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最終更新日:2025年4月1日

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言語科学基礎理論演習V

図像性(iconicity)と音韻構造2
 言語記号の「恣意性」とは、その意味と形の結びつきにおける「必然性や自然性や論理性の欠如」を意味している。この性質が言語記号の生成に豊かな自由を与え、自然言語の語彙の多様性や無限性に少なからず貢献しているのは間違いないが、この性質を持たない原始的な語彙体系を擁すると見なされるのが、オノマトペ(擬声語・擬態語)であり手話言語である。意味と形の結びつきにある種の「必然性や自然性や論理性」が観察されるからであり、現実世界の様相(意味)が言語記号の形に写像されているからである。その性質は「図像性(iconicity)」と呼ばれ、人間言語の起源・進化の議論と結びついている。
 しかしながら、言語の図像性は完璧ではない。完璧であれば世界のどの言語のオノマトペも手話もそれぞれに共通の体系を持つはずであるが、実際にはオノマトペも手話もそれぞれに共通・類似した部分もあれば、言語ごとに異なる部分もある。そして、完璧でないからこそ、その語彙体系にある種の自由が生まれる。つまり普遍性と多様性はここでも問題になるのである。また、図像性からの解放が多様な人間言語の進化を促したのも事実であろう。
 この授業では英語の手話(ASL)を取り上げ、図像性と音韻構造の問題を掘り下げていきたい。具体的には、1)手話がどのような音韻体系を持っているのか、2)手話の図像性に音韻特徴がどのように貢献しているのか(「必然性・自然性・論理性」がどこにあるのか)、3)手話の音韻体系が通常の言語とどのように同じ/異なるのか、4)(余裕があれば諸言語との関連で)図像性の普遍性・多様性が音韻論から見てどのように導かれるのか、5)(余裕があれば言語起源・進化との関連で)何が図像性から恣意性への解放を可能にしたのか、などの問題を考察する。
 なお、日本語学II(後期課程科目)では同じ趣旨で日本語オノマトペの話題を取り上げるので、ご興味があればそちらの履修もご一考されたい。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
31D200-0151S
言語科学基礎理論演習V
田中 伸一
S1 S2
月曜5限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
開講所属
総合文化研究科
授業計画
下記で示すテキスト構成のうち、時間の関係で、その下の計画に沿って3つの章(第1章と第3章と第5章)に関連する議論を扱う。 <テキスト構成> Chapter 1* Introduction: Sign Language versus Gesture; Sign Language versus Speech Chapter 2 Modality Effects Chapter 3* Iconicity Chapter 4 Interfaces Chapter 5* The Emergence of Phonology Chapter 6 Sign Language Phonological Precessing Chapter 7 Sign Language Acquisition Chapter 8 Sign Language Phonological Variation and Change <授業計画> 第1〜4回:第1章 第5〜8回:第3章 第9〜12回:第5章 第13回:総括的議論と予備的考察
授業の方法
 3つの章の電子版を配布するので、あらかじめ読んでいることを前提として、最初は教員による論文紹介と全体討論にて授業を進める。慣れてきたところで、授業の2回目以降は受講者による論文紹介と全体討論に当てる。「論文紹介」とは、パラグラフごとの論点の紹介と確認を意味する。「全体討論」とは、参加者による批判的検討や問題に対する代案探究を意味する。  まずは第1章を配布するが、テキストを入手して随時他の章も参照するようにしておくのが望ましい。なお、第7章と第8章も音声言語との関連で興味深いので、秋学期の他の授業で扱えたらと思う。
成績評価方法
 出席や発言など授業への積極性50%,紹介発表50%として総合的に行なう。
教科書
 Brentari, Diane (2019) Sign Language Phonology (Cambridge University Press) を取り上げ、これを叩き台として議論を進める。その他、関連論文や日本語の手話なども授業で取り上げたい。扱う章はすべてUTOLを通して配布するが、できれば本を入手して全体を読んでもらいたい。
参考書
 授業にて指示する。
履修上の注意
 特に予備知識は必要ない。日本語学IIでは同じ趣旨で日本語オノマトペを取り上げるので、ご興味があればそちらの履修もご一考されたい。
その他
 特になし。