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土井琢身「計算機入門 - スパコンの世界に触れてみよう」
2020年,日本のスパコン「富岳」が性能ランキング世界トップに輝きました.スパコンに代表される高速計算機は現代社会にとって不可欠のインフラとなり,科学においても「計算」は理論・実験と並ぶ三本柱の一角となっています.この講義では,計算機の基本原理から最先端のスパコンの仕組みまで,その歴史も含めて紹介します.
4/14,4/21
長瀧重博「一般相対性理論で宇宙はどこまで分かるのか」
アインシュタインによって提唱された一般相対性理論は宇宙の様々な観測を見事に説明し,現在宇宙が膨張していること,過去の宇宙は現在の宇宙より小さく熱かったこと,ブラックホールが存在することを現代の人類は知っている.しかし宇宙がどのようにして始まったのか,宇宙が始まる前には何があったのか,ブラックホールの終端点とも言える特異点は本当に存在するのかなど,一般相対性理論では解明出来ない,宇宙究極の謎が存在する.本講義ではまず一般相対性理論を紹介し,人類が宇宙をどこまで理解し,何を理解出来ていないかを解説する.
4/28, 5/12
宮崎弘安「抽象化から見る整数論の進展」
1, 2, 3,….整数は最も身近な数である一方,「モノの個数」の一般化として得られる抽象的な概念でもあります.整数の研究は長い歴史を持ちますが,20世紀以降,「モノの形」について調べる「幾何学」の手法を応用することにより,かつてないほどの爆発的な進展を遂げました.「モノの個数」と「モノの形」は全く異なる概念のように思えますが,大胆な抽象化によって,これらを同じ舞台で扱えるようになり,お互いの手法を活用できるようになったのです.それのみならず,その優れた抽象性によって,整数論から生まれた理論が様々な数理科学分野で応用されるようにもなってきています.この講義では,整数論の発展に抽象化が果たした役割について,最近の進展にも触れながら解説します.
5/19, 5/26
矢崎裕規「シークエンスの誘惑:遺伝子配列から見る生物の進化」
生物の設計図である遺伝子は,配列(シークエンス)と呼ばれるたった4種類の核酸の並び順で表現され,ヒトでいえば2万種類以上に書き分けられている.また,その設計図の書き方が確立したのは地球史における生命誕生の時点に遡る.その後長い時間をかけて設計図は変異を重ね,生物ごとの差異を生み出し,ついには現在の生物多様性をもたらした.つまり,シークエンスを比較するとでこれまでに歩んできた生物の歴史(進化)を見出すことができる.この10数年で大規模なシークエンスデータを簡単に取得できるようになった.本講義では,このシークエンス全盛の時代で中心となるシークエンス解析の原理やメカニズムなどを解説し,生物の進化研究がどのように進展したかを紹介する.
6/9,6/16
濱崎立資「ミクロとマクロを繋ぐ」
水にインクを垂らすと広がっていき,最終的に一様に混ざる.巨視的(マクロ)には,この現象は熱力学や統計力学で習う「熱平衡状態への遷移」という疑いようのない原理の一例である.一方,微視的(ミクロ)には,この現象は水分子の相互作用など(量子)力学によって引き起こされるはずである.しかし,こうしたミクロな量子力学のみを用いて,マクロな統計力学の原理を導出することは未だなされていない.本講義では,この「量子力学から統計力学を導く」という根源的なテーマについて,その近年の急速な発展を紹介する.
6/23,6/30
菊地健吾「素粒子論と場の理論」
我々の世界は何からできているか.宇宙を支配している数式は何か.その問いに対する答えを探究し理解しようとする学問が,素粒子論である.この講義では,人類がこれまで到達した素粒子像,現代物理学の歩み,相対性理論や量子力学,そして場の量子論について概観する.
7/7,7/14
松浦俊司「量子計算の幕開け」
コンピュータの発展に伴い,自然科学や産業界における数値計算の果たす役割はますます大きくなってきました.計算をどれだけ速く行えるかという問題は,実は単に技術の問題ではなく,根底にある自然法則とも大きく関わってきます.この数年,量子力学に基づいた計算方法(量子計算)において大きな進展があり,ついに我々が普段使っている古典コンピュータでは到底解くことができないような問題を量子コンピュータで効率よく解いたという結果が発表されるまでになりました.この講義では量子計算の基礎から,最近の進展までを解説します.