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最終更新日:2025年4月21日
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文化ダイナミクス演習III
メディウム(媒体)について――メディウムを通して技術を考える/技術を通してメディウムを考える
この授業では、芸術作品を単一のジャンルに関わる用語法では分析できないような多様なジャンルにまたがる媒介的なものとして論じる方法を身につけることを目標とする。鍵となるのが、メディウム(媒体)という概念である。媒体はその言葉が示す通り単一ではありえない。常に複数の事物を媒介するものとしてのみ表れる。この意味では、媒体はそれ自体技術の基礎となる。一方ですべての技術がメディウムに帰結するわけではない。メディウムは技術の可能性を成立させる基盤(母体)であるが、技術はメディウムの可能性のすべてをくみつくすことは決してできない。この授業では作品を成立させている技術(テクネ―)の分析を通してメディウムの性質に肉薄すること/メディウムの性質の分析を通して作品を成立させている技術(テクネ―)に肉薄することを目標とする。
今回は特に(生産物ではなく)具体的な生産過程の分析を行う、統合的な主体概念の意図から演繹的に作品が生産されるという図式ではなく、制作過程のなかから事後的に主体および作品の重層的な意味が生成してくるという制作過程モデルを考察する。まずはじめに考察対象とされるのはシュルレアリスムである。(生産物=作品として作られたシュルレアリズムではなく、生産プロセスの脱構築、表現主体の脱中心化、解体の方法としてのシュルレアリスムの可能性を探る。
この演習で扱う具体的な分析対象としての作品は、縦軸と横軸の広がりを持って展開するだろう。歴史や同時代性が先にあるのではなく、メディウムの媒介性が歴史や同時代性を組織していくことが具体的に体験され、歴史批判としての認識を深めることを期待する。
メディウムは不定形な性質を有している。例えば、ジョン・ロックが論じた第一性質と第二性質という区分にのっとれば、メディウムの持つ性質は第二性質ではない、すなわち感受する側の感受性においてのみ成立するわけではない。もう一方で、メディウムの持つ性質は第一性質には当てはまらない。というのは、メディウムはそれ自体では対象として存在を示しえないからである。メディウムは常に複数の異なる物質に分裂して現れる。あるいは、複数の物質を関係づけるものとしてのみ現れる。メディウムの出現は、人間が知覚するかどうかとは無関係である。
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