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最終更新日:2024年10月18日
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言語態基礎論III
都市/物語のかたち ― 批評理論・都市論とともに
授業の目的
1都市や空間に関する批評理論・文学研究を読解し、自分の批評的立場を明瞭にする。
2都市や空間をテーマにした文学作品を取り上げ、批評理論を意識しながら分析を試みる。
3言語構造物としての文学が包摂している可能性と問題について考えてみる。
梗概
文学はことばによって構築された時空の広がりを持っています。その可能性は無限であると同時に、言語構造物としての歪みや矛盾も含まれるために、読解に際して多くの問題も生じてきます。この授業では、都市や空間に関する批評理論・文学研究を俯瞰的に読みながら、実際に関係する小説や詩を読むことで、テクスト分析に際しての自分独自のアプローチや批評的立場を確かなものにしていくことを目標とします。
都市や空間は語りにしたがってかたちを変えていきます。歴史的時間のなかで都市が盛衰を繰り返すように、文学作品に描かれた都市は語りの展開とともに新たな姿を現し、ときに表情を変え、変貌していきます。そのかたちが言語上どのように構築され、表象されているかを、毎回、構造主義や脱構築主義に沿った批評理論や、代表的な空間論、都市論を読みながら考えてみたいと思います。
記憶のなかに埋没してしまった都市、時代に取り残された都市、祝祭的時間を永遠に湛えた都市、常に新たな記号と意味を生成し続けるパリンプセストのような都市、群衆が行き交い、混沌を深める都市、スラム化し、犯罪を増殖させ、闇を深めていく都市。それぞれの都市を語り紡ぐとき、そこには非現実の空間が構成されていきます。それをどのように味わい、解釈したらいいのでしょうか。
フィクションであれ、あるいは歴史的記述であれ、言説によって描かれる都市は過去や現在に固定されているわけではなく、語りが紡ぎ出す言葉と筋によって構築されていきます。それは主体の心の中に埋没し、いつの間にか変形してしまった記憶の都市なのかもしれませんし、あるいは時間とともに神話化してしまった集合的記憶に閉じ込められた共同体かもしれません。記憶も都市も固形物ではなく、可塑的な生命体であり、それはそれを見つめる主体の主観に呼吸をし、その語りと言語によって彫塑されていきます。生命体としての都市のかたちと語りの言葉は、交渉と分裂を繰り返しながら虚構内に新たな時空間を構築していきます。
時空の感覚があいまいになり、主体と客体の区別さえ溶解していくトポス。淀んだ川の淵のようでいて、その底でゆっくりと流れ続ける意識に沈んだ都市。それを言説化する行為は、語りとしてどのような問題を提起することになるのでしょうか。それらをいくつかの批評理論や都市論・空間論を読みながら、できるだけ具体的に考えてみたいと思います。
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