学部前期課程
HOME 学部前期課程 全学自由研究ゼミナール (フィールドワーク入門:現代社会を歩く)
学内のオンライン授業の情報漏洩防止のため,URLやアカウント、教室の記載は削除しております。
最終更新日:2026年10月16日

授業計画や教室は変更となる可能性があるため、必ずUTASで最新の情報を確認して下さい。
UTASにアクセスできない方は、担当教員または部局教務へお問い合わせ下さい。

全学自由研究ゼミナール (フィールドワーク入門:現代社会を歩く)

フィールドワーク入門:現代社会を歩く
【注意】この授業は開講日程の都合上、成績が所定の確認日より後に公開される見込みが高いので留意すること。特に2年生は本科目の成績が進学選択が可能となる条件に含まれない見込が高いので、履修にあたっては十分に注意すること。

◆この授業の概要
様々な現場に赴き、そこに生きる方々の声に耳を傾け、風景からその奥にあるものを読み取り、あるいは目に見えない歴史的蓄積をさぐります。さらにその内容を研究成果とすべく学会報告や査読論文としてまとめることを目指します。

具体的には以下のプロセスを取ります。
・参加者同士でのフィールドワークプログラムのプランニング
・フィールドについての文献やインタビュー等を活用した事前調査
・プログラムの実施
・リフレクション
この流れを繰り返し、フィールドに入り込み、情報を読み取り、知識を得るトレーニングをします。その上で、意欲がある受講者は学会報告or査読論文投稿を目指します。

具体的なフィールド選定の部分から受講者の関心を踏まえて検討します。
キーワードとしては、都市・地方/政治・行政/災害・有事/メディア・ジャーナリズム/コミュニティ・組織/貧困・格差/グローバリゼーション・エスニシティ。これらに関する問題を捉え直す機会になるようにフィールド選定・プログラム設計を行います。無論、これは大学の授業であり「教育の場」ですので、物理的・非物理的に安全が保たれる範囲でプログラムは実施されることが前提になります。

なお、これまで以下のようなフィールドワークを実施しました。いずれも学部1・2年生が関わっての学会報告や査読論文投稿の実績につながりました。
・北海道ホタテ生産加工現場フィールドワーク:中国による日本産水産物禁輸措置の打撃を最も受けた北海道ホタテの現状を知るために自動車でオホーツクと噴火湾とを5日間フィールドワーク
・蔵前クラフトカルチャーフィールドワーク:関東大震災の被災の中心地であり、東工大や東京電力やかつては国技館(いまの両国国技館)があったエリアである蔵前。江戸時代は全国のコメがあつまり札差たちが取引を行う金融エリアでもあった。ここにいま再生し、新たに芽吹き出した「クラフト」の産業と文化の集積とを調査
・福島フィールドワーク:福島第一原発事故で全域が避難指示の対象となりかつては「死の町」とも形容された地域で、夏休み期間中に3回にわけてのべ10日間徹底的に住民の話をきき、課題と可能性を明らかにした

◆そもそもここでいうフィールドワークって?
人文・社会科学的フィールドワークを指します。
文系・理系問わず、フィールドワークは様々な学問で用いられる手法です。部屋に閉じこもって本を読んだり実験したりするのも重要な研究方法ですが、何らかの現場に出るフィールドワークでしか得られないこともあります。フィールドワークという概念は多義的で領域や人によって定義もまちまちです。何らかのフィールドに出ればそれで「フィールドワーク」だというスタンスもあり得るし、もっと厳密に学術的なフィールドワークはかくあるべきでそこから外れるものは認めないというスタンスもありえます。

この授業でいうフィールドワークは、2つの方向性において、他とは区別されると考えています。一つは人文・社会科学的フィールドワークであること。山に入って動植物の生態系をみるような自然科学的なフィールドワークではなく、人や社会を対象とします。人や社会を対象としたフィールドワークは、社会学や人類学・民俗学等で行われてきましたがそのようなものが人文・社会科学的フィールドワークです。もう一つは、単に「現場にいって面白かったです」という話では終わらせない、フィールドスタディとしての要素が必須だということです。フィールドにいくことは、その現場から得られる以上のことを得るための一連の学習のプロセスの一部分であり、また研究でもあるということです。学習であり研究であるフィールドワークを通して、頭と手足との全てを回しながら現代社会を捉え直すトレーニングの機会を提供します。

◆何が学べる?
フィールドワークの技法を学べます。そのための実践的なトレーニングができます。これは研究をしないとしても、ビジネス・政治行政・NPO等々の世界においても、一生役立つ経験とスキルになります。
・必要な事実を把握し、論理的かつ俯瞰的に考え、意図を他者にわかりやすく伝え、何かを教えてもらったり、協力してもらったりする
・だれかと仲良くなり信頼関係をつくり、あるいは交渉や互いを高めるための良い競争をする
・普通の人がアクセスできないところに踏み込み情報・知識を得るルートをつくり、あるいはそのルートを短時間で見つける
・意図せざるコンフリクトやあからさまに悪意ある妨害・嫌がらせ等にあっても目的に向けて淡々とトラブルシューティングしていく
あえて言葉にするならば、そういったスキルが、フィールドワークの中で身につきます。(文科省的に言うと「生きる力」であり「主体的・対話的に深く考える探究力」がつきます。)

