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最終更新日:2026年10月16日

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近代ヨーロッパ文化変容論II

ジェイン・オースティンとリージェンシー期の社会ー女性、公共圏、共感
 この授業では、Jane AustenのPersuasionを精読し、後期オースティン作品に特有の語りの技法、感情の表象、社会的変動への応答を、文学史・社会史・感情史の交差点から検討します。全13回のうち、第1回は作品と時代背景に関する概論、最後の授業は総括と比較的考察に充て、それ以外で作品全体を講読します。
 本小説は、ナポレオン戦争後のイギリス社会における階級構造の揺らぎ、土地貴族の相対的衰退と海軍将校層の台頭、移動性の増大と都市空間(とりわけBath)の意味などを背景に、家庭や社会の慣習に縛られ(説得され)てしまう女性の「生」の問題、それに対する女性の道徳的自律、判断、意思・感情の持続を中心的主題としています。授業では、主人公アン・エリオットの内面がどのように表象され、同時に抑制されているのかを丁寧に読み解きながら、公共圏や共感といったテーマを中心にしながら精査していきます。
 また、本作をオースティンの初期作品と比較しつつ、「晩年の文体」「沈黙・遅延・回顧の物語」といった特徴に注目し、小説としての形式がどのように再編されているのかを検討する。履修者は英語原文の精読を通して、語彙・構文・修辞の細部と社会的意味との連関を読み解き、解釈を展開していただければと思っています。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
31D220-0383A
GAS-AS6B08S1
近代ヨーロッパ文化変容論II
大石 和欣
A1 A2
月曜4限
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講義使用言語
日本語、英語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
可
開講所属
総合文化研究科
授業計画
第1回 概論:Persuasionをどう読むか * 内容:1817年刊行の位置づけ/“late style”論/題名 Persuasion の含意 * 論点:どのような学術的論点があるのかを俯瞰する。批評史の概観 第2回 Chs.1–2:家柄と記録の権威 * 内容:名前・系譜・記録、冒頭のBaronetage記述、自己愛の修辞 * 地主階級がこの時代におかれた状況はどのようなものだったのか、また冒頭のBaronetage記述、自己愛の修辞からどのようなことが読み解けるのかを考えます。 第3回 Chs.3–4:海軍の台頭 * 内容:Navy表象の語彙 * ナポレオン戦争期においてイギリス海軍がおかれた歴史的状況とその内実について考察します。また、海軍の文学的表象として小説内の語彙を細かく分析してみます。 第4回 Chs.5–6:過去の説得——破談の記憶 * 内容:回想の語り(自由間接話法)、persuasionは誰の善意か * レイデイ・ラッセルのアン・エリオットに対する影響と婚約破談が持つ社会的意味について考察します。とくに女性がこの時代の社会において置かれた状況を公共圏の概念を中心にして考えてみます。 第5回 Chs.7–8:感情の節度と身体 * 内容:感情表現を解析する。 * この小説には感情の抑圧に関係する表現や描写が多くみられます。前回考察したこの時代の女性たちがおかれた抑圧的な社会状況と合わせながら、そうした感情表現について分析を試みます。とくに沈黙・視線・身体配置などに着目していきます。 第6回 Chs.9–10:社交空間の政治学  * 内容:リゾート地という空間は感情をどう編成するかについて考えてみる。入退場の記述 * 19世紀初頭のバースは一大リゾート地であり、多くの紳士淑女が集まる社交空間でした。社交が持つ政治的・文化的意味を解きほぐしながら、女性がこの時代におかれた社会的立場とその文学的表象を考察します。 