デリダは社会科学高等研究院で1991年から2003年まで「責任の問い」の大テーマのもとでセミネールを行ったが、そのなかで、1992-1993年度は、前年度の「応答する〔責任をとる〕――秘密について〔秘密の〕Répondre – du secret」から繋がる形で「証言するTémoigner」をテーマとしていた。「証言témoignage」は客観的「証拠preuve」とは異なり、「証人のための証人はいない」(ツェラン)という状況で自分だけが目撃したことについての言葉として、「秘密」と関わっている。また、そうした言葉は誤りの余地のあるものであるという点で、1997年からのセミネールの主題「偽証parjure」とも関わっている。この時期における「証言」の主題化には、当然ながら、ショアーの問題に対するデリダの応答という意味もある。デリダにおいて、証言は法廷で行われる司法上の行為であるだけでなく、発話するたびに行われる日常的な行為であり、その点で、パフォーマティヴ概念と不可分である。著作としては、ブランショ論『滞留』やツェラン論『シボレート』等々に関係する。このように様々な背景および繋がりを持つ「証言する」セミネールの講義録を読み、思想や文学に関する個々の研究に資することを目指す。