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最終更新日:2024年4月22日

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アジア太平洋地域文化演習IV

朝鮮・韓国の文化財と現代社会
長く伝わる美術工芸品や先人が残した建造物などの遺跡、伝統行事などの有形、無形の文化財は、国籍や民族を超えて人びとに感動を与えるものである。しかし、それは、国家による国民統合と無縁ではなく、それはしばしば特定の国民や民族のナショナリズムと結びつくこともある。そして、「どの国民のものか」、「それをどこに置くべきか」といったことがしばしば問題になる。また、そもそも、文化財の選定や遺跡等の保存については、「だれがどのような基準で価値を認めるか」という問題がある。人権侵害や戦争、植民地支配の記憶と結びつくものが、忌避されたり、賛否両論の議論を呼び起こしたりすることは珍しくない。
周知のように、韓国・朝鮮にある、あるいは韓国・朝鮮の人びとが製作したり、その歴史と関係を持ったりしている文化財についても、そうした問題は存在する。そして、日本には、そうした文化財が多数ある。
そこで、この授業では、朝鮮・韓国の文化財に着目し、文化財の選定、保存や、所有、返還、活用、展示等の諸問題を考えていくこととしたい。その際、朝鮮・韓国関係の文化財のみを取り上げるのではなく、他地域・他民族の事例で比較、参照しうるものについても学んでいく。
そのことを通じて、文化財と市民社会との関係の望ましいあり方、日本と韓国・朝鮮との友好について考えを深めていく。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
31D220-1020S
GAS-AS6E12S1
アジア太平洋地域文化演習IV
外村 大
S1 S2
火曜3限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
総合文化研究科
授業計画
1、ガイダンス―文化財について考える意義 授業の概要と目標について説明し、参考にすべき文献の紹介や基礎的知識の確認、授業で扱う文献等について、説明を行う。 2、近代国家における文化財 近代国家において文化財の管理や活用がどのように行われて来たか、それがどんな意味を持ってきたかを議論する。 3、文化財保存と市民社会 何をどのような意味で重要な文化遺産として保存、活用するかは、市民の公共的な議論とそこでの意見によって決められるものである。そのための活動について考える。 4、日韓の「文化財問題」の認識 日韓間では不法持ち出し文化財の返還要求等などの問題がある。そのことがどの程度の市民に知られているか、その解決についての市民の認識のあり方などについて考える。 5、韓国の文化財行政 韓国における文化財の保護、国外流出文化財の調査、活用などに関連する行政施策がどのようなものであるのか、どんな課題があるかを学ぶ。 6、ユネスコの活動と文化財 世界遺産登録などで注目されるように国際機関であるユネスコも文化財の保存等に重要な役割を果たしている。その活動の内容と課題について学ぶ。 7、歴史の再解釈と文化財 歴史の解釈は一定ではなく、ある時期において顕彰されていた文物がその後否定的にみられることもある。そのことがもたらしている影響について考えていく。 8、海外における「文化財返還」の動向 近年、ヨーロッパでは過去に植民地から持ち出した文化財を返還する動きがある。その背景や法制度との関係などを学ぶ。 9、北朝鮮の文化財 朝鮮民主主義人民共和国の文化財政策や、博物館の現状について、北朝鮮研究者からお話をうかがう。 10、在日コリアンと韓国朝鮮の文化財 在日コリアンにとって韓国朝鮮の文化財はどのような意味を持っているのか。返還運動やその収集、保存、民族教育などとの関係、活動の背景、意義などについて学ぶ。 11、日本民芸館と韓国朝鮮の文化財 駒場キャンパスの近くにある日本民芸館を見学し、朝鮮韓国由来の美術品、工芸品などを鑑賞するとともに、柳宗悦や浅川巧らと朝鮮人との交流について考える。 12、韓国の無形文化財 パンソリや仮面劇など、韓国の無形文化財について、学ぶ。 13、まとめ 授業全体を振り返って、朝鮮・韓国の文化財をめぐる問題について受講者全員で議論を行う。
授業の方法
教員が指定した文献を読み、受講生が報告、討論する授業のほか、ゲストとして招き、お話しをうかがって、議論を行う授業も予定している。 毎回の授業に関して、授業レポートを作成してもらいながら、授業に対する理解を深める。 学期の途中で、本授業の責任講師が招聘講師の授業の内容を整理し、履修者の間で、理解度を深め、論点を整理する時間を持つ。 オムニバス講義という形式で進め、毎回、論点を整理するコメントシートを配布し、成績評価に反映する。
成績評価方法
毎回の授業に対するコメントの提出、および学期末レポートの提出、そして平常点(授業への積極性・貢献度)などを総合的に勘案して成績評価を行う。
教科書
特に指定しないが、授業で関連の論文や著書を紹介するので、各自の学習に活用すること。
参考書
授業時間に紹介する。
履修上の注意
近代の日朝関係史について、基礎的な通史を1冊以上読んだうえで受講することが望ましい。