なお、フィールドワークの教科書的な書籍や論文は調べればいくらでも出てきます。そういったものを読むことも有意義ではありますが、残念ながら水泳やスキーをしたり自転車に乗ったりするのと同様で、実際にやってみないことには本当に必要な技術は何も身につきません。もちろん、スポーツやなんらかの芸・術と同様に、一定の技術を身に着けた後に理論的に細部を洗練させるのに知識面のインプットをするのは大切です。書籍・論文のみならず動画等も容易にアクセスできる時代ですから、そういうのも活かすべく自主的に研鑽をつむのも良いです。
MIMA Search
時間割/共通科目コード
コース名
教員
学期
時限
31635
CAS-TC1200S1
全学自由研究ゼミナール (フィールドワーク入門:現代社会を歩く)
開沼 博
S1 S2
集中
マイリストに追加
マイリストから削除
講義使用言語
日本語
単位
2
実務経験のある教員による授業科目
NO
他学部履修
不可
開講所属
教養学部(前期課程)
授業計画
◆どうやって進める? この授業は集中講義として実施されるため、特定の曜日・時間に縛られることなく実施されます。 日程含む詳細は参加者の関心やスケジュールを踏まえて決定します。初回ガイダンスにて日程等の連絡方法は改めてお伝えします。 教育の場なので、まずは物理的・精神的両面で安全にフィールドワークを遂行できることを優先します。訪問先や日程について、もしご希望等あれば遠慮なくお申し出ください。
授業の方法
◆開講場所 本郷キャンパス、オンライン、フィールドワーク先のいずれか ◆なぜいまフィールドワーク? 私の研究の背景をある程度伝える必要があります。 私はこれまで政治・行政、マスメディア、学校教育、まちづくりなどの現場において、フィールドワークを行ってきました。例えば、レギュラー出演するNHK福島放送局のラジオ番組は10年目。義務教育期間以上の時間関わっていて、その中で現代社会とメディア・放送局の実態を参与観察してきました。 一方で、原発や新宗教、あるいは繁華街など、いわゆるアンダーグラウンドなイメージと結びつけらやすく、コントラバーシャルな領域にも足を踏み入れ続けてきました。例えば福島第一原発には100回以上入り、書籍をつくり、原発構内からははじめてのNHKラジオ全国生放送の企画に関わった上で出演し、内部の音声を記録したサウンドスケープ作品のCDリリースをしてきました。つまり、普通は避けられるし、望んでも誰もが立ち入れるわけではない力学がはたらく現場にいってそこで起こっていることを様々な切り口でインプットし、その現実を時空間を超えるような方法を用いてアウトプットする、という現場を媒介にしたインプットとアウトプットとの往復の作業を続けてきました。 このフィールドワークを通した「往復の作業」は大学が社会で果たす重要な機能である研究・教育の両面で効果があると再度注目をされています。東京大学も「フィールドスタディ型政策協働プログラム(FS)」「体験活動プログラム Hands-on Activities」などをつくって学生を様々な現場に送り出して久しく、ハーバード大学ビジネススクールやミネルヴァ大学でフィールドスタディが重視されているという話題を聞く人も多くいる状態になっています。 しかし、「なぜいまフィールドに出ることが重要なのか」という点については、必ずしも多くの人が深い議論をしているわけではないように見えます。 なぜか。一つの答えは、「人々のリアルへの需要をイメージの供給をもって代替する構造が不可逆的に深化してしまっているから」ということです。どんな現場にも、深く入り込むほどに、例えば、表面的に見ただけでは気づかないような職人の創意に驚かされ、外から・上から言われる綺麗事だけでは済まされない実態に言葉を失う経験が増えていきます。ただ、そういったリアルなことは様々に外に届きにくくなっています。変わりに表面的なイメージたる「真実」「正義」「(インスタ)映え」等々が流布し、象徴同士の主導権を奪い合うゲーム、不毛な闘争が繰り広げられています。 もっと具体的な話をします。 例えば、30年ほど前の阪神・淡路大震災の時の報道映像を参照すると、避難所の中の様子やそこにいる人々の顔がなんの躊躇もなく映され、水が流れず汚物がたまったトイレが映像のど真ん中に置かれます。しかし、東日本大震災・福島第一原発事故のときにどうだったのか。そして、能登半島地震でどうか。そこに映る人の具体的な顔や汚物は消えていきます。いま避難所内や汚物を映せばどうなるか。説明をするまでもありません。 それに変わって飛び交うのは表面的な「真実」や「正義」です。 例えば、「復興が遅い、時間が経ってもなにも進んでいない、何やってるんだ」と、ある種の被災地報道の定型句が繰り返されます。 しかし、現場において、この「真実」「正義」の物言いに災害復興の最前線に立つ人々が苛立ちを見せる場面を私は何度も目撃してきました。 マスメディアやオピニオンリーダーが「復興の遅れ」を嘆いてみせる背景には、政府・行政への批判や被災者への同情の念があるでしょう。