学部前期課程
HOME 学部前期課程 全学自由研究ゼミナール (国際環境エネルギー経済学)
過去(2023年度)の授業の情報です
学内のオンライン授業の情報漏洩防止のため,URLやアカウント、教室の記載は削除しております。
最終更新日:2025年4月21日

授業計画や教室は変更となる可能性があるため、必ずUTASで最新の情報を確認して下さい。
UTASにアクセスできない方は、担当教員または部局教務へお問い合わせ下さい。

全学自由研究ゼミナール (国際環境エネルギー経済学)

国際環境エネルギー経済学「2050年カーボンニュートラル実現に向けて」(担当:松井英生客員教授) (ポスト新型コロナ時代の世界経済社会の状況を左右する脱炭素経済社会の実現に向けての課題と、AI、ロボットに負けない人間力を有する人財を目指して)  地球温暖化問題が国際社会の大きな課題となっており、我が国は多くの国々と歩調を合わせて2050年に向けてカーボンニュートラル、すなわち脱炭素経済社会を実現するという方針を決定している。  しかしながら、例えば電力の約76%は石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料によって供給されており、さらに産業界、国民生活においても化石燃料が多く使われており、脱炭素とはこれらをほぼゼロにするというとてつもない大きな目標であります。  そのためには、様々な燃料転換をしていくことは勿論のこと、経済社会全体システム、ライフスタイル、価値観等の大改革が求められております。  これらを2050年に向けて実現していくということは、聴講生の皆さんの今後の人生そのものの在り方です。すなわち、2050年に向けて我が国経済社会のリーダーとなって行く皆さんが、どのような経済社会を創造して行くかということにかかっております。そのため、本授業では経済産業省の若手官僚などをゲスト講師として招くなどをして、脱炭素問題に関わる実情と課題をお示しして、質疑応答、グループディスカッションなどを通じて、聴講生の皆さんが自分たちの将来像を主体的に自由に設計して行く手助けをすることとします。また、そのような経済社会の大改革を実現していくためには、リーダーとなる者の資質が問われるわけで、その資質のベースとして最も重要な人間力を磨くためのお手伝いもすることといたします。
本授業は、新型コロナ禍による未曾有の経済危機に直面している世界情勢の中で、極めて厳しい状況下にあるわが国経済社会が今後発展していくための方途を探ること、特に2050年を目指してカーボンニュートラルを実現していくための課題を分析すること、及び経済社会のあらゆる分野に活用され始めており近い将来において人間の職を奪い去るのではないかと懸念されているAIの躍進の状況下においてAIに負けない人材になるための課題解決能力の向上を図ることを目的としています。
 1.電気、石油、ガスの三大エネルギーは、経済社会に定着して必要不可欠なものとなっており、現代生活においては、いつでも簡単に使えるものとして空気のような、あって当たり前のような存在になっております。しかし、東日本大震災において、これらエネルギーの経済社会における重要性が再認識されました。すなわち、これらエネルギーが無くなると経済社会は立ち行かなるということです。
 以降、国を挙げてエネルギー問題の議論がなされて来ております。マスコミなどを通じて表に出ているのは原子力発電の議論が中心に感じられますが、本問題は、わが国経済社会の在り方のみならず、わが国の安全保障問題にも直結する重要課題であり、実際はもっと幅が広くかつ奥が深い議論がなされております。同時に国際的に地球環境問題も重要課題として議論がなされており,
再生可能エネルギーの開発が進んでおります。エネルギー問題と地球環境問題は表裏の関係にあり、密接に関連して議論がなされております。一昨年菅政権は、2050年に向けてカーボンニュートラルを実現していく方針を打ち出しましたが、これは我が国経済社会のシステムを抜本的に変革させるものであり、人々のライフスタイル、価値観、文化までも大きく変化させるものであります。この実現に向けて経済社会のあらゆる分野で脱炭素に向けた取り組みが始められましたが、どれも簡単な課題ではなく、総合的に対応していく必要があり、国が国中の英知を集めて将来ビジョンを創り、その具体的実施を官民協力して進めることが必要不可欠であります。
