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最終更新日:2025年4月21日

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文明技術遷移論II

市場・国家・社会の大転換と民主主義の行方:「もう一つの世界」は可能か?
1970年代後半以降、国家による経済への介入を抑制して自由市場を促進しようとする新自由主義的経済改革が世界各地で進んだ。その結果、人・物・金・情報・サービスが国境を越えて急速かつ大量に移動する「グローバリゼーション」と呼ばれる現象が進展し世界規模の市場が誕生した。その一方で、世界各地の様々な社会集団が新自由主義とは異なる価値観に基礎を置く社会の構築に向けて声を上げてきた。1980年代に構造調整政策に反発した民衆の食糧暴動や「反IMF暴動」、1990年代にメキシコの先住民農民が新自由主義的なグローバル秩序を批判した「サパティスタ蜂起」、2001年にブラジルのポルト・アレグレで、「もう一つの世界は可能だ」を合言葉に発足した世界社会フォーラムなどはその顕著な例である。また、アルカイダやイスラム国のような原理主義を掲げる闘争、南米における左翼や先住民運動による政権奪取(ピンクの潮流)、2010年チュニジアでのジャスミン革命を端緒として中東アラブ諸国で生じた一連の大規模な反政府抗議行動(アラブの春)、2011年9月にアメリカ合衆国ニューヨークのウォール街で始まった「Occupy Wall Street」運動も、既存秩序への挑戦として記憶に新しい。近年のヨーロッパにおける移民排斥運動やアメリカのトランプ大統領の誕生なども新自由主義的なグローバル秩序に代わる「もう一つの世界」を求める今日的な動きである。

このように、「もう一つの世界」を求める社会運動の性格やその世界観は多様であり相反する場合も多い。この授業の目的は、この多様性を政治社会学の理論に基づて理解し、その多様な運動が出現する要因を探り、その将来の可能性を探求することにある。本授業では、(1)新自由主義的なグローバル化が進んだ世界とはどのような世界なのか、(2)この世界を拒絶し、「もう一つの世界」を提唱する社会運動にはどのような種類・類型があるのか、そして、その違いや多様性は何に起因しているのか、(3)それぞれの社会運動の可能性と限界はどこにあるのか、とくに、どのような条件下で、社会運動が成功を収め、それぞれが抱く「もう一つの世界」の実現に近づいていくのか、(4)これらの社会運動が目指す「もう一つの世界」は民主主義の行く末にどのような影響を及ぼすのか、などの問いを探求していきたい。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
31D220-0060A
GAS-AS6A06L1
文明技術遷移論II
和田 毅
A1 A2
水曜5限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
総合文化研究科
授業計画
初回はガイダンスを行う。この授業のITC-LMSを通じて必要な情報を共有する予定である。各回のリーディングについては、「2023 民主主義の行方 Weekly Plans and Readings」というファイルに詳細を記載し、その計画に沿って進める予定であるが、変更する場合もある。必須のリーディングについては、初回授業で説明する。授業の計画としては、以下の大きなテーマを順に扱う予定である。 ①『新自由主義とグローバリゼーション』:新自由主義やグローバリゼーションの特徴をどのように理解すればいいのか。何がその魅力であり、何がそのリスクなのか。この新自由主義的グローバリゼーションに対抗する勢力は、どのような理論的なメカニズムによって生まれているのだろうか。 ②『国境を越えて連帯する左派社会運動』:グローバル化しているのは経済や情報だけではない。社会運動も国境を越えて連帯することで、グローバル秩序に市民の意向を反映させようと試みている。Alter-Globalization運動など、国境を越えたトランス・ナショナルな社会運動の事例を比較検討する作業を通じて、市民社会勢力が国境を越えて組織化し運動を拡大していく際の問題点と可能性を考察する。 ③『右翼・保守主義・原理主義運動』:ヨーロッパの移民排斥運動やネオファシズムの活性化、アルカイダやイスラム国の台頭など、国籍・人種・宗教・民族などのアイデンティティに訴えた保守的または原理主義的な運動が世界各地で増加している。グローバル化と並行する形で台頭してきた保守的・反動的な運動に関するリーディングを通して、運動が抱える問題と可能性を探求していく。 ④『Global Southからの挑戦』:グローバルな格差問題や貧困問題が顕著なのはGlobal Southと呼ばれる開発途上国地域である。大都市周縁部に広がる巨大なスラム街の都市民衆運動、インドやアフリカの貧しい農村における農民運動、資源ナショナリズムを掲げる南米の先住民運動など、新自由主義的グローバル秩序の修正を試みる事例も数多くみられる。これらの多様な事例を扱った文献を読むことで、先進国の例からは把握できない課題や可能性を考察する。
授業の方法
1.リーディング:授業計画に示されている文献を、授業前に各自が読みこんでくることが想定されている。 2.レジュメ&発表:授業の冒頭で、履修生が各週の文献について発表を行う。その際、文献についてまとめたレジュメを配布する。レジュメは、授業前までに共有フォルダにアップロードする。 3.議論への参加:発表後の授業時間は議論に費やす。文献の論理の組み立てや説明・解釈・データは妥当であるか、それまでに読んだ文献と比較してどのようなことが分かるか、将来どのような面白い研究が可能か等に着目して準備してきてほしい。 4.1ページの小論文:各週の文献についてA4用紙1ページ以内で論じる。要約ではなく、論文を書く。つまり、文献について焦点を一つに絞って、その是非を論じるように心掛ける。履修生にとっては優れた学術的訓練となり、また、後々文献について振り返る際の重要な記録にもなる。授業期間中に4回提出する。授業前日の夜12時までに教員にメールの添付ファイルとして送ること。
成績評価方法
評価は、レジュメ&発表(30%)、授業中の議論への貢献(30%)、1ページの小論文4回(40%)を勘案して行う。具体的な説明は、初回の授業で行う。
教科書
リーディングについては、職階の授業で説明する。特定の教科書は用いない予定である。
参考書
詳細は初回の授業で説明する。
履修上の注意
詳細は初回の授業で説明する。初回(10/4)はオンライン(ZOOM)で実施する。