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最終更新日:2024年4月22日

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文化ダイナミクス演習III

メディウム(媒体)について――メディウムを通して技術を考える/技術を通してメディウムを考える
 この授業では、芸術作品を単一のジャンルに関わる用語法では分析できないような多様なジャンルにまたがる媒介的なものとして論じる方法を身につけることを目標とする。鍵となるのが、メディウム(媒体)という概念である。媒体はその言葉が示す通り単一ではありえない。常に複数の事物を媒介するものとしてのみ表れる。この意味では、媒体はそれ自体技術の基礎となる。一方ですべての技術がメディウムに帰結するわけではない。メディウムは技術の可能性を成立させる基盤(母体)であるが、技術はメディウムの可能性のすべてをくみつくすことは決してできない。この授業では作品を成立させている技術(テクネ―)の分析を通してメディウムの性質に肉薄すること/メディウムの性質の分析を通して作品を成立させている技術(テクネ―)に肉薄することを目標とする。
 この演習で扱う具体的な分析対象としての作品は、縦軸と横軸の広がりを持って展開するだろう。歴史や同時代性が先にあるのではなく、メディウムの媒介性が歴史や同時代性を組織していくことが具体的に体験され、歴史批判としての認識を深めることを期待する。
 メディウムは不定形な性質を有している。例えば、ジョン・ロックが論じた第一性質と第二性質という区分にのっとれば、メディウムの持つ性質は第二性質ではない、すなわち感受する側の感受性においてのみ成立するわけではない。もう一方で、メディウムの持つ性質は第一性質には当てはまらない。というのは、メディウムはそれ自体では対象として存在を示しえないからである。メディウムは常に複数の異なる物質に分裂して現れる。あるいは、複数の物質を関係づけるものとしてのみ現れる。メディウムの出現は、人間が知覚するかどうかとは無関係である。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
31M210-0131S
GAS-IC6A13S1
文化ダイナミクス演習III
岡﨑 乾二郎
S1 S2
木曜4限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
総合文化研究科
授業計画
学期の前半では、講師から1週間前に課題を提示し、次週に受講生全員で課題について議論する。学期の後半では、授業の参加者から課題を提示してもらい、次週に提題者の発表を行ったうえで、受講生全員で課題について議論する。  初回の授業から読書課題に基づく討議を行う。授業への参加を希望する学生は、『マルセルデュシャン全著作』所収の「創造過程」を読み、討議すべき内容を自分なりに用意した上で、初回の授業に臨むこと。 初回授業は4月28日。
授業の方法
 学期の前半は、講師からの課題を基に、授業参加者全員で議論する。学期の後半は、各回の発表者を決め、発表者の提題の後に、受講者全員で議論する。各回の発表者は自分の発表の1週間前に課題(分析対象となる作品など)を提示した上で、発表の準備を行うこと
成績評価方法
 授業内での発表・議論への貢献度・期末課題を総合的に判断する。
教科書
 特に用いない。  ただし、「授業計画」にも示したように、マルセル・デュシャンの「創造過程」は初回の授業までに入手した上で、読了しておくこと。  マルセル・デュシャン. 「創造過程」『マルセルデュシャン全著作』所収, (未知谷, 1995年), 283-286.  以下に挙げるような文献が、メディウムに関して論じる上での基本文献となるため、参照することが望ましい。  T. S. エリオット. 「伝統と個人の才能」. 矢本貞幹(訳)『文芸評論集』所収, (岩波書店, 1962年), 21-38.  G. E. レッシング. 『ラオコオン―絵画と文学との限界について』. 斎藤栄治(訳). 岩波書店, 1970年.  荻生徂徠. 「訳文筌蹄初編」『荻生徂徠全集 第2巻 (言語篇)』所収, (みすず書房, 1974年).  マーシャル・マクルーハン. 『グーテンベルクの銀河系』. 森常治(訳). みすず書房. 1986年.  ジャック・デリダ. 『エクリチュールと差異』, 合田正人・谷口博史(訳). 法政大学出版局. 2013年.  ジョージ・クーブラー. 『時のかたち』. 中谷礼仁・田中伸幸・加藤哲弘(訳). 鹿島出版会, 2018年.  広く芸術およびメディウムに関して論じた講師による著作に以下の著作がある。適宜参照することが望ましい。  岡崎乾二郎(編著). 『芸術の設計』フィルムアート社, 2007年.  岡崎乾二郎. 「スーパーマンになろう !現代アート基礎演習」『美術手帖』60(911), 2008, 11-96.  岡崎乾二郎 『ルネサンス 経験の条件』 文藝春秋, 2014年.  岡崎乾二郎 『抽象の力』 亜紀書房, 2018年.  本講義では、メディウムを、複数のものとの関係の中で機能するものとして理解している。こうしたメディウムの理解から批判的に検討する余地のある批評家としてグリーンバーグがいる。  クレメント・グリーンバーグ. 『グリーンバーグ批評選集』. 藤枝晃雄(訳). 勁草書房. 2005年.
参考書
 受講生の提題に応じて随時提示する。
履修上の注意
 作品分析に際して、実際に作品のモデル(模写・模型)を作成する演習を行う。受講を希望する学生は、1.スマートフォン程度の写真機、2.ぺんてるの専門家用パス(36色セット)を画材店などで授業開始前に入手すること。