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最終更新日:2022年10月20日

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表象文化論実験実習III

『フォレンジック・アーキテクチャー:検知可能性の敷居における暴力』
近年、Forensic Architectureというイギリスのゴールドスミス・カレッジに拠点を置き、建築で培われてきた手法を基盤としながら国家権力による暴力事件(警官による殺人からウクライナ戦争まで)を調査する研究機関が目覚ましい活動を繰り広げています。とりわけ、権力側が存在を否定したり、なかったことにしようとする出来事を、現場に残された多様な物的証拠から再構築して「事件」として成立させた上で、国際法廷だけではなく、ドクメンタのような美術の場における展示というフォーマットも利用して公開する手法は、建築はもちろんのこと、美術シーンにも大きな衝撃を与えています。また現代思想の様々な概念を事件解決のための具体的な方法論に組み込んでいく鮮やかな手つきは、哲学/思想と実践/パフォーマンスの関係についても多くの豊かな示唆をもたらしています。

この授業では、フォレンジック・アーキテクチャーの中心人物であるエヤル・ヴァイツマンの主著《Forensic Architecture: Violence at the Threshold of Detectability》(Zone Books, 2017)を中井が邦訳・出版することを踏まえて、その下訳をみんなで読みながら、この特異な団体の活動を思想や技術や方法論など様々な観点から検討します。また本文の合間に具体的な事例研究(ケース・スタディ)が挟まれる構成になっていることから、それらのケース・スタディを参加者のあいだで分担しながら訳し、来年水声社から出版される本に共訳者として参加してもらうことも考えています。

内容としては、Sセメスターに後期課程向けに行なった、ヴァイツマンが昨年出版した《Investigative Aesthetics》の(同じく中井による)訳を読みながら、フォレンジック・アーキテクチャーの活動から生み出された「調査的感性術」というエステティクス(美学=感性論)の新しい動向を検討する授業の続編とみなすこともできます。ただし、より具体的なケース・スタディーや手法にフォーカスを絞り、事件の調査法と解決法を詳しく見ていくつもりです。もちろん、そちらの授業を履修していなくても、《Investigative Aesthetics》の内容を理解していなくても、まったく構いません。

