大学院
HOME 大学院 アジア太平洋地域文化演習III
学内のオンライン授業の情報漏洩防止のため,URLやアカウント、教室の記載は削除しております。
最終更新日:2023年10月20日

授業計画や教室は変更となる可能性があるため、必ずUTASで最新の情報を確認して下さい。
UTASにアクセスできない方は、担当教員または部局教務へお問い合わせ下さい。

アジア太平洋地域文化演習III

デジタル時代の言論空間とアイデンティティ、ナショナリズムの影響:中国ファクターの視点から Formation of discourse spaces and its influences of identities and nationalism in the digital age 〜 With special focus on the China factor
ゲルナーはナショナリズムを「政治的な単位と文化的あるいは民族的な単位を一致させようとする思想や運動」と定義する(アーネスト・ゲルナー『民族とナショナリズム』2022)。ナショナリズムは政治的共同体や社会的仕組みのほぼ全ての局面に存在し、グローバル、ローカル、コスモポリタンという形態でも論じられる(Delanty and Kumar, The SAGE Handbook of Nations and Nationalism 2006)。

ナショナリズムの動きには、「私たち」と「彼ら」を区分するアイデンティティのありようが反映される。アイデンティティは普遍ではなく、その時々にその定義は変わる。単一だとは限らず、複数のアイデンティティが絶えず変化し、流動的かつ分裂していく。グローバルな社会変化やイデオロギー的な情報に基づいたカテゴリーでもあり、社会政治的コンテクストなどによって定義し直される。本コースでは、アイデンティティについて、以下のような仮説を立てて検討してみたい。

1)アイデンティティは常に特定のコンテクストで創出・再創出され、相互関係において共同で構築される。流動的で可変性があり、相互排他的ではなく、誰もが複数のアイデンティティを持つ
2)アイデンティティの構築とは包摂と排除のプロセスであり、「私たち」と「彼ら」を定義することを意味する
3)言語的・文化的な帰属、文化への均質性が「私たち」を定義する重要な要素となる
4)個人的アイデンティティ、集合的アイデンティティ、国家アイデンティティ、超国家的アイデンティティなどがあり、広範な言語学的・誤用論的・習字的・ナラティブ・論証などのリソースを利用して、多くのジャンルにおいて創出・再創出され、象徴的に現れている
5)生得的排外主義のナショナリズムはポピュリズム政治によって強化され、異なる利害関係グループの間の対立を煽る傾向がある。こうした制限のある政治において、移民、少数民族、性的マイノリティなどへの差別は、政策立案・推進において容認され得る、よりソフトな差別とは根本的に異なる
MIMA Search
時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
31D220-1010S
GAS-AS6E11L4
アジア太平洋地域文化演習III
阿古 智子
S1 S2
水曜3限
マイリストに追加
マイリストから削除
講義使用言語
日本語、英語、中国語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
総合文化研究科
授業計画
(本コースで探究する問い) 香港では居住者の大多数が中国大陸出身者であるが、近年自らを「中国人」と捉える人は減り続け、「香港人」とだけ認識する人が増えている。アイデンティティとはどのような要素に影響を受けて認識され、表現されるのか。言葉や文化は、アイデンティティとどのように関わっているのか。中国大陸の「同化」とは、どのような文脈から語られているのか。日本は一時期香港を占領していたが、その時代の日本の記憶が表現するもの、『ドラえもん』や『進撃の巨人』など、日本アニメと香港の政治運動とのつながりから分析する日本の表象からは、香港人のどのような側面が見えてくるだろうか。 昨今の世界の情勢を見ると、経済格差の拡大と社会構造の急激な変化がポピュリズムの台頭と社会の分断を招いていることがわかるが、その中で疎外された人々はどのように自らの尊厳を要求しようとしているのだろうか。アイデンティティ・ポリティクスは民主主義と自由にどのように関わっていると言えるのだろうか。 香港の逃亡犯条例改正案に反対するデモでは、さまざまなソーシャルメディアが使用され、社会運動の輪を広げるコミュニケーション・ツールとして機能した。しかし、ソーシャルメディアは政治・社会の分断を加速し、フェイクニュースの問題などもあり、異なるグループが相互に疑心暗鬼になっている傾向も見られる。特にビッグデータの利用において、圧倒的な力を誇る中国による監視や「シャープパワー」を警戒する側面から、社会運動におけるソーシャルメディアのあり方が問われている。香港の社会運動、ソーシャルメディアには、他と比べてどのような特徴があり、民主主義と自由にどのような影響を与えているのだろうか。特に、2020年に国家安全維持法が施行されてからは、香港の状況は大きく変わっている。 香港に関連して分析するアイデンティティの問題は、ウイグル族など少数民族に関しても同様に見ることができる。中国のパワーが増す中で、国際政治のダイナミズムにおいてチャイナファクターはどのような影響を及ぼしているのか。 本コースでは、社会の問題や現象を理解し、説明することだけで終わるのではなく、具体的な歴史的、政治社会的コンテクストのなかで社会全体を理解し、社会を変革するという意識の下に行う「問題指向的」研究を行う。そのため、私たち自身も社会のアクターとして変化の中にいることを意識しながら、自らの立ち位置を明示的に捉える。 *毎週取り上げるテーマは最初の授業で受講生の皆さんと相談して決定します
授業の方法
講義、ディスカッション、学生による発表、レポート
成績評価方法
授業への参加、発表、レポート
教科書
阿古智子『香港 あなたはどこへ向かうのか』(ジグ、2020) *他の文献のリストは授業中に配布します
参考書
*文献リストは授業中に配布します
履修上の注意
毎回の授業での議論に積極的に参加してください。海外からのゲストによる講義も時々入ります。
その他
一回目の授業(オンライン)の接続情報です。 https://u-tokyo-ac-jp.zoom.us/***** Meeting ID: **********