しかし、その「正義感」や「善意」に憤る人が被災地にはいる。なぜか。それは、災害復興に関わる人々が、自らの歩んできた被災後の時間をその「正義感」「真実」の言葉に否定されたように感じるからです。 その現場にいる多くの人が、不足点はあるにしても復興が少しずつ着々と進んでいること、自らがその復興を進めてきたプレーヤーの一人であることを自覚している。公務員も土木作業員もコンビニ店員も農家も、その多くが被災者であり、復興の担い手であり、ベストをつくしてきた。その現場の苦労を知らない外野の人間が、偉そうに評論をし、枝葉末節をあげつらって「何も進んでいない」などと皮相的に結論づける。これは、現場の努力への蔑みであり、これほどの無責任な侮辱はない、と。 この不幸で、埋めがたいズレは1年ほど前の能登地震についても、15年ほど前の東日本大震災についても、同様に起こり続けている。もちろん、30年ほど前の阪神・淡路大震災の時のように、勝手に避難所に土足で踏み込み許可もなく人の顔を晒すようなことは避けられるべきです。他方で、「正義感」や「善意」のズレをいかに解消できるか。この「解の無い問い」の答えは現場に行き、そこに生きる人たちの内在的論理を知ることの中にあります。 「人々のリアルへの需要をイメージの供給をもって代替する構造」の背景には、例えばコンプライアンス、プライバシー、セキュリティといった概念と共に語られる社会の規範意識の変化があります。東京大学もDEI(Diversity, Equity and Inclusion)の拡充に向けて努力を続けているところですが、その実現のためには単に崇高な理念を字面だけで追うのではなく、イメージの壁を乗り越えてリアルに触れるために自らフィールドに出る中でその理念の実現に近づこうとすることもまた重要なはずです。
成績評価方法
以下の割合で評価します。 ▼授業参加 100% 毎回、何らかのアウトプットが求められることになるので、欠席すれば自動的に点数は減ることになります。 ただし、コロナ感染等明確な欠席理由があり、出席の代替措置を希望する場合は、都度事前にメールにてご相談ください。
履修上の注意
◆担当教員の講義・ゼミ 以下が教養学部前期課程で担当教員が開講する講義・ゼミです。関心があるテーマがあれば、あわせて受講することを推奨します ・総合科目C講義「現代社会論入門:”白書”と”メディア”から読み解く現代社会」(Sセメ・火2)とあわせて受講すると政策や行政のあり方に詳しくなります。研究はもちろん、就活・社会人になってからも知っておくべき知識を得られます。同時に大量のインプットとアウトプット、論点をつかみ議論を先導するトレーニングにもなります ・全学自由研究ゼミナール「研究入門:現代社会を深堀りする(情報学環・開沼ゼミ)」(Sセメ・集中)は、人文・社会科学のゼミに学部1・2年のうちから参加することで、研究とはいかなる営みか学びます。現代社会の先端的な、馴染みやすいテーマを扱うので、ついてこれる一方で、毎回、それなりに長時間におよび議論を続けることになるのでそれに耐えうる知的体力は必要です。 ・全学体験ゼミナール「フィールドワーク入門:現代社会を歩く」(Sセメ・集中)は、様々な現場に赴きそこに生きる方々の声に耳を傾け、風景、あるいは目に見えない歴史的蓄積をさぐります。頭と手足との全てを回しながら現代社会を捉え直すトレーニングの機会を提供しています。 ・全学体験ゼミナール「東大福島部:福島を見る・食べる・学ぶ・遊ぶ」(Sセメ・集中)は、講義名のとおりですが、東日本大震災・東京電力福島第一原発事故の被災地の前から数えると20年ほど福島をフィールドに、災害にとどまらない多様な側面を研究を続けてきた講師が、座学と現地訪問とを組み合わせて多角的にガイド。一つの食材(フィールド)をあらゆる角度から切り刻み、知る限りの方法を駆使しながら徹底的に料理する魅力を伝えるよう努力しますので、それを五感で感じ、人にも伝えられる力を養って頂ければと思います。 ・全学体験ゼミナール「探究学習論:中高生向け教育プログラムのデザイン・実践」(Sセメ・集中)は高校・中学で進む「探究的な学び」の現在について考え・実践します。高等学校で「総合的な探究の時間」が必修科目化したのは2022年度のこと。2025年度からは、大学に「探究学習ネイティブ世代」が入ってくることになります。その意義と課題・可能性とを改めて俯瞰するとともに、実際に中高生向け探究教育プログラムのデザインと実践をします。
実務経験と授業科目の関連性
担当教員はいわゆる実務家教員ではないものの、経産省・環境省・復興庁等の有識者会議委員や政治・行政・住民等の多主体間対話の設計などに関わってきた経験があり、また上述のフィールド研究の延長でマスメディアや出版、シンクタンク、教育、地方自治等の現場にも実務的に関わる機会を持ってきました。学術とその外部とを往還する中で得られた種々の社会現象の細部に関する知見や、そこで体験した学術の価値については講義の中で随時共有していこうと思います。