学部前期課程
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最終更新日:2024年4月22日

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森の生物学

森の生物学:共存する森林生物
授業の目標,概要

森林は,生物多様性のもっとも高い生態系のひとつである。そこでは,多種多様な植物,動物,微生物が互いに影響(相互作用)し合いながら,それぞれを取り巻く環境条件に適応して繁殖し,共存している。
森林内の植物は,取り巻く光環境や水環境に自らを適応させ,光合成により有機物を生産して,森林全体の物質収支を支えている。動物は,その植物を食べて有機物を得ている。さらに,植物や動物の遺体を分解して有機物を無機化するのは,菌類などの微生物の役目である。分解された有機物は,やがて再び植物によって有機物へと合成されていく。こうして,森林内で主役を演じる三者の間を有機物が巡っていくが,有機物の受け渡しに平行して,三者の間では,様々な相互作用が起こっている。例えばナラ類は,異なる光条件下でそれぞれの環境に適するよう,生理機能や樹形を変化させる。また,ブナアオシャチホコやスギカミキリはブナやスギの葉や幹を餌にするが,樹木は摂食を防ぐ様々な仕組みを発動して危害を抑制する。森林内には,植食性動物だけでなく,動物や菌類を捕食したり寄生したりする動物も多数生息しており,それらの間でも多種多様な相互作用が繰り広げられている。一方,林床の落ち葉や枯れ木には,腐朽菌が生息しており,有機物の分解を進めている。その他微生物には,マツタケのようにマツの根に共生して植物の生長を助けたり,逆にならたけ病菌のように様々な樹木に甚大な病害を与えたりして,直接的に樹木と相互作用するものもいる。
この講義では,このような森林で見られる樹木の環境への適応と植物-動物-微生物間の複雑な相互関係を,多面的に紹介し,解説する。
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時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
31646
CAS-GC1E5aL1
森の生物学
久保田 耕平
S1 S2
金曜5限
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講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
不可
開講所属
教養学部(前期課程)
授業計画
 この講義では,樹木と非生物的・生物的環境,樹木と昆虫の関係,樹木と微生物の関係の順に,樹-動物-微生物-環境の複雑な相互関係を紹介する。講義の日程は次のとおりである。 第1週 ガイダンス,森林の生物学とは(久保田) (樹-昆虫-微生物-非生物的環境の相互作用系)(4月5日) 第2週 光環境に応じた樹木の形(益守) (針葉樹と広葉樹の樹形の違い)(4月19日) 第3週 土壌環境に応じた樹木<根>の形(益守) (根系の構造,重力屈性,化学傾性,低酸素に対する生化学的反応と解剖学的反応) (4月26日) 第4週 樹木と水(丹下) (樹木の成長と水利用,土壌温度と根の水分通道性)(4月30日) 第5週 昆虫の大発生と森林の自己調節機能(鎌田) (ブナの葉食性昆虫の大発生と個体数の変動要因,キノコを栽培する昆虫カシノナガキクイムシによるナラ類の集団枯死)(5月10日(火)) 第6週 枯死材-菌-昆虫の相互作用(久保田) (クワガタムシ等の穿孔虫による枯死材の分解,クワガタムシにおける性的ニ型の進化,ルリクワガタ属の種分化)(5月24日) 第7週 ほ乳類を中心とした森林生態系のバランス(鎌田) (ブナの種子の豊凶と昆虫の関係,台風がクマの異常出没の原因?,シカの食害と昆虫の大発生)(5月 31日) 第8週 捕食者,一次分解者としての昆虫(久保田) (オサムシ,シデムシ,糞虫などの生態,多様化)(6月7日) 第9週 樹木の水輸送 (福田) (MRIでみた樹木木部の通水と樹木の乾燥ストレス耐性、マツ枯れの枯死機構)(6月14日) 第10週 都市林の生物多様性保全(福田) (都市化により分断、孤立化された森林の生物相の特徴と保全についての事例紹介)(6月21日) 第11週 森の中の陰の主役,菌類の生活(松下) (菌類の多様性や菌類の生態を紹介)(6月28日) 第12週 樹木の成長を支える菌類の共生(松下) (外生菌根共生を中心に,菌根共生の生理,生態を紹介)(7月5日) 第13週 試験(7月12日)
授業の方法
資料とプロジェクターを利用して講義をおこなう。
成績評価方法
毎回の授業の終わりに授業内容に関する課題を与える。その課題に対するレポートを授業時間内に書いて提出する。さらに,最後の週に試験をおこなう。これら二つを合わせて評価をおこなう。
履修上の注意
特になし