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最終更新日:2024年3月15日

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パフォーミング・アーツ論I

「振る舞い」のからくり[標本集]
今日のインターネット文化において「Behavior/振る舞い」という概念が密かな基軸を成しています。たとえば、SNSで炎上やバズりを引き起こし、さまざまなセンサーによってデジタル化され、AI(機械学習)が過去のパターンのモデリングによって先取りしようとし、企業や国家が広告/インフルエンサー/フェイクニュースなどを介して動かそうとするのは、データでも情報でもましてやアルゴリズムでもなく、インターネットに接続された各ユーザーの振る舞いです。データや情報やアルゴリズムは多くの場合、人間(ないし非人間)の振る舞いを予測し制御するための手段にすぎません(そしてオンライン世界が(オフライン世界と同じく)影響の力学によって駆動されているのだとすれば、それは「影響」が古代より対象の振る舞いに変化をもたらす作用の呼び名だったからです)。振る舞いの操作が、これほどまでに大きな価値を持っているのはなぜでしょうか。

この授業では「Behavior/振る舞い」という概念の理論的かつ実践的なポテンシャルを捉えるために、その(主に20世紀における)歴史的由来と流出過程を、いわば「標本(サンプル)」としての複数の文献を介してさまざまな角度やスケールから観察していきます。起点となるのは(1)20世紀初頭に心理学(プラグマティズム)の鬼子として誕生した行動主義(Behaviorism)が行なった、対象の「目に見えない内的な心理」から「客観的に観察できる外的な振る舞い」へのフォーカスの切り替え、そして(2)その切り替えにはじめから対象の「予測」と「制御」が目的として組み込まれていたことです。つまり「振る舞い」は、内部のからくりが隠されたブラックボックス的な対象とその外部観察者を媒介するだけでなく、後者による前者の支配を可能にする動的なインターフェースとして思い描かれていました。自発的に感じられる動きが、振り付けによって知らずのうちに踊らされている舞いであるかもしれないこと——このきわめてコレオグラフィックなからくりが行動主義の一般化とともに、広告業界やサイバネティックスや哲学や経済学や生物学やネットワーク理論など広範囲に流出していくプロセスを、オフライン世界においては廃れたとされきた行動主義が近年大きな復活を遂げているオンライン世界まで辿っていきます。「行動」と訳されがちな「behavior」をあえて「振る舞い」と訳すことで、最終的には行動主義に対する抜け道をダンスの問題として組織化することを目論んでいます。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
31D210-0290S
GAS-IC6A24L1
パフォーミング・アーツ論I
中井 悠
S1 S2
水曜3限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
総合文化研究科
授業計画
01:オリエンテーション 02:制御|John Watson, “Psychology as the Behaviorist Views It” (1913) 03:広告|John Watson, “Influencing the Mind of Another” (1935) 04:生物|BF Skinner, “The Behavior of Organisms” (1938) 05:機械|Norbert Wiener, et al. “Behavior, Purpose and Teleology” (1943) 06:広報|Edward Bernays, Public Relations (1945) 07:動物|Niko Tinbergen | "On Aims and Methods of Ethology" (1963) 08:振る舞い|坂部恵「〈ふるまい〉の位相」(1986) 09:因果|Fred Dretske, Explaining Behavior: Reasons in a World of Causes (1991)(フレッド・ドレツキ『行動を説明する―因果の世界における理由』) 10:経済|Richard Thaler and Cass Sunstein, Nudge: Improving Decisions About Health, Wealth and Happiness (2009)(リチャード・セイラーとキャス・サステイン『NUDGE 実践 行動経済学』) 11:生態|Robert Sapolsky, Behave: The Biology of Humans at Our Best and Worst (2017) 12:ネットワーク|Damon Centola, How Behavior Spreads: The Science of Complex Contagions (2018) 13:政治|Kaylee A. DeFelice and James Diller, “Intersectional Feminism and Behavior Analysis” (2019)
授業の方法
毎回、論文ないし書籍のチャプターを読み、レスポンスを提出した上で議論します。とりあえず文献と流れを設定しましたが、議論の展開や受講生の関心などに応じて変更するかもしれません。
成績評価方法
レスポンスの提出、議論への参加、出席などを踏まえた自己採点を基本とします。
教科書
読むテクストはPDFで配布します。
参考書
参考テクストもPDFで配布します。
履修上の注意
レスポンスの提出、議論への参加、出席を条件に聴講も認めます。