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最終更新日:2024年4月22日

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放射線安全学

本講義では、原子力分野で常に付随する放射線安全の基本的考え方や理念について学習する。
まず、これらの理解の基礎となる放射線物理学、放射線化学、放射線生物学のうち関連する項目について学ぶ。放射線安全においては行政・規制も大切な視点であることから、放射線防護関連法令のうち放射性同位元素等の規制に関する法律(RI規制法)について学習する。
それらの基礎分野を元にして、現場で適用される実学としての放射線安全の考え方やその具体的な実現方法について学ぶ。ここでは、線量管理や放射線防護について習得し、さらに近年の重要なテーマである原子炉の解体や環境への影響についても理解を深め、これを実務に適用する際の課題などについても整理する。
例えば、放射線被ばくに伴って生じる健康被害は、放射線の種類や量、被ばくのスピード(線量率)、被ばく部位等、種々の要因によって決まる。このように放射線被ばくリスクを素過程や疫学的調査結果といった基礎学理に基づいて分析、理解する考え方を習得する。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
3794-001
GEN-NP5m41L1
放射線安全学
山下 真一
S1 S2
火曜
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講義使用言語
日本語
単位
1.5
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
工学系研究科
授業計画
1. 放射線安全(学)の概念 身のまわりの放射線、放射線のリスクとベネフィット、用語や単位、放射線以外のリスク、低線量/低線量率被ばく、放射線防護の基礎、等 2. 放射性同位元素等の規制に関する法律(RI規制法)等 放射線安全に関連した法体系、物・人・場所に求められる管理、管理における基準値、教育訓練・健康診断・記録に関する規定、緊急時の措置、等 3. 線量概念 放射線計測量と線量計測量、カーマ、線量の定義と単位、照射線量、吸収線量、等価線量、実効線量、線量当量、預託線量、加重係数、外部被ばくと内部被ばく、等 4. 放射線生物 確定的影響と確率的影響、しきい線量、DNA損傷と修復機構、直接作用と間接作用、水の放射線分解、線質効果、線量率効果、等 5. 放射線防護体系1 放射線障害と放射線防護の歴史、国際放射線防護委員会(ICRP)、線量制限体系と放射線防護体系、防護基準値、線量限度、通常被ばくと潜在被ばく、緊急時の線量拘束値の考え方、実務における適用、等 6. 放射線防護体系2 昨今の代表的な論点(医療被ばくの防護、自然放射線源の防護、福島第一原発事故の教訓の反映)、医療行為としての特殊性、高放射能自然線源(NORM)、等 7. 職業被ばく管理と線量評価1(個人被ばく管理) 外部被ばくと内部被ばくでの管理の違い、線量限度、モニタリング手段、個人線量計、実効線量と線量当量、預託線量、記録の保管と被ばく登録管理制度、等 8. 職業被ばく管理と線量評価2(作業環境管理) 環境モニタリング、表面汚染密度限度、空気中濃度限度、排気中濃度限度、遮蔽・除染・換気、法令における規定(基準値、モニタリング頻度、記録、等)、サーベイメータの種類と特徴、実務における改善活動、等 9. 公衆被ばく管理と線量評価1(環境放射線モニタリング) 環境モニタリングの目的、原子力施設のための放射線防護基準、一般環境中における放射線防護、放射性核種の環境動態と被ばく経路、放出された放射性物質による公衆の被ばく線量評価、緊急時の環境放射線モニタリング、実際の例、等 10. 公衆被ばく管理と線量評価2 公衆被ばくの定義、線量限度と線量目標値、長期被ばくの要因(放射性廃棄物の処理・処分、原子力施設の廃止措置)、長期被ばくをもたらす核種、放射性廃棄物に関する放射線防護に対する放射線防護、放射性廃棄物の分類、緊急時の考え方、等 11. 放射性廃棄物安全管理 放射性廃棄物の分類、地層処分、コンクリートピット処分、素掘り処分、放射性廃棄物に関する安全原則(IAEA)、放射性廃棄物処分に対する放射線防護方策(ICRP)、等 12. 原子炉解体・クリアランス 原子炉の解体、廃止措置、安全貯蔵、実際の廃止措置の例、クリアランスの考え方と経緯、クリアランスレベル、規制除外・免除やクリアランスのための放射能濃度算出方法(IAEA)、等 13. 環境の放射線防護 環境(ヒト以外の種)への放射線影響、ヒトと環境とでの放射線影響の違い、環境の放射線防護、関連する国際会議の経緯、関連するICRP勧告やIAEAレポート、現在の課題、等 14. トピックス 内部被ばく線量評価の詳細、体内汚染をともなう過去の原子力事故、体内動態、体内残留率、等
授業の方法
毎回の授業内容に沿って参考書・参考資料等を用い事前に講義内容を概観し、必要となる基礎的な知識(高校や学部レベルで備えておくべき内容)のうち理解度が不足している部分について学習しておくこと。 また、授業後は、講義スライドだけでなくノート等をもとに復習すること。
成績評価方法
講義内容に基づき、基礎から実用、複合的問題に関する知識を期末試験で問う。試験は放射線安全学演習と合わせて行う。 試験には原子炉主任技術者試験及び核燃料取扱主任者試験のうち放射線影響、放射線防護および被ばくリスク管理に係る問題を含み、国家試験合格に相当するレベルを問う。
教科書
「放射線物理学」「放射線生物学」「放射線安全学」(以上、オーム社)、「放射線取扱の基礎」「放射線安全管理の実際」(以上、日本アイソトープ協会)、「放射線概論」(通商産業研究社)、「原子力安全基盤科学1原子力発電所事故と原子力の安全」「原子力安全基盤科学2原子力バックエンドと放射性廃棄物」「原子力安全基盤科学3放射線防護と環境放射線管理」(以上、京都大学学術出版会)
履修上の注意
指示しない
その他
前提となる知識と項目:理系学部卒業程度の数学,物理,化学の知識を前提とする。 「原子核と放射線計測/原子核と放射線計測演習」の一部を基礎とし、本講義の講義内容のうち放射線物理および線量概念の理解をより深めることに繋がる。 応用先_分野と項目:「放射線遮蔽」、「放射線利用」、「原子力実験・実習1」、「原子力実験・実習1」、「原子炉実習・原子炉管理実習」、「廃棄物管理工学」、「原子力危機管理学」、「福島学」を受講するための基礎講義である。特に「放射線利用」では、本講義における放射線サイエンス(放射線物理、放射線化学、放射化学、放射線生物、放射線医学等)の基礎知識を基に、原子力分野だけでなく産業および医学分野での放射線の有効利用とその原理について学ぶ。 「原子力法規」とは、本講義で扱う「放射性同位元素等の規制に関する法律」と関連がある。 「放射線安全学/放射線計測演習」では、本講義の学習内容について演習を行う。
実務経験と授業科目の関連性
・原子炉技術者に必要とされる知識・技術・教養 ・核燃料技術者に必要とされる知識・技術・教養 ・行政技術者に必要とされる知識・技術・教養