理学の知見(災害対応の類型,避難行動に影響する人的因子,パニック神話など)について論じた上で,災害情報の伝達と受容や社会システムの機能,クライシス・コミュニケーション等について学ぶ. 第13・14回 メディア,信頼回復   詳細,検討中.
成績評価方法
課題レポートの内容で評価する.
教科書
谷口武俊,リスク意思決定論,大阪大学出版会,2008. 平川秀幸・土田昭司・土屋智子,リスクコミュニケーション論,大阪大学出版会,2011. USNRC, Effective Risk Communication –NRC's Guidelines for External Risk Communication, NUREG/BR-0308
参考書
特に無し
履修上の注意
指示しない