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最終更新日:2026年10月16日

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文化人類学特論IV

スピノザと人類学
 文化人類学とスピノザ哲学の組み合わせを奇異に思う人は少なくないかも知れない。しかし、今日の文化人類学にとって、『エチカ』を中心とするこの17世紀の哲学者の諸著作は、様々な問題をラディカルに掘り下げて考えるための、一連の重要な思考の種を提供してくれるものである。『エチカ』は一般に、幾何学的秩序に基づいてひたすら理性的な世界を描くものという表面的な層に囚われて読まれることが多いが、その下部には、「経験」についてのきわめて鋭い視線があり(cf. ドゥルーズ『スピノザー実践の哲学』)、それはフィールドワークを通じて、今日の世界における身体・社会・自然を理解していこうとする現代人類学の営みと緊密に関わりうる。

 スピノザの思考が人類学と通じている理由は歴史的にも説明できる。彼が生きた17世紀は、大航海時代における地球規模の思考の発生、グローバルな市場の広がり、近代科学・近代哲学・近代数学(特に微積分法)の発生などによって、世界がはじめて深い意味で「無際限」となった時代である。それは同時に、人間の欲望の無際限な拡大(暴走)の中で世界そのもののあり方に不安が生まれた、バロックと呼ばれる時代でもあった。それはヨーロッパの覇権がスペインからオランダへと移行した時代であったが、スペイン系ユダヤ人であったスピノザはこの両方の文化的伝統と深く繋がっており、彼の哲学はそうした社会状況への最も透徹した哲学的回答であったと考えることができる。付言すれば、上記のような17世紀ヨーロッパの状況には、不思議に、今日我々が生きている世界についての感覚と確かに通じるものがあると思われる。

 この授業は、講義を中心とする形で(必要に応じて演習的要素も組み入れる)、こうした問題を、人類学を主軸に考えていくことを目的とする。スピノザの著作には随所で言及するものの、授業内部で読むことはせず、読んでいなくても意味が通じるような形で説明するつもりである。それゆえ、事前に読んでいることも、課外で読むことも必ずしも求めない。
 哲学的思考は不可欠の要素であるので、そのような思考スタイルに一切の関心を持てない人には、参加はあまり勧められない。しかし、文化人類学を専門的に学び始めたばかりの学生の皆さんにも、もし授業のテーマに本当に知的関心を持てそうであれば、スピノザについて全く知らなくても継続的に参加できるような授業にしたいと思っている。
 
 授業の目標としては、一学期の授業を経て、現代人類学とスピノザの両方について、より深い関心を抱き、両者を相通じさせて思考すること(これは私の暗黙の形では私の単著『イメージの人類学』(2018)、明示的には共編著『アフェクトゥス』(2018)でも展開してきた)について確かな手掛かりを得てもらうことである。
 
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
31D210-4231S
GAS-IC6B47S1
文化人類学特論IV
箭内 匡
S1 S2
火曜4限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
可
開講所属
総合文化研究科
授業計画
以下は2026年2月現在のプランで、変更の可能性が大きくあります。 ---------------------- 1.イントロダクション 2.世界を見ること、世界に存ること——光学・絵画・哲学 3.世界の拡張とモラル・倫理——17世紀の世界 4.世界は何によって動かされているか——原因と内在性 5.世界の事物とは何か、身体とは何か——イメージ化と社会身体 6.応用(1)——マリノフスキ的伝統の再評価 7.情動の問題と倫理の人類学 8.応用(2)——臨床的スピノザ主義 9.スピノザの政治的多元論 10.応用(3)——自然の人類学への展開 11.新たな人類学的思考に向かって——エレメントと「全体」の直観知 12.人類学とは何か? 13.まとめ
授業の方法
講義と発表を組み合わせた形式を考えているが、詳細は未定。初回授業で説明する。
成績評価方法
授業への参加、リアクションフォーム、学期末レポート。
履修上の注意
初回授業時に説明するが、意味のある形で受講してもらうため、8回以上のコメントフォームの提出をルールとしたい。