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最終更新日:2026年4月20日

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文化クリティシズムI

文化・学術・芸術の分裂生成あるいは内戦
周知のように(?)、駒場の「表象文化論」は本郷の「美学藝術学」に対する差異化の必要から作り上げられたフィクションとしての学術分野である。だが、その学術的実践それ自体には、既存の文化的制度・システムからの対抗的な「分裂生成」(グレゴリー・ベイトソン)を認めることが可能だろう。大学において研究・教育されている諸分野のあいだには、棲み分けによる「共生」や協調的な「学際」「学融合」といった建て前とは異なり、価値観ほかの違いによる暗黙の「内戦」が存在する(それは創造的なものでありうる)。日本学術会議の任命拒否が示した学術への国家の介入や、競争を煽り立てる研究資金の「選択と集中」政策などは、この種の内戦的な分断を政治的に誘導して強化する。かつてカントが「諸学部の争い」で論じた事態のかたちを変えた再来である。
本授業では、デヴィッド・グレーバー+デヴィッド・ウェングロウ『万物の黎明』およびマシュー・フラー+エヤル・ヴァイツマン『調査的感性術』を主たる手がかりとして、文化・学術・芸術における「創造的拒絶」(グレーバー)による「分裂生成」や「内戦」──フラー+ヴァイツマンは「感性術の内戦(aesthetic civil war)」(中井悠訳)を語っている──の論理を探り、その実践の方法を検討したい。先の二書の著者たちの著書・論考のほか、「諸学部の争い」なども参照することになろう。たとえば、「内戦」概念については古代ギリシアの「スタシス」を論じたマッシモ・カッチャーリ『ヨーロッパの地理哲学』などを念頭に置いている。いずれにしても、各テクストを「専門」のシリアスなディシプリン内に囲繞するのではなく──もとより、専門的学識を軽視するものではない──、『万物の黎明』で言われる「遊戯(play)」としての解読と議論を試みたい。それはリベラルアーツの「自由」と「技芸(術)」を再考することに繋がる筈である。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
31D210-0050S
GAS-IC6A05L1
文化クリティシズムI
田中 純
S1 S2
金曜4限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
総合文化研究科
授業計画
初回はガイダンス(オンライン)、続く2〜3回は教員(わたし田中のことです)による講義(旧著『政治の美学』『都市の詩学』と『万物の黎明』『調査的感性術』との接点から出発した理論的展望)、それ以降は参加者による文献ほかにもとづく発表と討議。参加者の意欲に応じ、学期末には授業時間外に参加者がゲストと討論するシンポジウム的な場を設けることを検討したい。文献発表の候補はとりあえず次の通り(その他の候補や詳しい書誌情報は開講時に提供する)。このほかに、文化・学術・芸術の分裂生成あるいは内戦の現象それ自体をテーマとした発表も可能である。 ・グレーバー+ウェングロウ『万物の黎明』(発表対象はその一部でよい。以下同) ・フラー+ヴァイツマン『調査的感性術』 ・David Graeber. “Culture as Creative Refusal.” ・Eyal Weizman. Forensic Architecture: Violence at the Threshold of Detectability. ・ジル・ドゥルーズ+フェリックス・ガタリ『千のプラトー』 ・カント「諸学部の争い」 ・マッシモ・カッチャーリ『ヨーロッパの地理哲学』 ・酒井隆史責任編集『グレーバー+ウェングロウ『万物の黎明』を読む』
授業の方法
演習の進め方は次の通り。 1)各回の担当者が担当日の1週間前までに文献(ないしその重要な部分)のPDFをUTOLで共有。 2)各回の担当者が担当日の朝までにレジュメのPDFをUTOLで共有。レジュメにあたるものがPowerPointのスライドの場合も見やすいかたちでPDFにして共有すること。 3)授業では担当者が30分程度で発表する。なお、レジュメはPDFで共有していることが前提のため、原則として参加者全員に紙に印刷して配布する必要はないが、教員(田中)用1部のみは当日持参して教員に提供してほしい。 4)担当者の司会により、参加者全員による質問・討議。あらかじめコメンテイターを決めておく場合もある。 なお、各文献はあくまで本授業が設定したテーマに即した原理的・方法論的な次元で扱う(発表に際し、文献のなかで論点となっている具体的な事例の要約的紹介は必要だが、それのみに終始するのでは不十分)。そのようなアプローチの具体的方法についてはガイダンスおよび講義で説明する。『万物の黎明』および『調査的感性術』はできれば各人で読んでおくことが望ましいが、それを必須とはしない。教員の講義に関連する部分についてはコピーを提供する予定。文献発表においても担当者に同様の措置を求める。
成績評価方法
成績評価自体は発表および討議への参加(授業時間外にゲストとの討論の場をもつ場合には、そのイヴェントへの貢献など)の総合評価で行なう。なお、成績評価への加点とするものではなく、自由提出でかまわないが、授業の成果として何らかのプロポーザル(具体的には授業のなかで検討する)を提出してもらえれば、コメントして返却する。
教科書
必須のものとしては指定しない。
参考書
グレーバー+ウェングロウ『万物の黎明』 フラー+ヴァイツマン『調査的感性術』 ドゥルーズ+ガタリ『千のプラトー』 カッチャーリ『ヨーロッパの地理哲学』 酒井隆史責任編集『グレーバー+ウェングロウ『万物の黎明』を読む』 田中純『政治の美学』『都市の詩学』(学期中に増補新装版が刊行予定)
履修上の注意
『万物の黎明』であれば考古学・人類学、『調査的感性術』であれば個別の調査プロジェクトそれ自体を問題にしたいわけではなく──もちろん、その具体例や政治的文脈を無視するわけではない──、それぞれの著者たちが具体的事例を分析・総合するうえで実践している方法(およびその方法に関するメタ・レヴェルの考察としての方法論)を検討したい。 発表担当者は文献(ないしその主要箇所)およびレジュメのPDFの事前提出を怠らないこと。担当者以外は何らかのコメントができるように、文献およびレジュメを事前に読んで予習しておくこと。文献や発表内容によってはコメンテイターをあらかじめ指名する。
その他
初回のガイダンスのみオンライン(UTOL参照)。それ以後は対面。