 2.カーボンニュートラルを実現していくためには、先ずエネルギー問題についての実情を理解することが必要です。エネルギーが無ければ、人々の生活は勿論のこと、経済社会は成り立たないのであり、エネルギーの輸入が貿易収支に大きな影響を与え、更には、エネルギーコストの上昇は、経済社会活動に大きなインパクトを与え、国に発展を左右します。加えて、エネルギー資源獲得競争は、紛争を惹起させたり、国際的軍事情勢に影響を与えるばかりでなく、原子力発電政策のあり様により世界の安全保障問題にも大きな影響を与えます。また、化石燃料によるエネルギーは地球環境問題を引き起こします。
3.国際環境エネルギー問題の扱い方如何によって今後の明るい我が国の将来像が見えてくると言っても過言ではないと思います。逆に言えば、国際環境問題に関する取り組みを間違えれば、わが国の先行きを不透明にすると言っても過言ではないと思います。
 このような難しい課題を内在しているエネルギー問題について、脱炭素、すなわちカーボンニュートラルの実現を目指すということは極めて難しい課題で、エネルギー問題に上手く対応することによってクールでスマートな日本の実現を図っていくことができると思います。
4. 一方、アメリカのトランプ大統領の出現を契機に、従来正しいと信じられていた新自由主義、グローバリズム、自由貿易といった概念に疑問が呈せられております。アメリカ第一主義の名の下、保護主義的概念が台頭してきております。この背景には様々なものがありますが、一つにはアメリカがシェールガス、シェールオイルの開発生産により、エネルギーの輸入に頼る必要がなくなりエネルギーセキュリティの立場が極めて強固になったことが挙げられます。バイデン政権になり方向性に変化が見られましたが、米国内の政治状況から依然として先行きは不透明であると思います。更に脱炭素関連の技術を巡って中国の台頭が世界経済社会に大きな影響を与えかねない状況になっております。
 このように今まさにエネルギー情勢等の変化によって世界の経済社会の価値観やルールに大きな変化が起きつつある重要な時期であると思います。
5.また現在世界的に蔓延している新型コロナ禍により世界的に経済状況が危機に瀕しており、それを受けて社会状況も差別が台頭するなど観覧が生じており、世界経済社会のブロック化が進展する恐れが出てきています。すなわち新型コロナの感染の拡大を抑えるためだけではなく、今後の新しい感染症の侵入を抑えるとともに他国に依存しない経済社会を志向して世界のブロック化が進む恐れがあると言えます。そのような状況下において各国が自国の経済社会の発展を図るためにはエネルギーの安定的確保が必要不可欠で、今後ますますエネルギー確保をめぐる競争が激化する可能性が高いと思われます。このような厳しい状況下においてカーボンニュートラルを実現していくためには解決すべき課題が山積しております。
6. そこで、本講義は、経済社会の帰趨を左右する国際環境エネルギー問題の実情を説明し、近い将来に経済界、官界,政界、学会、マスコミなどにおいて我が国を支えることとなる聴講生が、そのリーダーシップをとるに当たり参考となる考え方の材料を提供することを目的とします。したがって、細かい事象やデータを覚えるのではなく、エネルギーを巡る大きな流れを理解できるよう解説をします。
 経済産業省においてエネルギー行政の最前線で政策立案に携わっている若手の官僚達を議題に応じて4名程ゲスト講師として迎えて、カーボンニュートラルを実現していくための課題について、再生可能エネルギー政策などの実状と政策立案の裏話などを披露して頂きます。
 また、わが国トップの再生可能エネルギー関連のスタートアップ企業の経営者の方をゲスト講師として迎えて、民間企業における実業の具体的な内容や大学在学中に起業した苦労話や成功話などを披露して頂きます。
 7.更にAI、ロボットの進展により人間の仕事がAIなどに置き換わって行く可能性があると危惧されていますが、このような懸念の払拭に資するよう、人間として似コミュニケーション能力や人間らしい判断力、構想力、など人間力を磨くための方途につき解説します。これは、社会に出て活動をするに際に必要不可欠な課題解決能力の向上に役に立つと思います。
8.後半の授業において、グループディスカッションをするほか、環境エネルギー問題に限らず聴講生からの様々な質問に答える機会を設けます。
