2022年度の内容
■9月15日(木)10:00~17:00
◎MRI装置を用いた脳活動計測の基礎と実践
担当:中村 優子(進化認知科学研究センター)
講義内容:脳機能画像研究の概略・歴史と機能的MRI(fMRI)の原理を解説する。また、fMRIをもちいた計測実験の実例をしめし、データ解析を体験する。得られた結果について脳活動パターンから何が言えるかを議論する。
◎神経・精神疾患におけるMRI脳構造解析
担当:舞草 伯秀 (進化認知科学研究センター)
内容:MRIを用いた脳構造解析は、神経・精神疾患における発症予測あるいはその進行の客観性・再現性・定量性にすぐれた指標となり得る。特に画像解析技術の発達とともに、2000年代初頭より多施設臨床画像研究が盛んに行われるようになってきた。本講義では、主に神経・精神疾患における脳画像解析技術とともに、多施設研究で明らかになってきたMRIの機種間差の問題とそれに対するこれまでの研究について解説する。
■9月16日(金)10:00~17:00
◎動物行動の客観的評価、分析、解釈を行うための行動生物学
担当:香田 啓貴 (総合文化研究科)
内容:ヒト以外の動物を対象に研究し比較することで、ヒトの認知機能の仕組みや、いかにして進化してきたのかを明らかにしていくことが可能となる。また、動物を研究することにより、複雑に見えるヒトの行動の基礎となるものが理解されるようになってきた。本講義では、動物を対象に研究をすることで発見された行動の原理から、それらを応用してどのように動物の認知機能を研究してきたのか、研究例を紹介しながら解説する。後半では実際に動物の行動を客観的に計測する実験例を紹介し、実験計画やデータ解析を体験する。
◎ げっ歯類の海馬における空間情報表現
担当:田尾 賢太郎(定量生命科学研究所)
内容:わたしたちは、空間の中で自分が位置する場所を瞬時に判別できる。このような空間と場所の認識にかかわる機構として、脳内の海馬と呼ばれる領域において、動物がある特定の場所に位置するときにだけ活動する「場所細胞」の存在が報告されている。本講義では、自由行動下の動物をもちいた電気生理学実験の技術的発展と、それにより解明されてきた海馬における空間情報表現について概説するとともに、実際にマウスの背側海馬より記録された神経活動のデータ解析を体験する。
■9月20日(火)10:00~17:00
◎言語の脳内処理 ― 脳波計測
担当:小林 由紀(進化認知科学研究センター)
内容:脳波測定はヒトの脳から生じる電気活動を記録し観察する方法である。特に、特定の刺激に関連して生じる事象関連電位(event-related potentials)は、その刺激の処理過程を反映すると考えられるため、人間の言語処理過程を解明するのに非常に有用である。前半は脳波の基礎知識と測定手法と解析手法、さらに、言語処理過程を脳波測定によってどのように解明するかについて実際の研究例を元にして講義する。後半は脳波測定の実際の場面を紹介し、データ解析について解説する。
◎visual world paradigm ― 眼球運動計測
担当:陳 姿因 (総合文化研究科)
内容:我々人間の目の動きは随意的ではなく、高次の認知プロセスと密接に関わっている。目がいつ、どこに向けているかは即時処理や予測処理の指標になる。Visual world paradigm実験法とは、音声を聞きながら、複数の視覚提示の中からターゲットを探し出す課題で、特に心理言語学で抽象的な認知プロセスを推定するのによく利用される方法の一つである。授業の前半にはvisual world paradigm実験の原理とデザインする際の注意点を概説する。後半には実際の実験を紹介し、データ分析の実習をおこなう。統計フリーソフトRをもちいる。