建築に関心がある人はもちろん、モノの哲学やオブジェクト指向存在論、あるいはアクターネットワーク理論などに惹かれる人、美術やパフォーマンス、新しいエステティクスの動向に興味がある人、いま起こっている戦争や紛争に心を痛めている人、政治とアートの関わりに頭を悩ませている人などが集まって、様々な角度から議論を深めることができればと思っています。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
31M210-0351A
GAS-IC6A30E1
表象文化論実験実習III
中井 悠
A1 A2
火曜4限
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教室
駒場8号館 3階・8-323室
講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
総合文化研究科
授業計画
(すべて大文字の小見出しが本文に差し挟まれるケース・スタディです) INTRODUCTION: At the Threshold of Detectability/検知可能性の敷居にて  Negative Positivism/ネガティブ実証主義  Toward a Forensic Architecture/フォレンジック・アーキテクチャーに向けて  Drone Vision/ドローン・ビジョン  Visual Extraterritorialization/視覚の治外法権化  PATTERN OF DRONE STRIKES/ドローン攻撃のパターン  Under the Veil of Resolution/解像度のベールの下で  The Architecture of Memory/記憶の建築 PART ONE: What Is Forensic Architecture?/フォレンジック・アーキテクチャーとはなにか  CRACKS: LINES OF LEAST RESISTANCE/ひび割れ:最小抵抗線  Conflict Surveyors/紛争調査員  STARO SAJMISTE: THE INVERTED HORIZON/反転した地平線  Forensis/フォレンシス  Counterforensics/対抗フォレンジックス  A KNOCK ON THE ROOF/屋根へのノック  Engaged Objectivity/積極的な客観性  WHITE PHOSPHOROUS/白燐  The Forensic Turn/フォレンジック・ターン  The Era of the Witness/目撃者の時代  SAYDNAYA: INSIDE A SYRIAN TORTURE PRISON/サイドナヤ:シリアの拷問監獄の中で  Forensic Aesthetics/フォレンジック・エステティクス  Image Space/イメージ空間  BEFORE AND AFTER/前後  LOCATING AIR STRIKES IN SYRIA/シリアにおける空爆を定位する  ABU RAHMA: FROM VIDEO TO VIRTUAL MODELING/アブ・ラマ:ビデオからヴァーチャル・モデリングへ  Patterns/パターン  COUNTERPATTERNS/対抗パターン  Field Causality/フィールドの因果性  GUATEMALA: ENVIRONMENTAL VIOLENCE/グアテマラ:環境的暴力  THE LANDSCAPE AGAINST THE STATE/国家に対抗する風景  The Truth in Ruins/廃墟における真実 PART TWO: Counterforensics in Palestine/パレスチナにおける対抗フォレンジックス THE FORENSIC DILEMMA/フォレンジック・ジレンマ  Architecture Against Architects/建築家に対抗する建築  POLITICAL FORMS AND FORCES/政治的形態と諸力  "Counter-Cartography"/「対抗地図作成法」  Precedents/前例  THE PYRAMIDS OF GAZA/ガザのピラミッド  Ruins in Inverse/逆さまの廃墟  Lawfare/ローフェア(法戦) THE NAKBA DAY KILLING/ナクバの日の殺人事件  Intersections/交差点 HANNIBAL IN RAFAH/ラファのハンニバル  Rafah, Black Friday; August 1, 2014/ラファ、暗黒の金曜日、2014年8月1日  The Timeline/時間軸  The Prisoner's Dilemma/囚人のジレンマ  Hannibal Unleashed/解き放たれたハンニバル  Image Space/イメージ空間  Air: Nephanalysis of Bomb Clouds/大気:爆弾雲解析  Subsoil: The Underground Manhunt/底土:地下の人狩り  To Kill A Dead Man/死者を殺すために  Meanwhile .../その一方で…  Postscript: Trial As Denial/あとがき:否認としての裁判 PART THREE: Ground Truths/地上の真実  "A Tribe against a State"/「国家に対抗する部族」  The Aridity Line/乾燥線  The Conflict Shoreline/紛争海岸線  Meteorological Traces/気象学的痕跡  NEGEV SETTLEMENTS, VEGETATION, AND PRECIPITATION/ネゲヴの集落、植生、降水量  The Bedouin Nakba/ベドウィンのナクバ  The Politics of Drought/干ばつをめぐる政治  PLANT VIGOR AS A POLITICAL SENSOR/政治的センサーとしての植物の活力  AL-'ARAQIB IN 1998, 2002, 2008, AND 2014  Colonialism and Climate Change/植民地主義と気候変動  The Climate of the Naqab's History/ナカブの歴史を彩る風土  The Testimony of the Weather/天気の証言  Orientalist Meteorology/オリエンタリズム気象学  The Earth Photograph/地球写真  Military Archaeology/軍事考古学  Life at the Threshold of Detectability/検知可能性の敷居にある生
授業の方法
講義形式の授業を(あまり)挟まず、ひとつのテクストをじっくり読み、訳していくことに焦点を絞ります。とはいえ、《Forensic Architecture》に提示されるさまざまな概念や具体的な事例をそのつど検証していく中で、議論の枠はおのずと広がっていくでしょう。
成績評価方法
レスポンス提出と議論への参加をベースにした自己採点
教科書
Eyal Weizman, Forensic Architecture: Violence at the Threshold of Detectability (Zone Books, 2017)
参考書
Eyal Weizman & Matthew Fuller, Investigative Aesthetics: Conflicts and Commons in the Politics of Truth (Verso, 2021)
履修上の注意
●下訳および原著のPDF、またInvestigative Aestheticsなどの関連文献はすべて配布します。 ●英語に自信がないため(あるいはその他の理由で)翻訳に参加したくない人はそのような受講も認めます。事前に申し出があれば担当から外します。 ●学部生その他の聴講も(議論に参加してくれることを前提に)歓迎します。