9.若手の官僚たちによる、政府における政策立案に際しての裏話などの講義もあることから、文科系、理科系の全ての学生にとって有意義であると考えます。
 講義のポイントは、以下の通りです。
 1.石油、ガスの太宗は中東地域で賦存している。
 2.中東地域は、民族上、宗教上の対立などにより紛争が頻繁に勃発している。
 3.石油、ガスの利権確保などを目的に欧米ロシアなどの列強が中東地域の紛争に加担して、彼ら   の代理戦争の様相を呈している。
 4.我が国は、エネルギーの9割以上を輸入に依存している。
 5.エネルギーが途絶すると我が国経済社会は立ち行かなくなる。
 6.東日本大震災時の福島原発事故を契機に純国産エネルギーであるとともに地球温暖化対策に   貢献する原子力発電に対して反対論が台頭している。
 7.地球温暖化問題への対応が国際的に高まっている。この観点から、2050年に向けてカーボン  ニュートラルを実現していくために再生可能エネルギーの開発と導入促進が喫緊の課題となって   いる。さらにあらゆる産業において脱炭素の取り組みが進めて行くことが求められている。
 8.原子力発電がほとんど停止している現状において、雇用の喪失、地域経済の疲弊、産業構造の  変化、経済の停滞などが生じることに加え、代替燃料としての石油、ガスの輸入が大幅に増大し   て貿易収支を赤字傾向に悪化させている。
 9..核燃料サイクル政策の帰趨が不明確になったことにより、使用済み燃料の処理問題とプルト   ニウム処理問題が大きな課題となっている。
 10.原子力爆弾に直結する恐れのあるプルトニウム管理問題は世界の安全保障問題として最重   要な課題となっている。
 11.最近の脱炭素の動きから石油などの生産減と原油価格の大幅な上昇が世界の政治情勢、軍事情勢に大きな影響を及ぼしており、世界の国家間の枠組みに変化をきたす恐れが生じている。
 12.昨年末のCOP26までに多くの国がカーボンニュートラルを宣言したが、目標年次が日米欧は2050年、中国、ロシアは2060年と違うなど各国とも国益を睨んでしたたかに対応するという経済戦争の側面があり、またこれまで志向されてきたグローバル化の動きとは相反するブロック化の動きが強まる恐れがあり、各国間でのエネルギー獲得競争が激化する恐れがある。
 13.電力・ガスに自由化、石油産業の再編など我が国エネルギー産業が大変革期を迎えている。
 14.以上のような最近の世界を揺るがす様々な状況変化の下で、今後の我が国の豊かな経済社   会を実現していくために、今後の国際環境エネルギー政策の在り方が極めて重要になっている。
 15.デジタル化、AIの進展の下で、AIを使いこなせる資質を持った社会人となるために人間力の向上が求められている
MIMA Search
時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
31814
CAS-TC1200S1
全学自由研究ゼミナール (国際環境エネルギー経済学)
瀬川 浩司
S1 S2
木曜3限
マイリストに追加
マイリストから削除
講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
YES
他学部履修
不可
開講所属
教養学部(前期課程)
授業計画
1.エネルギー問題が何故我が国の経済社会の帰趨を左右する重要問題であるかを中心に本講座のねらいと概要について解説する。 2.石油を中心とした世界及び我が国のエネルギー情勢につき解説する。また、地球温暖化問題の本質と狙い(京都会議COP3の舞台裏等)につき解説する。 3.我が国におけるエネルギー需給状況につき解説する。また、我々の身近な生活の中のエネルギーにかかわる事象につき解説する。 4.2050年に向けてカーボンニュートラルを実現していくためのエネルギー政策上の課題につき解説する。 5.2050年に向けてカーボンニュートラルを実現していくために求められる自動車、鉄鋼など経済界及び国民生活上の課題につき解説する。 6.経済産業省の若手官僚をゲスト講師として迎えて、カーボンニュートラルを実現していくために必要な政策の企画立案に関する実体験に基づく苦労話や成功体験や遣り甲斐などにつきお話し頂く。第一回目は、カーボンニュートラルを実現していくために必要な総合エネルギー政策を中心に解説して頂く。 7.経済産業省若手官僚によるお話の第二回目は、電力政策を中心に解説して頂く。 8.