第7回 Chs.11–12:病とケア——共感の倫理 * 内容:女性にとっての共感とケアの社会的布置  * 設問:この小説の重要なシーンであるライム・リージスにおけるルイーザの事故の場面を精読します。その際に責任感を持って看護を行うアン・エリオットの感情に注目し、ケアの問題やこの時代に重要な道徳的美徳としてとらえられていた共感が、小説全体で持っている意味について考えてみます。 第8回 Chs.13–14:感情の系譜学 * 内容:認識と判断に関わる表現がイギリス経験主義、啓蒙思想とどうつながっているかを考える。 * ライム・リージスでの一件の後、観察者としてのアン・エリオットに焦点を当てながら、認識と判断に関する表現に着目し、女性にとっての認識や判断とはどのように構築されると社会的に受容されていたのかを検証します。 第9回 Chs.15–16:アーバン・ルネサンスとしのバース  * 内容:アーバン・ルネサンスとしてのバース * この時代のバースがどのような都市であったのかを小説内の描写から読み解くと同時に、歴史的にバースの都市空間がどのように構成されたのかを考証します。とくに18世紀以降のアーバン・ルネサンスという概念を踏まえて、都市の発展、人口流入、消費文化の関係性を考察し、オースティン小説のなかでどのように反映されているかを分析します。 第10回 Chs.17–18:会話の戦略——ユーモアとサーカズム * 内容:オースティン小説にはイギリス文化の重要な要素でもあるイロニー、ユーモア、諧謔がふんだんに含まれています。それらを精読、解読していきます。 * オースティンの小説では会話が極めて重要な役割を果たしています。社交上の会話がどのように扱われ、そこにどのような意味が含まれているのかをさまざまな観点から考察します。とりわけ間接話法とアイロニー、ユーモア、諧謔といった要素がどのようにみられるか、また誤解の生成がどのような過程で起きているかを分析します。 第11回 Chs.19–20:書簡の形式と修辞 * 内容:書簡が持つ社会的意味についてこの時代に即して考えてみます。 * この時代、書簡はコミュニケーション手段として重要な媒体として機能していました。オースティンの小説でも頻繁に書簡が用いられ、その内容が地の文になったりします。一世代前の書簡体小説は、まさに書簡が小説そのものを構成していた形態ですが、オースティンは書簡を小説執筆の手段ではなく、筋書きの材料に変えることで、新しい文学を創造したといえます。書簡の文学的意味について検証します。 第12回 Chs.21–22:自立と結婚 * 内容:女性の自立と結婚の問題についてリージェンシー期に即して考えてみます。 * ナポレオン戦争を背景にしたこの小説から見えてくる女性の立場、とりわけ女性と結婚という問題について、社会史的な背景のなかで検証してみます。  第13回 Chs.23–24:オースティン小説の美質 * 内容:オースティン小説の美質とは何かをあらためて考えてみる。 * 最後の場面であるアン・エリオットとウェントワース大佐の和解について、その描写と文学的な意義について考察します。とりわけ晩年の作品における表現的特徴を分析しながら、オースティン小説の美質について検証します。
授業の方法
毎回の授業は、各回、上記計画に記した範囲の小説テクストを課題として、それを中心に議論を進めます。 重要箇所については日本語に翻訳を試みてもらいます。 同時に発表担当者には毎回の課題テクストについては、重要な論点や解釈について15分ほどの発表をしていただき、その後質疑応答を含めて履修者全体で議論を重ねていきます。 批評・参考文献の詳細については、授業の時に提示します。  教員からも重要なテーマや補足資料なども提供しますので、自分なりに考察を深めていただきたいと思います。 学期全体のより具体的な授業の構成、進め方、また取り扱う文献の詳細については、最初の授業の時に提示します。
成績評価方法
出席態度40%、毎回のコメント・レポート40%(欠席もしくはレポート未提出は5点減点)、最終レポート20%
履修上の注意
扱うテクストの課題範囲については、事前に予習をしてくるようにお願いします。 特に翻訳箇所は自分で訳文を作成して授業に臨んでください。 ゼミ形式でクラス内での議論を重んじますので、自分の解釈をしっかり持って授業に出席してください。