4/10,4/17
松井千尋「対称性から見る世界ーミクロからマクロへー」
雪の結晶や昆虫の体など自然界には様々な対称性が見られますが,一方で多くの身近な物理現象は無秩序性に基づいて説明されます.例えば,温かいコーヒーを置いておくと周りの空気と同じ温度まで冷めてしまう現象は「熱平衡化」と呼ばれますが,これはある種の無秩序さによって引き起こされる現象だと理解することができます.それでは,現実世界に起こりうる現象に対称性が見受けられることはあるのでしょうか?それはどういう特徴をもっているのでしょうか?本講義では,このような問いに対する答えを「解ける模型」を使って考えてみたいと思います.
4/24, 5/1
田中章詞「機械学習入門」
近年,人工知能の話題が世間的にも大きなインパクトを残していますが,これらの人工知能の基礎となるものの一つが,機械学習と呼ばれる数理的手法です.機械学習にも様々なカテゴリー(例えば,教師あり/なしと強化学習など)が存在しますが,本講義ではこのカテゴリーをいくつかの視点から説明し,その手法が持つ強みやこれから考えられる課題を説明,議論してみたいと思います.
5/8, 5/15
坂崎貴俊「大気変動の数理」
皆さんは,大気圧の変動を観察してみたことがありますか? 一日の中で,大きく,かつ,規則的に変動していることをご存知でしょうか? こんな身近な現象ですが,実はその背後に潜む数理はなかなか複雑です.このテーマに挑んだ偉大な先人達の奮闘史を紹介しながら,天気予報とはちょっと違う気象学研究の魅力を紹介してみたいと思います.
5/22, 5/29
金澤輝代士「確率論と統計物理学,経済物理学」
確率論は様々な分野で利用される重要な数学的道具です.本講義では確率論の中でも「確率過程」と呼ばれる分野が,物理学の諸分野とどう関わっているかを話します.まずは「統計物理学」と呼ばれる,マクロな物理現象をミクロな力学モデルから説明する理論体系が,確率過程とどのように関わっているかを話します.また,統計物理学から派生した学際分野の一つとして,物理学者が携わって金融市場モデリングを行う「経済物理学」についての最近の研究の話などを行います.
6/5,6/12
ジェフリー・フォーセット「生物のゲノムと進化」
生物は非常に複雑で多様ですが,一方で親と子は基本的に似ています.では親から子へ代々「遺伝情報」が忠実に伝わっているのなら,なぜ現在の生物の多様性・複雑性が存在しうるのでしょうか.本講義では,その一つカギである,遺伝情報が変わりうること,つまり「ゲノム」に「変異」が生じることを基点に,どういった「進化」のプロセスで生物の多様性・複雑性が説明できるのかについて考えていきましょう.特に数理科学・情報科学の役割に着目しつつ,基本的な概念から最新の研究動向について紹介します.
6/19,6/26
本多正純 「量子コンピュータを使ってみよう」
みなさんが普段使っているコンピュータは古典的な物理法則を利用して演算を行う古典コンピュータです.それに対して,量子的な物理法則に基づいて演算を行う量子コンピュータが近年注目されています.この講義では,量子コンピュータとは何か,量子コンピュータを使うためのアルゴリズムはどのようなものなのかを解説した後に,現在の状況や将来の見通しを概観します.
7/3, 7/10
日下部佑太「複素解析学における剛性と柔軟性」
微積分学の複素数版である複素解析学は,様々な数理科学の基礎となる数学の一分野です.この分野で扱う対象は,通常の微積分学では見られないある種の剛性を持っています.例えば,平面上の微分可能な有界実数値関数はいくらでもありますが,複素数平面上の「複素の意味で」微分可能な有界複素数値関数は定数関数しかありません. 一方で,ある状況では通常の微積分学と同様に,「複素の意味で」微分可能な関数を自在に作れる柔軟性も見られます.現代数学の多くの場面で現れるこのような剛性と柔軟性を,本講義では複素解析学に焦点を当てて解説します.
*授業時間の後に全履修者が参加・共有できる形で質疑応答の機会を設けます.
*5月15日は東大の授業日ではありませんが,講義はあります.これについては出席にカウントしないので,出席するかどうかは自由です.