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最終更新日:2024年4月22日
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言語態分析演習V
19世紀末のロンドン ― 都市空間と室内空間の詩学
この授業では、ロンドンを舞台とする複数の19世紀末文学を読解しながら、この時代の思潮や社会がどのようにそこに浮上しているかを考察していきます。
都市空間や都市における居住空間は文学作品において特殊な「リアリティ」を獲得していきます。脚色されたり、誇張されたり、ときには象徴化されることで、虚構の装置となっていることは確かですが、そこには同時代の社会状況や政治、思想を反映した空間感覚・認識が露呈します。そうした意識は空間描写の分析を通して看取することも可能ですが、登場人物たちの移動の軌跡や会話、ときには室内装飾を通しても確認することができます。また、虚構内における空間は必ずしも構造的に理解すべきものでもありません。実際の都市空間にも歪みやひび割れがあり、そこに生きている人間の存在の根幹に関わる非ユークリッド的空間がその背後の闇に広がっています。ときにそれは室内空間にも侵入してきます。都市を舞台にした文学にも、テクストの歪曲やことばの「ひび割れ」があります。それらは必ずしも脱構築的な虚無につながっているわけではないでしょう。それらを解きほぐす鍵を探しながらロンドン文学を探訪していきます。
19世紀末のロンドンには、スラムの深刻な問題があり、それを含めた都市衛生問題もありました。それらとは対照的に政治を司る区域や富裕層居住区では開発・発展も進んでいました。また、とめどないスプロール現象によって郊外化も加速していきます。帝都としてのロンドンには2世紀以上にわたり海外覇権拡張を目指した帝国イギリスの姿が浮かびあがっていましたし、消費文化の拡大に裏打ちされた商業地区の発展もありました。そこに住む人々にとって、居住空間はそれぞれ異なる実存的意味を持っていました。そうした世紀末における実際の帝都ロンドンの姿を確認しながら、世紀末文学を都市空間と室内空間に注目して、新しい文学研究の可能性を探っていきます。
授業では、まず19世紀、とりわけ世紀末のロンドンについて歴史的観点から俯瞰したうえで、都市文学の研究アプローチについて考えてみます。その後、毎回一つの文学作品について世紀末のロンドンとの関係から多様な視点から切り込んでいきます。毎回の授業では対象とするテクストや作品について読解を行い、考察を深めていきます。毎回、事前に決められた発表担当者は与えられ課題なる作品における都市の表象について考察を提示します。その後、教員やほかの学生からの質疑応答を行い、教員から補足説明と一歩踏み込んだ考察を提供します。
扱うテクストや作品については予習の際には翻訳を使っても構いませんが、授業では原語テクストを用いることにいたします。
文学研究にはさまざまなアプローチが可能ですが、この授業では世紀末文学について、都市空間というテーマに沿いながら歴史的文脈のなかで検証していくことで、文学研究の一つの型とその方法論や技術を学んでいきます。
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