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最終更新日:2024年4月22日
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表現としての日本語I
歴史テクストとして読む『万葉集』巻一・巻二
――Torquil Duthie Man'yōshū and the Imperial Imagination in Early Japan精読――
トークィル・ダシー『万葉集と上代日本における帝国的想像』は、帝国的世界像という見地から『万葉集』における歴史叙述を読み解いてみせた画期的研究書である。世界が唯一の帝国の傘下にあって、その中心に帝王が存在するという、漢代に成立した帝国理念が、三国・南北朝の分裂時代を通じてかえって強化され、漢字漢文の使用とともに東アジア周辺諸国へも伝播した。朝鮮三国や日本はその国家形成の過程で自らを帝国として表象するイデオロギーを受容するとともに、種々の書物の基本構想とした。同書は、『万葉集』がその最たる事例であることを、主として巻一・巻二における天武持統皇統の歴史叙述を的に解き明かす。
8年前の刊行直後から日本語訳が計画されていたが、紆余曲折を経て、ようやく本文の翻訳がほぼ完成した。同書を精読し、日本の学界にはまだほとんど知られていない壮大かつ綿密な構想を方法として摂取することを目ざす。なお、同書には膨大な注が施されているが、その一部は英語圏の読者を念頭においたもので、日本語版では削除されるため、本文と注の対応関係がずれることになる。これを整える作業を同時に進めたい。各担当者には応分の報酬が支払われる。全体を二分し、Sセメスターでは第一部「帝国の文学的表象」を、Aセメスターでは第二部「帝国の歌と第一人称のポリティクス」を精読するが、日本語版原稿は夏季休暇中に出版社に提出する予定なので、注の整理はSセメスター中に済ませたい。第二部では『万葉集』の歌の解読がなされている。その適否を検討しつつ、いっそう豊かな解読を目ざす。
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