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最終更新日:2025年4月21日

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多元文化構造論II

ゲルノート・ベーメ『感覚学としての美学』を読む
ドイツ(デッサウ)生まれの哲学者・美学者ゲルノート・ベーメ(Gernot Böhme 1937-2022)の『感覚学としての美学』を読みます。(ドイツ語が読める人は、原本『Aisthetik: Vorlesungen über Äshtetik als allgemeine Wahrnehmungslehre』(Wilhelm Fink 2001)を必ず一緒に読むようにしましょう。)日本では「美学」は芸術作品に関する学問として捉えられがちですが、今回読んでいく本は、原題(Aisthetik: Vorlesungen über Ästhetik als allgemeine Wahrnehmungslehre)にもあるように、「感覚」の学という意味が込められています。(「感覚」を意味するギリシャ語に由来するaisethesisを元にできたバウムガルテンのラテン語出版『Aesthetica』を参照。)したがって本書は感官、感覚、感性の学としての美学が問題になるのですが、明白に言語化しやすい対象の感覚や情感(あるいは属性)とは区別されうる、言語化しづらい情感(雰囲気、雰囲気的なもの)をも対象にしています。「物」、「客観(客体)」、「主観(主体)」の定義を見直し、私たちがいつも既にその中にいる「状態性」や「雰囲気」をも批判的に見極める必要性と可能性を論じる本でもあると言えます。いわゆる芸術作品に限らず、デザイン、建築などもが雰囲気の「産出」をして(しまって)いる点に反省をひろげながら、建設的な意味での批判的な感覚の学としてのAisthetik、の実践の場が、私たちの日常生活の場に広がっている点を的確に論じている本です。

目標 : 日本語(とドイツ語)による講読を通し、著者の論に対する問いや批判的見解を明確にし、それらに対する独自の考えを論じ、展開すること。「感覚」、「情感」、「雰囲気」、「雰囲気的なもの」等に関して、自身の修士論文のテーマと関連性が見出せる場合も見出せない場合も、論理的にも実践的にも自分自身の生活環境の中と照らし合わせながら考察を深め、議論すること。また、著者の視点に補うべき点が見つかれば、それを具体化させ、論じていくこと。他分野との関連性や並行性を指摘すること、など。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
31M210-0720S
GAS-IC6C02L1
多元文化構造論II
桑山 裕喜子
S1 S2
月曜5限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
総合文化研究科
授業計画
第1回 導入・解説 「序論」: 感覚的認識の理論としての美学・美学の対象領域(自然・デザイン・芸術)・実在的なものの審美化(Ästhetisierung)・自然美学・芸術 第2回 第二章 「知覚」 始まりの問題・知覚の鍵・知覚の実例 第3回 第三章 「雰囲気」 概論・進入・違和感・雰囲気という概念 第4回 第四章 「雰囲気的なもの」 雰囲気との違い・準物体(Halbding)・芸術の主題としての雰囲気的なもの、美的自然の要素としての雰囲気的なもの 第5回 第五章 「状態性」 知覚の自我極・知覚の前提としての現前性・襲われていること(Betroffen-Sein)と自己感知 第6回 第六章 「共感覚」 雰囲気の性格・共感覚とは何か・ゲーテによる色彩の感覚的道徳的作用・雰囲気の性格の産出における感覚質の置換可能テーゼ 第7回 第七章 「観相」 雰囲気の性格とその産出者との関係・観相学小史・新しい観相学の試み 第8回 第八章 「場面」 美的仮像と現実的現実・演出・場面の経験と産出 第9回 第九章 「脱自」 属性と脱自・アリストテレスの例・脱自としての属性 第10回 第十章 「記号と象徴」 記号論と解釈学・象徴・『孤独な木』・ 第11回 第十一章 「物」 実在と現実・現出における物・物の知覚 第12回 第十二章 「美的実践と美的批判」 詩学と趣味の理論・美的実践・批判 第13回 総合ディスカッション
授業の方法
最初の2回の授業は解説を含めた講義形式をとり、3回目以降はゼミ形式になります。参加者は各回で読むべき箇所を必ず読んでくることと、授業の最初に発表担当会を決めるので、その回に自分の担当箇所の解説と問題提起を含めたプレゼンテーションが必須になります。
成績評価方法
評価は、発表(プレゼンテーション)と、期末レポート、積極的な授業参加が元になります。試験はありません。
教科書
Gernot Böhme Aisthetik: Vorlesungen über Äshtetik als allgemeine Wahrnehmungslehre (Wilhelm Fink 2001) ゲルノート・ベーメ著 『感覚学としての美学』勁草書房 2005年。 (どちらも該当箇所をUTOLよりアクセス可能にします。)
参考書
ゲルノート・ベーメ『雰囲気の美学――新しい現象学の挑戦』梶谷真司、斉藤渉、野村文宏訳 晃洋書房 2006年。 ゲルノート・ベーメ著「雰囲気」阿部美由起訳『カリスタ――美学・芸術論研究――』vol. 3 東京芸術大学美学芸術論研究会 1996年。 ゲルノート・ベーメ著「感情の言語の中の天候:とりわけゲーテを考慮に入れて」『カリスタ――美学・芸術論研究――』vol. 29, 東京芸術大学美学芸術論研究会 2022年。リンク: https://www.geidai.ac.jp/*****öhme_takahata.pdf(2025年2月28日参照) ディーター・メルシュ、エファ・シュアマン著:「世界に向かう哲学の知は、誰もが関心を抱いていることに寄り添うーーゲルノート・ベーメの逝去に寄せて」『カリスタ――美学・芸術論研究――』vol. 29, 東京芸術大学美学芸術論研究会 2022年。 リンク: https://www.geidai.ac.jp/*****ürmann_abe.pdf(2025年2月28日参照)
履修上の注意
毎回、授業の最後に次週扱う箇所の確認がされるので、参加者は必ず該当箇所を読んでくるようにしてください。また、発表の担当箇所についてはレジュメの用意を含めた解説を担当するので、担当箇所を読み、問いや批判、そして明白なところとそうでない点を自分の言葉でまとめてから授業に参加するようにしましょう。