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最終更新日:2024年10月18日
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近代ヨーロッパ文化変容論II
イギリス近代における中世主義―バラッド復興からモダニズムまで
(目標)この授業においてはイギリス近代、とりわけ18世紀後半から19世紀にかけて広範囲に広がっていた中世主義について、その多面的な位相と意義を、2次文献の読解を中心にして、一つ一つ解きほぐしながら考えていきます。事例研究として、具体的な作品の抜粋を照合しながら、中世主義の様態について実証的に確認し、理解することを目標とします。
(概要)1760年代のイギリスにおいて、中世に対する関心が芽生え始め、中世的な様式が建築や文学の領域において顕著に姿を現すことになりました。それはどのような要因に基づいたものであり、どのような形式を持ったものだったのでしょうか。
中世という過去に対する眼差しには審美的な動機だけではなく、政治的な動機などさまざまなものが含まれ、一様なものではありませんでしたが、古事物研究の発展とフランス革命やナポレオン戦争という政変も経て、1830年代に国家的な規模で社会全体に根を下ろしていくことになりました。1834年に焼失した国会議事堂の再建に際して、ゴシック様式が採用されたのは、ゴシック様式という中世の建築様式がイギリス的なものであるという認識が国民にも共有されていた証左として考えることができます。
文学においてもウォルター・スコットの歴史小説やジョン・キーツの「聖アグネス祭の前夜」や女性作家が量産するロマンス的な小説など、多様なかたちで中世主義が出現します。カーライルからラスキン、モリスに至る散文や批評にも中世主義は社会的意義を伴って刻印されています。さらには絵画領域では、ラファエル前派やホイッスラー、バーン=ジョーンズなど中世を題材にした世界が描かれていきます。
それらにはどのような意味があり、またそうした文学作品は同時代の文脈においてどのような横の相関関係を保っているのでしょうか。またそれはどのような歴史意識や社会観を生み出したと言えるのでしょうか。
イギリス近代の中世主義は、文学のみならず芸術や建築を含む領域横断的な文化・芸術運動であると同時に、同時代の社会や政治と不可分な関係を保った社会・政治活動でもあります。そのあり方を総体的に捕捉することで、バラッド復興からモダニズムの台頭に至る時代の文学について新たな解釈の可能性を模索してみたいと思います。
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