経済産業省若手官僚によるお話の第三回目は、再生可能エネルギー政策を中心に解説して頂く。 9.経済産業省若手官僚による第四回目は、国際会議であるCOP26における交渉の裏話など地球温暖化対策を解説して頂く。 10.再生可能エネルギーを専業とするわが国トップのスタートアップ企業からゲスト講師を招き、再生可能エネルギー産業の最前線でご活躍された経験に裏打ちされた今後のエネルギー問題をめぐる重要課題に関して解説して頂く。 11.核燃料サイクル政策の帰趨は依然として不明確であることから、原子力爆弾に直結するおそれのあるプルトニウムの管理問題が世界の安全保障を揺るがす問題となっていることにつき解説する。 12.AI、ロボットの進展により人間の仕事が置き換わらないようにするための一助としての人間らしい判断力、構想力、決断力、思いやりなど人間力を醸成するための解説を行うとともに議論をする。特に、田中角栄元首相の判断力、構想力、決断力、人間力の高さに関して当時身近にいた方から解説をして頂く。 13.今後の我が国の進むべき明るく活力のある経済社会の方向と、カーボンニュートラルを実現していくための方途との関係につき解説する。 14.経済産業省において採用の責任者をしていた経験から、官僚のみならず社会人として求められる資質に関し解説する。 15.カーボンニュートラルに関してグループディスカッションを行う。
授業の方法
講義形式および討論形式(カーボンニュートラルを目指した経済社会の将来像を模索するとともに、判断力、構想力、決断力など人間力を磨く一助となるように、脱炭素関連などの課題を出して、聴講生の皆さんがそれぞれの考えを出して議論をする。課題に関して正解を求めるものではなく、物事に関して総合的にかつ深く考え抜く能力や、まとめた考えを上手く表現できるコミュニケーション力を養うことを目標といたします。)
成績評価方法
 国際的視点に立って、環境・エネルギー問題、カーボンニュートラル、経済関連の事象について、それぞれの関連性などに関し大筋把握した上で、2050年に向けてカーボンニュートラルの実現を目指す今後の我が国経済社会のあり方について聴講生の皆さんがそれぞれの考え方を自由にまとめるための材料を提供することを目的とした講義であることから、正解、不正解を評価するような試験は行わず、それまでの講義を踏まえて聴講生の皆さんから国際・環境・エネルギー問題に関するご自身の考え方についてのレポート(A4ペーパー1~2枚以内。)を提出して頂き、その内容が総合的にかつ論理的に整理されているかにより評価いたします。
履修上の注意
環境・エネルギー問題の喫緊の課題は、2050年に向けてカーボンニュートラルを実現していくことであり、脱炭素経済社会をいかにして実現していくかであるが、そのためには技術開発やエネルギーシステムの改革は勿論のこと、経済社会構造、ライフスタイル、価値観、文化構造までもの変革を伴うものであることから、これは聴講生の自分自身の人生の将来の在り方そのものであると言っても過言ではないと思います。したがって授業では、様々なデータ、課題などに関して説明をいたしますが、それらを踏まえてどのような将来像を描くか、またそれに向けてどのような解決策を構築していくかは聴講生自身の問題として主体的に考えていただきたいと思っております。このため、授業中における質問や意見は大歓迎ですし、授業が終わった後に個別に私のオフィスに来られてディスカッションなどをすることに関しても大歓迎です。すなわち、私自身も皆さんとの意見交換を通じて価値観などの変革を意識し、把握をして、さらにそれらを踏まえて次の授業の内容に反映させていきたいと思っております。したがって自然体で臨み、自由に考え方を巡らせてください。
実務経験と授業科目の関連性
担当教授(松井英生)は、経済産業省において長く環境エネルギー政策などの企画立案・実施に携わってきたことに加え、我が国石油元売り企業の団体である石油連盟において環境エネルギー問題の実業に携わった経験を有するほか、経済産業省において人事・採用責任者としての経験を有する。また経済産業省において環境・エネルギー政策の企画立案・実施の最前線で活躍している若手官僚をゲスト講師として招き、政策の企画立案・実施に関する苦労話や、遣り甲斐などに関して講義をしていただく。さらに、我が国最大の再生可能エネルギー専業メーカーのトップをゲスト講師として招き、スタートアップ企業としての遣り甲斐、苦労話を講義していただく。